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「甘い言葉」

新宿マルイでのPOP UP SHOP、
4日間の会期を無事終えることが出来ました。

実際に足を運んでジュエリーに触れてくださった方々、ありがとうございました。

少し落ち着いたので、今回制作した『甘い』ジュエリーシリーズについて、書き綴れたらと思います。

POP UP参加のお話を受けてから、今回1番最初に制作したのはメイン写真にも使っている『甘い言葉のピンキーリング』でした。

これは私の持論になるのですが、
私たちが毎日を生きる中で、嬉しい、楽しい、のプラスの感情も、悲しい、辛い、のマイナスの感情も、きっと半分ずつくらいなんじゃないかと思うんです。

でも、楽しい時間は一瞬だと感じるみたいに、プラスの感情も感じている間は本当に早く過ぎ去ってしまっていて、生きてきた時間の中で辛かった時間の方が多いんじゃないかと感じることがあります。
でも確かに幸せな時間も私の中には存在していて、その幸せな時の感情があるからこそ、私たちは辛いことがあると分かりながらも毎日を歩いていられるんじゃないかとも思うのです。

友達は一生ものというけれど、
環境の変化でいつの間にか会えなくなって疎遠にはなる友人はいるし、
大きな喧嘩をしてもう会うことはないのかなと悟る時もあります。

ずっと一緒なんて言葉を交わした恋人のことも、
自分だけの気持ちではどうにもならなくて離れなくてはいけないこともある。

家族はほとんどん場合、年老いた順にいなくなってしまう。


年を重ねれば重ねるほど誰かと親密になるのを避けてしまうのは、
誰かと出会えば、そのほとんどに別れがセットであることを知ってしまったから。

でもその「大好きだった人たち」からもらった、心が温かくなって何度も何度も思い出してしまうような「甘い言葉」を、

心にゆっくりと溶かして
単語としての意味ではなく

その言葉をもらった時の空気の香りや温度
目に映った色の記憶だけ残して

形にしてお守りみたいに身につけておきたい。

そんな思いから、この『甘い言葉のピンキーリング』を制作しました。

このリングを身につけてくださる方にとっての「甘い言葉」が、
誰からもらった、どんな言葉なのか、
私は直接知ることはできないけれど。

白くてキラキラしたシルバーの色にきっと重なって、
毎日を歩く為のお守りになりますようにと願って。



そんなピンキーリングのイメージから始まって、
今回は『甘い』を主軸に他のジュエリーも制作しました。

『わたあめリング』は、
白くてふわふわ甘いわたあめと、
膨らんでいく気持ちを重ねて形にしたリングです。

止まらない気持ちも、
甘ったるくて食べきれない感情も、
膨らみ続ける限りは止めなくていい、

他人にも自分にもそれを止める権利はないのだから。

膨らんだ気持ちのせいで悲しい思いをしたとしても、
時間が経ったらいつかは、甘かった記憶だけになるはずだから。

可愛いフォルムとは裏腹に、硬いシルバー素材でわたあめのような柔らかさを出すために、表面の仕上げを決めるのには時間がかかりました。
光に当てると確かにつけているのに、まるで透けるような色合いを楽しんでいただけたら嬉しいです。


そして今回ピアスに初めて挑戦してみた、『甘いチューリップピアス』

お砂糖漬けにしたチューリップをイメージしながら、すみれの砂糖漬け、なんてよく聞くけれど、
私の中で1番可憐で、可愛く儚いチューリップの花を、柔らかくデフォルメしながら耳元に馴染むような形を作りました。

チューリップの形作りが納得できるまで作れた分、金具が邪魔になってしまうのが嫌で今回はピアスだけでのお作りでしたが、
また色んなお花でイヤリングやイヤーカフにも出来たらいいな、と思っています。


最後に制作した『お花のミニピアス』
今回のジュエリーたちを制作するにあたってTwitterやInstagramでどんなジュエリーアイテムが欲しいかを教えていただいたところ、
「小ぶりで日常使いができるnanaiさんの作品らしいピアス」というメッセージをいただき、このミニピアスを作ろうと思い形にしました。

石は今回は強度のある合成石を使っていて、「彫り留め」という技法で石を留めています。

単体でつけたらさりげない石の輝きが可愛くて、
片耳は何か大きいものを、そして片耳はこれを、なんて付け方にしても可愛いと思って、
小さな小さなミニミニピアスですが日常使いとして、満足のいくものが作れたと思います。


今回のPOP UP SHOPでは他の作家さんたちとご一緒させていただいての参加でしたので棚一段のスペースでしたが、
オリジナルのジュエリーボックスを作ったり、展示方法にもこだわれて、個人的にもとても好きな空間づくりができたと感じています。

2月に行なってたグループ展を終えてからこの一年、
物の価値についてずっと考えていました。

安価なお店でも生活のほぼ全てが揃って、
お洋服もジュエリーも、その価値に天と地の差がありすぎる今の世界で、自分が作った作品に、ジュエリーに、つけた価値を見てくださる方々にどのようにして伝えられるか、感じてもらえるか。

ずっと考えて、でもなかなかわからなかったその答えを秋に友人と訪れたカフェで見つけた気がしました。
そこはプリンがとても美味しい、住宅街の隅にこっそりオープンした隠れ家のようなお店で
席から見える店員さん達の振る舞いや、私たちに接する話し方、水の入ったポットまで、目に入るものすべてが、まるでプリンひとつの為に合わせるかのように洗練されていてとても心がときめいたのを覚えています。

ジュエリーを作っていきたい私は、
作品そのものだけではなく、作る過程や展示やお渡しする際の箱や袋まで、細部まで気持ちを込めて向き合ってこだわっていくことがその答えなのではないかと。

この答えがあっているかはまだわからないけれど、これからの制作活動と、作品を見てくださる方々、手元に迎えてくださる方々との関わり合いの中で、ちょっとずつ答え合わせができたら幸いです。

ブランドとしての活動を始めて約3年、
今年はグループ展、デザフェスや藝祭、学内での展示など、色々なタイミングで実際に作品を見ていただける機会を作れてとても走り抜けた1年になりました。

いつまで経っても何年経っても、
誰かの心に触れたいという気持ちを忘れずに、
同じデザインだとしても一つひとつの作品、
向き合う事を大切にやっていきたいと思います。

また実際に皆様にお会いして作品を見ていただける機会を作れるように、頑張ります。

少し早いですが合わせて年末のご挨拶とさせてください。

2022年、
広すぎるSNSの波から私の作ったものを見つけて下さってありがとうございました。
誰かに届いて欲しいと込めた願いが、少しでも感じていただけていたら嬉しいです。

2023年、
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

nanai.

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