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【MIL】2022年シーズン総括【野手編】~貧打だが指標は良いという謎を考察~

ブルワーズ担当のあなんです。

前回は投手編のまとめをしました。

今回はその野手編です。


免責事項
自己採点で60点の考察です。ギリ単位はくる。はず。



〇 チーム全体成績

打率 / 出塁率 / 長打率
.235 / .315 / .409 (10位 / 9位 / 6位)
HR:219 (2位)
得点:725 (6位)
四球:577 (2位)
三振:1464 (3位)

OPS:.724 (6位) OPS+ 105
wRC+:103 (6位)
BB%:9.4 (2位)
K%:23.9 (4位)
BB/K:0.39 (6位)
fWAR:24.3 (5位)

月別総括で散々、打線が働かなかったと書いてきましたが、上の数字を見るとそうとは言い難いです。打率は低いですが、得点数とOPSはNL6位。wRC+も100以上です。


〇 個人打撃成績

AdamesTellezがホームラン30本超え。RenfroeはOPS.800超。Yelichは1番に座って以降アベレージヒッターにモデルチェンジし、高出塁率をマーク。UriasTaylorも100超のwRC+です。


期待外れはMcCutchen、Narvaez、Caratini。カッチはムードメーカーとして、捕手2人は守備面で貢献しましたが、打撃面はさっぱりでした。


個人的に残念だったのは、開幕前の全体企画で注目選手として挙げたHiuraですね。えげつないK%叩き出してます。パワーはありますが、高めの速球を空振りする姿を何度みたことか。構えやバットの置き方を調整していましたが、結局実りませんでした。


〇 個人守備成績

守備指標で目を引くのは、AdamesとWong

AdamesはSSでリーグトップのUZRを記録(1000イニング以上)。バッティング同様チームトップの守備成績を収めました。


一方、堅実な守備が売りだったWongはどの指標でもキャリアワーストを記録。昨年のDRS/UZR/OAAはそれぞれ6/4.7/2でしたが、今年は全てマイナスになりました。来季のクラブオプション($10M)に関しては、この守備面が行使のポイントになっています。(結局行使された。)

Hiuraのセカンドの守備が改善されたら、Wongをすんなりオプション破棄、あるいはトレードの弾にできるんですが、これまた残念なことにどの指標もマイナス。17年のドラ1がチーム編成を大いに悩ませています。


〇 今年の打線を考察

さて、本題。何度も申し上げますが、60点の考察です。

今年のMIL打線は非常に評価しづらいです。打率は低いですが、OPSとwRC+は平均以上。低打率を取り上げて「1年通して貧打だった」といえばそれまでですが、時代はセイバーメトリクス。打率だけで評価するのは好ましくありません。しかし、セイバー指標をみると貧打と評すほどには悪くはありません。


というわけで、貧打だけど指標はよいという謎に注目して、今年のブルワーズ打線について考察してみます。


◇ HRでしか得点を稼げない

まず、チーム打率10位からわかるように、今年はヒットが出ませんでした。が、具体的にはホームラン以外のヒットが出ませんでした。ヒットの内訳はこんな感じ。

リーグ2位のHR数に対し、シングルヒットはARI、PITに次ぐワースト3位。二塁打・三塁打も2桁順位です。

そしてこの傾向は得点圏にランナーがいる場面でも変わりません。

コンテンダーとは思えない順位が並んでいます。シーズン通してタイムリーヒットが打てず、幾度となく残塁祭りを開催していました。尤も、HRで一掃するケースが多く、残塁数それ自体は目立って多くはありません(NL7位)。


HRを除いたヒットが著しく少ないと、BABIPの順位は下がります。打率がNL10位に対して、BABIPはNL13位の.279、得点圏の場面ではNL12位の.276。いかにタイムリーヒットが生まれていないかわかります。シフトの網にかかったプレイも多かったですが、それを差し引いてもひどかった印象です。


◇ 空振り三振が多い

三振数1464はNLで3番目に多く、K%23.9はNL4番目に高いです。特に空振り三振の数が多く、ATLに次ぐ2番目。得点圏にランナーがいる場面(以降、RISP)に限定すると、K%21.8はNL7位。こちらは平均程度です。


◇ 結論1

ここから導き出される結論は、今年のブルワーズ打線は三振を恐れず、常に長打・一発を狙う打線だったということ。コンタクト重視ではなく遠くに飛ばすことを重視した。その代償として空振りが増えて三振数がかさんだ。このように考察できます。


この結論が正しいといえる数字がこちら。
各打球方向の割合です。

シーズン全体
RISPの場面

反対方向への打球が極端に少なく、センターから引っ張りの打球が非常に多いです。また、HardHit%がリーグ上位。これらの数字から、強い打球を遠くへ飛ばす意識がチーム全体に根づいていたと考えられます。


おしまい…??


◇ 本当にぶん回す打線だったか?

