見出し画像

東洋美術学校で“自分らしさを探る”授業をした話。

はじめまして。株式会社THE GUILD STUDIOでデザイナーをしている猪口です。

先日THE GUILDの吉竹さんにお招きいただき、iumの加藤さんと一緒に東洋美術学校クリエイティブデザイン科高度コミュニケーションデザイン専攻、2年生向けの授業「インターフェイスデザイン I」にて特別講義をさせていただいました。

社会人1年目ととても経験が浅いのにも関わらずこのような貴重な機会をいただき、私自身も学びがあったので授業や準備について振り返りました。


講師紹介

🧑‍🏫 猪口朱音 / THE GUILD STUDIO
2000年、神奈川県生まれ。2023年に多摩美術大学統合デザイン学科を卒業。同年THE GUILD STUDIOに入社。在学中、コンサルティングファームに参画する等、幅広い領域のデザインに取り組んでいる。

🧑‍🏫 加藤瞳 / ium.inc
1996年、愛知県生まれ。同志社大学卒業後、人材業界でキャリアアドバイザーを経験。その後、iumに所属し、主にブランディング案件を主軸にロゴやグラフィック、webデザインなど幅広く取り組んでいる。

講義のテーマ

今回のテーマは「らしさをみつける」
本講義内における“らしさ”とは、自分の価値観・自分が好きなものや興味があること・こだわりを指します。“らしさ”は自分が本当にやりたいことの源泉であり、ここから自分のありたい姿や夢を思い描くことができると考えています。また、ありたい姿を描くことによって自分の中に軸が生まれ、進路をはじめとしたさまざまな選択の場面で意思決定もしやすくなります。 本講義ではワークショップを介して各々が持つ“らしさ”を探り、自分のビジョンを考えるきっかけづくりができる場を目指しました。

自分らしく生きるための3ステップ。今回の講義ではステップ1の「らしさを知る」にフォーカスしました。

このテーマにした理由

吉竹さんからお話をいただいたのは10月頭頃。最初の打ち合わせで「受講している学生さんは、4年制の専門学校の2年生で基礎課程を終えて少しずつ専門的な学習に足を踏み入れたというフェーズ。進路についても考える機会も増えていくので、自分たちのこれからについて解像度が上げられるような時間にしたい」とお聞きしました。 授業自体はインターフェイスを学ぶ場ではあったのですが、今回はデザインのノウハウを話すというよりは自分のことを知る時間、目標を持つきっかけになるような時間になった方が有意義な時間になるのではないかと考えました。また、私はコンサルティング会社を、加藤さんは人材業界を経験したという経歴もあったので自分の内面を考えるようなワークショップを行う説得力があると思いました。

ワークショップをつくるまで

最初の打ち合わせで「2人の経験を生かしたワークショップができたらいいね!」となったものの、ワークショップの設計を0から行う経験は乏しい&加藤さんともほぼはじめまして状態…。そのため、お互いの幼少期からの自己紹介をし、我々の経験から受講者のインサイトとどう紐付けられそうかを議論するところからスタートしました。 テーマを探りつつ、ワークショップの事例が書かれたnoteや本を読みあさったり、運よく佐宗さん(猪口が学生時代にインターンをしていた株式会社BIOTOPEの代表)の講演会があったので聴きに行ったり、学んだ情報を元にランチ中にギルドメンバーと議論したり…とインプットとアウトプットを繰り返しながらかたちにしていきました。

授業の設計はFigjamで進めました。大まかな設計案は私が立て、最終的に細かい調整を2人でおこなっていきました。

ある程度かたちになったところで、吉竹さんに今期の受講者の特徴からどの案であれば最終アウトプットが描きやすそうかをお聞きしたり、そもそも設計したワークショップが本当にワークするのかを社内で検証したりと細かいチューニングも進めました。「社内でのワークショップの検証」は特に有意義だったと感じています。ワークショップを体験した上でのフィードバックはより受講者目線からの意見に近いので、精度を上げるのにぴったりでした(協力してくれたiumアルバイトメンバーには本当に感謝しかないです)。
最終的に色々な話し合いと検証から「自分の内面を探る→スケッチに落とし込んでイメージを広げる→言語化する」という設計に辿り着きました。

ワークショップづくりと並行して講義のメインビジュアルづくりも進めました。ある程度方向性を話し合った上で、私が持ってきた色鉛筆のテクスチャー×幾何形態の組み合わせのグラフィックと加藤さんが持ってきた鉛筆で落書きをしたようなグラフィックを合体させる、というなんとも不思議な作り方でしたが無事に可愛く完成。色も明るく前向きな印象にできました。

