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小説を書きましょう! 61歳の新人小説家からの提言

 小説を書きました。あの寺山修司が生きていて、現在85歳で、アイドルグループをプロデュースする! その名も「TRY48」…という、ぶっ飛んだ物語です。えっ、ふざけてんのか、この野郎…喝! と『サンデーモーニング』の張本サンに怒られちゃいそうですが(ラーメン評論家的なオジサン構文ですんません…訴えないでください、元バイトAKBさん泣)、なんとこれが太宰治『斜陽』、三島由紀夫『金閣寺』、坂口安吾『堕落論』も載った創刊117年! という我が国でもっとも歴史と伝統ある純文学雑誌「新潮」12月号の巻頭に掲載されております。ぜひ、ご一読を!
 執筆の経緯については前回のnoteの記事で書きました。コロナ禍の期間、一人暮らしの私は誰とも会わず、鬱々として生き、ヤバい精神状態で過ごしてきた。で、あ! 小説を書こう、一人でできるじゃん、と。20歳で初めて原稿料をもらい、ライター生活41年のベテランですが、小説家としては新人です。同じ「新潮」に11年前に「アナーキー・イン・ザ・JP」という、百年前のアナーキスト大杉栄(ググってください!)の魂が現代の17歳の脳内に甦る…という、これまたトンデモな小説を掲載して、三島由紀夫賞なる新人作家に贈られる賞の候補になったんですよ。50歳でした。へ? てな感じ。とはいえ黒田夏子さんという作家さんが2013年に、なんと75歳で芥川賞を受賞されてますからね。年齢は関係ないのかも。近年では文芸誌の新人賞の応募も高齢者がめちゃめちゃ多しとか。そう、仕事をリタイアして時間ができた方々。
 あ、これは意外に大事なことかも。小説を書くには時間がかかるんですよ! ちなみに新潮新人賞の応募規定は(400字づめ原稿用紙換算で)250枚以内、文藝賞は100枚以上〜400枚以内とある。100枚だと4万字、400枚では16万字…これは大変ですよ。とても数日では書けない。これが俳句や短歌なら、パッと数分でできるんですけどね。
 で、文学新人賞に応募する人は、時間がある人になる。ひと頃はフリーターの応募者が多く、フリーター系小説でデビューする新人さんも多かったとか。なるほど、リタイア老人に次いでフリーターの方なら時間のやりくりができるんでしょうか…。
 えーと、私は「作家/アイドル評論家」の肩書きを名乗ってます。文芸評論家じゃない。それでも若い頃から小説を読むのが好きで、遂には小説を書くようになりました。文学の世界では、外人レスラーみたいなもんかな? しょっちゅう反則技をかまして、レフリーに怒られると「ノ〜、ノ〜、ノ〜」とか両手を上げてニヤニヤ笑いながらごまかしてやりすごしてます。
 けどね、外人レスラーだから見えることもあるんですよ。文芸外人レスラーが、これから超重要なことを言います。いいですか? 胸に刻んでください。

 この世のほとんどの人間は小説を書かないで一生を終える!

 これは大変なことですよ。みんなこんなすごいことに気づいてないのかな? ことに文芸関係者の方々は…。小説を書くには時間も労力もものすごくいります。何万字もの物語を完成させようなんて、よっぽど時間があって、やる気もある、つまり小説に対するモチベーションの高い人に違いありません。結果、どうなるか? 文学新人賞に応募される小説は、時間があって小説に対するモチベーションの高い人が書いた…よく似たタイプの小説になってしまうんですよ。その中でパッとデビューする人はいい。う〜ん、けどなあ。こうも思います。小説を書きたい人の小説は、なんで似たような「つまらなさ」なんだろう…。ああ、ここで才能という問題が出てくるんですね。
 たとえば、歌です。皆さん、歌を唄ったことがあるでしょう? 歌を唄ったことがない人は、ほぼいないんじゃないか。で、みんな自分が歌が上手いかヘタか知ってると思うんですよ。カラオケなんてのもあるし。人前で唄って、おっ、お前、めちゃめちゃ歌、上手いじゃん! ってホメられますよね。えっ、オレ、歌が上手いんだ…と自覚する。それでさらに唄い込んでプロのシンガーになった人がいっぱい、います。
 ところが〜小説の場合は、そうはいきません。ほら、<この世のほとんどの人間は小説を書かないで一生を終える!>んですから。自分が小説が上手いかヘタかわからないままに死んでしまいます。もったいないですねえ。本人が自覚しないだけで、もしその人が小説を書いたら、すごい才能を発揮して、文学を…いや、世界そのものを変えてしまう力を持ってるかもしれないのに。ちょっと大げさかな?
 いや、たとえばこんなことを想像してください。ものすごいゲームデザイナーの才能を持つ人がいたとする。しかし、その人が江戸時代に生まれて死んだとしたら…。ああ、残念、生まれる時代を間違えた。才能が開花するには、本人だけの力ではどうしようもない。生まれる時代とか、才能が発揮できるジャンルに出会う機会とかなんとか…そんな要素が実はすべてを決定してしまうんだなあ、と(あ、最近流行の言葉だと「親ガチャ」…ならぬ「時代ガチャ」…「ガチャ」って「宿命」ってことっすかねえ?)。
 スーザン・ボイルという人がいます。覚えていらっしゃるでしょう。イギリスの素人オーディション番組に出場した、見た目、ぽっちゃりとしたオバチャン…審査員たちは冷笑気味に見ていた…ところが、唄い出した瞬間、天使のような歌声で審査員もみんな度肝を抜かれた。会場全体が大感動して最後はスタンディングオベーションで涙を流す観客もいました。2009年春のこと。当時、彼女は48歳。長らく高齢の母の面倒を見ていたが、母が91歳で亡くなると猫とひっそりと暮らしていたと言います。そんなスーザンが初めて人前で唄った。世界を驚かせました。その年の暮れには紅白歌合戦にも出場しましたね。いや〜、こういうことがあるんですよ。
 今、私は思います。小説の世界にもスーザン・ボイルがいるんじゃないか? まだ誰も知らない…いや、本人でさえも気づいていない、すごい才能の持ち主が。そう、それは…あなたかもしれない。
 ぜひ、小説を書いてください! 小説を書かないで一生を終えるなんて、もったいないですよ。なんせ小説は家で一人で書けて、お金もかかりません。今、すぐできます。で、書けたと思ったら、小説新人賞に応募するのもいい。いや、そうだ…このnoteで発表するのもいいじゃないですか! noteからすごい小説家が出てきて、大ベストセラーを出したら…小説のスーザン・ボイルが誕生するかもしれない。そんなワクワクするようなことを…文芸外人レスラーの私は今、夢想しております。




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