常に長打を狙う、ぶん回す打線であれば出塁能力は低いはずです。一般的に、飛ばすことを意識するとゾーン管理が甘くなります。しかし奇妙なのが四球の多さ。ブルワーズは四球数577、BB%9.4でリーグ2位、RISPの場面ではリーグトップ。ブルワーズの打線は出塁能力に長けていたのです


これは、常に引っ張って長打を狙うスタイルを相手が警戒して四球が増えた、というわけではありません。1打席当たりの球数(Pit/PA)は4.06。これはリーグトップどころかMLB全体で1位です。初球スイング率は最も低く、Swing%はNL14位、Z-Swing%は11位、O-Swingは13位。決してフリースインガーなどではなく、むしろじっくり相手投手の球を見極める、超消極的な打線でした。


◇ 結論2

スイング率が低く出塁能力に長けている。一方で、空振り三振とホームランが多い。ここから導き出される答えは、ブルワーズの打線は「カウントが深くなるまで待つ。ボールカウントが増えたら四球を狙い、ストライクカウントが増えると振りにいって長打を狙っていた」。このように考えられます。


※つまり何なの??と訊かれてもわかりません。時間があればカウントごとのアプローチについて考察したいですが、そんなことしてたら23年シーズンが始まります。これ以上は深堀りしません。撤退。


ちなみに、ホームラン以外のヒットが少なかった理由ですが、ライナー性の打球が少ないからかなと思います。遠くに飛ばすのを意識して角度をつけるものの、打球速度が伴わないケースが多く、ヒットにならなかったのでしょう。

シーズン全体
RISP


◇ セイバー指標が軒並み良い理由

では、なぜOPSをはじめセイバー指標がリーグ平均を上回っているのか。これはひとえに、四球とホームランを荒稼ぎしたおかげです。リーグ屈指のお散歩力とホームラン数で出塁率と長打率を"効率的に"押し上げ、あらゆるセイバー指標の見栄えを良くしたのだと考えられます。


貧打とはいえ、得点を生む力がなかったわけではありません。"持続的に"得点を生む力に欠けてたのです。打率・BABIPの低さがそれを物語っています。SDGsに反した打線ですね。HRに頼りきりで、アベレージの低い、確実性の低い打線は健全じゃありません。今すぐ活動家にトマトスープをぶっかけてもらいたいところ。


◇ まとめ

長々と考察してきましたのでまとめると、今年のブルワーズ打線は「セイバーメトリクスに全振りした打線」。四球で塁を埋めて、ホームランで一掃する。最も効率的に得点をとる打撃を遂行した打線といっていいのではないでしょうか。

こうしてみると、Stearns政権の最終年がセイバーメトリクス打線だったのは感慨深いものがありますね。スモールマーケット球団のGMとして独特のアプローチでチームを変えたStearns。今シーズンが彼の集大成だったのかもしれません。


〇 展望

この表は、2022年のポジション別のbWARです。

黄色マーカーがブルワーズ

ご覧のように、今年WARを稼げなかったポジションはキャッチャー、ファースト、センター。この3ポジションは共通して打撃が振るわなかった・見劣りしていました。


下の表はポジション別のoffencive bWAR

先の3ポジションはいずれも平均以下の打力です。

捕手は、NarvaezとCaratiniのOPSがそれぞれ.597と.642。特にNarvaezは昨年からwRC+を100→71へと大幅に落としました。ファーストはTellezが35HR / 110wRC+で悪くはないですが、Alonso、Goldschmidtといった名だたる主砲と比較すると見劣りします。センターはCain、Taylor、Davisがいずれもさっぱり。Taylorに関しては、Mitchellのデビューまで正中堅手でしたが、アプローチが悪く外の変化球によく手が出ていました。


ということで、来季のポストシーズン進出を目指すためにはこの3ポジションのアップグレードが必須です。とはいえ、スモールマーケットのブルワーズにはそこまで資金を投入できません。加えて、今オフの年俸調停が18人もいるので、全部を全部補強するのはまず不可能。なので最後に野手補強の優先順位を考えてみます。


〇 野手補強優先順位

◇ 1位:捕手

Narvaezは今オフ、Caratiniは来オフFA。40人枠に入っている残り3名(Feliciano、Henry、Jackson)はいずれもMLBレベルではありません。Caratiniとプラトーンを組める、欲を言えば打力のある捕手が必要不可欠です。とはいえ、FA市場でうちがContrerasを買えるなんて思ってません。

一部ではTORとのトレードが提言されています。TORの40人枠内にいる捕手はKirk(24)、Jansen(27)、Moreno(23)の3人。レギュラーのKirkをあと4年保有できるTORは、JansenとMorenoのいずれかをトレードチップにすると思います。

現実的な話であれば、Jansenをトレードで獲得したいですね。保有期間が残り2年で、23年の年俸(予測)が$3.7Mとリーズナブル。加えてバッティングは .260/.338/.516 / 126 OPS+ / 3.9bWAR。加入すれば大きなアップグレードになります。


個人的にはChristian Vazquezと契約できたら嬉しいです。打力がありますからね。あと私のお気に入り選手なので。


◇ 2位:DH / 一塁手

DHは主にMcCutchenが務めていましたが、今オフでFA。カッチはwRC+98と平均以下でしたので、来季はもっと打力のある打者を連れてきてほしいところ。

一塁に関しては、”来シーズン地区優勝を目指すのであれば”Tellezよりパワーと確実性のある打者が必須です。Jose Abreu(CHW)やJosh Bell(SD)を獲れたらいいですけど、お金がありませんね。
31歳のJon Singletonがルール5プロテクト期限の日に40人枠入りしましたが、Tellezの下位互換、よくても同等かなと予想しています。今季はAAAで.219/.375/.434。BB%20.1、K%27.7。パワーは申し分ないですが、、、左のHiuraにならないことを祈るばかり。


◇ 外野手

外野ですが、ここの補強はないと思います。センターはMitchellとTaylorのプラトーン起用。レフトはYelich。ライトはRenfroeが放出された現在、Ruiz(40人枠)が筆頭候補。さらにAAAにはJon WiemerSal Frelickが控えています。頭数は足りているので、優先順位としては低いです。


◇ 内野UT

これは単純に今オフFAになったJace Petersonの役割を果たす内野手が必要だということ。右の内野UT、Brosseauとプラトーンを組める左打者がマストです。


以上です。
今後はロースター整理関連のnoteを書いていきます。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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