完成したメインビジュアル。講義の告知の際にA4に印刷して配布していただきました。

いよいよ当日

3ヶ月間の準備を経ていよいよ当日。講義全体の流れは、「自己紹介→らしさをみつけるとは?を説明する講義→ワークショップ→まとめ→質疑応答」。

緊張しながらも自己紹介と講義はスムーズに終了。続くワークショップが円滑に進むかドキドキでしたが、1週間前にお願いしていた事前課題も取り組んでくださっており、活気あるものになりました。

自己紹介の様子。幼少期から高校卒業、大学入学から現在に分けて内面を掘り下げるような設計に。(ちなみに金髪が猪口、黒髪が加藤さんです)

余談ですが、講義前日にたまたま見つけたFigjamのBGM機能がとても優秀で…。タイマーでセットした時間に勝手に止まってくれるのが便利でした。音楽自体もいい感じ。

ワークショップ終盤のスケッチでは、紙の中心に描かれた円を自分にたとえ、自由に自分を表現していただきました。またその際に今までのワークを経て発見した自分を積極的に取り入れながら描くというものを条件にしました。 時間をたっぷりかけられるわけではないので、クオリティーや表現は問わず描きやすさ重視で描いていただきました。

スケッチ用のワークシート。最後にタイトルまでつけてもらいました。

スケッチのワークは30分と他のワークよりも結構長めに時間をとっていたので、きっと飽きたりなかなか思いつかなかったりしてしまう人もいるだろうと思い、自由に立ったり話したりしながら進めて良いですよと声掛けしていました。が、みなさんめちゃくちゃ真剣に取り組んでくださり感動。

スケッチ中の様子。色鉛筆など、各々が使い慣れている画材を持参していただきました。

ワークを終えて私たちもアウトプットを見てまわったのですが、想像以上に個性が表れていました。

アウトプット紹介

実際にあったアウトプットをいくつか紹介します。

何かあっても表に出さず自分の中(円の中)で消化してしまうという自身の姿を表現した作品。
映画鑑賞が好きな方の作品。
1日1個はアイスクリームを食べないと気が済まない!という方の作品。

などなど、長くなってしまうので割愛させていただきますが、全部で20個近くの作品が並びました。作品について何名かのお話も聞かせていただいたのですが、浮かび上がった自分の内面と表現の結びつけ方が私自身も勉強になりました。
また、円を自分に見立てるのを条件にしていたことによって、円の内側だけに描くかあるいは外側にも溢れているように表現するかなどその人の内面をアウトプットする取っ掛かりにもなっていたのが印象的でした。

一通り講義が終わった後、ポートフォリオや制作物を持参していたので興味のある人は見に来てねのコーナーをおこなったのですが、こちらも関心を持っていただけました。受講者の皆さんともお話ができて嬉しかったです。

制作物を机いっぱいに並べて、興味を持っていただいたものを紹介しました!

講義を終えて

講義から1週間とちょっとが経ち、吉竹さんから受講者の皆さんの感想が届きました。じっくりと読ませていただきました。全体を通して、

  • 自分の“らしさ”が目標や夢につながるという点に共感した。

  • 自分を構成するもの、自分が影響を受けたものは何かを考える機会になった。

  • スケッチをすることで、今までのワークで浮かび上がってきた自分をまとめる時間になった。手を動かして考えることの大切さに気がついた。

  • 周りの人のスケッチと見比べて自分と他者の違いを感じられた。

などの意見が多かったのかなという印象でした。課題等に追われている中、たくさんの感想をありがとうございました。

講義をする機会が今までなかったので伝えたかったことが明快に伝えられているのか不安でしたが、前向きな感想が多くてひとまずホッとしました。
また、ワークショップを設計していく際にスケッチのワークはなくてもいいのでは?という意見も度々上がったのですが、描くことによって今までの思考をアウトプットする機会、まとめられる機会につながっていたのだということを再認識できてよかったです。

今回はらしさを知るワークショップだったとはいえ、たった180分の時間では「自分のらしさってこうなんだ!」と明確に気づけるものにしていくのは難しいと思っています。きっと苦労してなんとかアウトプットを導き出して、モヤモヤしたまま帰宅した方もいたかもしれません。今回は明快なゴールを導き出すというよりは、自分を知るきっかけの種を撒くことができればと考えていました。今後進路選択などする際に、受講生の1人でも「そういえばあの時の自分はこんな風に考えたな」、「自分を知る一つの方法としてこんなものをやったな。もう一度やってみようかな」と思い出していただけたら嬉しいなと思っています。

一連の講義を作るための思考やその大変さなど、私自身もとても良い経験になりました。改めましてこのような機会を設けてくださった吉竹さん、積極的な姿勢で参加してくださった受講者の皆さん、ありがとうございました。


report : Akane Inoguchi
photo : Ryo Yoshitake



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?