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木下斉『まちづくり幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか』

地域を変えるとは、まず自分の考え方を変え、日々の生活を変えることから始まります。

私的要約

地方創生が叫ばれ始めてから早数年が経つ。
日本の地域は再生どころかますます衰退を深めている。莫大な財源が投入されたにも関わらず、なぜ、うまくいかないのか。
そこには、『まちづくり幻想』があると著者、木下氏は指摘する。
例えば、『人口減少』について。
そもそも『人口さえ増加すれば地域が活性化する』という考え方自体が幻想である。
人口減少は、もはや東京から地方に若者が移動した程度で改善するようなスケール感をすでに超えている。人口が少ない日本のミレニアル世代以降による出産で、団塊の世代以上の膨大な人口の死亡数を超えるのは『無理な作戦』である。
また、地方の人口減少は衰退の原因ではなく、結果である。稼げる産業が少なくなり、国からの予算依存の経済となり、教育なども東京のヒエラルキーに組み込まれる状況を放置した結果が、人口流出なのである。
つまり、何が原因で何が結果なのか、本質をとらえ、打開策を考えないと、そこにいくら資金投資をしても地域が再生するはずもないということだ。
『当たり前だと思っているけど本当にそうか。』
『皆がそうだと言って進めているけど、そもそもその前提は合っているのか。』
地域を変えるとは、まず自分の考えを変え、日々の生活を変えることから始まる。
むしろ自分の考えすら変えられないのに、地域を変えることはできないのだから・・・。

教育×読書

この本のテーマは、『学びの本質』に触れていると感じた。
『常識を疑う』ことは、『学び』の上では2回チャンスがあると思う。
1回目は、『初めて学ぶ』とき。
なぜ、これが成り立つのか?
なぜ、そうなのか?
これを繰り返しながら、学びは深くなる。
ただし、低学年の学習においては、理屈ではなく暗記が必要なものも多々あるが、ここでは割愛する。
2回目は、『知識を本当に自分のものにしようとする』とき。
当たり前のように使っている事柄を、ふと立ち止まって振り返ると、それは正しい知識なのかと思うことがある。
私の場合だと、言語などがそうである。
選んだ言葉で誤解を生んだり、思いの行き違いを生んだりするとき、私は正しい意味で使えているのか(=世間の常識と自分の常識は合っているのか、そしてその常識は正しいのか)を確認することがある。
当たり前のように使っている物こそ、それが本当に当たり前なのかをふと考えさせられることがある。それが、学びを深めるきっかけになっているのは確かだ。
『まちづくり』に限らず、世のいろんなものに『幻想』は潜んでいる。
それを、見極める力こそが、大切なのだろうし、私もそれを身につけたいと思う。
受験指導には使えないのだろうが、教育者としては子どもたちにもこの『常識を疑う力』『見極める力』を教えていきたい。

私的感想

この本は、地域創生学部を受験する高3生の面接練習時に教えてもらった本ですが、純粋に面白かったです。
私の普段扱う世界とはまったく違う系統の話でした。
地方にとって必要なのは、補助金や大企業の進出などでの一時的な人口流入ではなく、その地域が誇れる魅力を生み出すことが大事なのだと思います。子どもたちが大人になっても住み続けたいまち、そんな魅力的なまちなら、人口流出が防げるのでしょうね。(言うは簡単というのはもちろん存じ上げております。)
地域に根差した塾で働いている私としても、地方創生の一翼を担えるようになりたいと感じた次第です。
この本を読んで感じるのは、何においても、やはり本質的な部分が大事なのだということでした。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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