🅂5 ライフデザインシートの作り方(3)
「A little dough」 第2章 プランを考えてみる 🅂5
➤大聖堂で働く三人の石工
さて今回は前回やり残した「人生の目的」について考えてみます。
ジョン・ケイ(英・金融ジャーナリスト)は、著書「想定外」のなかで、目的や目標の考え方を示す為に「中世の大聖堂で働く三人の石工」の話を以下のよう紹介しています。
この三人は皆石を切り出すという同じ仕事をしていたにもかかわらず、返答は三通りでそれぞれ違います。
① 事実のみを伝えた最初の石工(基礎となる行動)
② 中期的な目標を伝えた二番目の石工(中位の目標)
③ 人生の目的を伝えた三番目の石工(高い次元の目的)
これは同じ仕事をしていた3人がそれぞれ別次元の意識で働いていたということのようです。「この意識の違いが仕事の結果に影響を与える」ということも考えられますが、私にはジョン・ケイの引用はむしろ「人生における三つの意識の必要性」を伝えようとしているように感じられます。石工の人生の目的は「神の栄光の為に働くこと」つまり「神への奉仕」であり、その為の中期的な目標(ビジョン)として「聖堂の建設」があり、これを確実に実行するためには目前の課題である「石を切り出す」仕事に専心する、ということになります。
➤ライフデザインシートの「人生の目的」
石工の話を例にとると、「何時か何処かで何かが実現する」といったことはビジョンや目標であることがわかります。「目的」という言葉が「人生の目的」となると、本来の意味である単に「的(まと)やゴール」という意味では説明しにくくなります。単純に「的」と考えると、人生の目的は「死」だという方も出てきて、話がややこしくなります。「死」は単なる生命の終わりの時と考え、それまでの「人生というプロセスを通して目的であり続けること」は何か、と私は考えます。
3番目の石工の「神の栄光の為に働くこと=神への奉仕」という「人生の目的」は、「一生を通じて特定の価値観の充足度を高めていくこと」と考えられます。 石工の「人生の目的」は「神への奉仕」以外にも、「美の追求」や「技術力の追求」といったこともあり得ますし、一方で「家族が健康で幸せに暮らせること」という可能性もあります。
こういったことをすんなり言葉にできる方は、それを人生の目的として記入します。少しでも思いつく言葉があれば、ためらわずに記載してください。(1)で記載した価値観のキーワードを振り返ってみるのことで、たくさんのヒントがあるはずです。またひとつに絞り込む必要もないと思います。
ただ一方で、そういった特定の価値観を「人生の目的」として言葉にできない方もいらっしゃると思います。屁理屈のようですが、私たちは生まれる前から意図して「地球」に生まれてきた訳ではありません。つまり、もともと目的は持っていないのです。そこで「生まれてきてから地球で生きる目的を探す」ことになります。しかし死んでしまえば、こうした思考も含めて「すべて無に帰す」という現実を知ったうえで、死ぬまで続く人生の目的を特定するのは、なかなか難しいことかもしれません。
ー「人生のミッション」「人生のあり方」「人生観」という拡張系
「人生の目的」が特定しにくい方は、「ミッション」として考えてみてもいいと思います。同じような言葉ですが「自分の使命」という言葉にすることで、イメージしやすくなることもあるかもしれません。また「人生の目的」を「人生のあり方」や「人生観」という風に置き換えて考えてみることもできると思います。例えば私なら「自分自身の価値観に忠実に、自分自身が納得できる方法で、やるべきことに挑戦し続ける」、つまりひとことで言えば「自分自身に忠実に生きる」というようなことを想定します。ただ価値観はあまり特定されていないので、記載した「目的」の定義には当てはまるかどうかは別です。
ー「人生の目的」とは
先に「人生の目的」を「一生を通じて特定の価値観の充足度を高めていくこと」と記載しました。私たちは「価値観」を出発点に「ビジョン」を掲げ「ベクトル」をたてる、そしてその連続が「ライフ・デザイン」となっていく、という考え方も示しました。
もう一度上記の「ラフ・スケッチ」を見てください。人生という横の「時間軸」に対して、縦軸は「価値観の充足」とあります。そして①~➂は、私たちの「価値観」を凝縮した「ビジョン」です。つまり、「一生を通じて特定の価値観の充足度を高めていくこと」という「人生の目的」を具体的に表しているのが、「ラフ・スケッチ」ということになります。
ここでは「人生の目的」を難しく考える必要はないと思います。私たちの「価値観」をベースにラフ・スケッチがざっくりと描けるなら、あとはどういう言葉にするか、というだけの話です。つまるところは、私たちの選択した「価値観」を言い表せればいい、ということになってくるので、それなら前にも書いた通り、ゆっくりと考えればいいということになります。というのも、価値観そのものがすでに存在しているように、人生の目的もやはりすでに存在しているからです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?