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【妊娠記録】恐れていた胎動を感じた日

今年、父と母になる

2023年3月に妊娠していることが分かった。
朝目覚めて、なんとなく「検査してみよう」と思い立ってトイレへ向かったら、見事にくっきり2本線が出た。陽性だ。
その数ヶ月前から妊活をしていたので、検査結果を見た時の驚きは少なかった。
すでに家を出ていた夫に連絡すると、もう職場に着いている時間なのにすぐに電話がかかってきたことを覚えている。
そうして私たちは、父と母になるスタートラインに立った。

そこにあったのは、感動ではなく不安だった

なんだか信じられない気持ちで毎日を過ごす。こんなぺったんこな(本当はちょっと下腹が出ているけれど)お腹に、命が宿っているのか?
近くの産婦人科へ連絡して、初診の予約を取る。
産婦人科で見たエコーには、真っ黒な丸の中に小さな白い点があった。
「正常な妊娠です」
お医者さんのその言葉を聞いても、なんだか実感が湧かなかった。

2週間後、再び訪れた産婦人科で、赤ちゃんの心拍を見た。
光が点滅しているような、想像よりもずっと早い鼓動を見て、「生きてる」と思った。
それと同時に、その脈拍が飼っている愛猫のそれと似ていて「猫みたいだな」とも思った。

お腹の中に宿る命を目で見て、私が感じたのは不安だった。
これから妊娠が継続して、出産して、無事に産まれた子どもを育てていく。そんな果てしなく長いスパンの将来をうまく描けなかったことも理由の一つではあるけれど、私が強く感じたのは「私の命とは別の命が、私の中にいる」ことへの不安や怖さだった。

私の身体は私のもの、だという意識

思えば、私は他人よりも「私の身体」に対する意識が強い気がする。
妊活を始めようと決めて、初めて避妊を止めた日も私を襲ったのは、ほんの少しの嫌悪感だった。
決して、夫に対する嫌悪感ではない。ただ、自分の身体に対する決定権を奪われたような気がした。

私の身体は私のもので、それに対する意思決定は全て私に委ねられている。
そんな意識が、私は他の人より強いのかもしれないと気付いたのはそこからだった。

妊娠が分かって、命の鼓動を目で見た時、「私の身体なのに、別の命が体内にいる」ことの恐怖が拭いきれなかった。
だから、今はまだ実感できなくとも、いつか感じる赤ちゃんの胎動が怖いと思っていた。

そしてその日はやってきた

初めて胎動を感じた時、出てきた感情はやっぱり、恐怖だった。
正直に言うと、「うわぁ・・・」と思った。
お腹の中で、命が動いている。そのことに、感動できる余裕はなく、ただ違和感から意識を逸らすことに必死だった。

でも、そんな私が、妊娠6ヶ月を迎えた今、胎動を愛おしく思っているのだ。

胎動は命のメッセージだと気付いてから

妊娠してからと言うもの、ほとんど毎日妊娠や出産、育児のことについて調べている。
その中で「胎動が少ない=危険なサイン」という記事を見つけた。
胎動が少ないということは、赤ちゃんの動きが少ない、つまり赤ちゃんに元気がなく、最悪の場合は心拍が止まっている可能性もあるらしい。
元々不安症な私は、その記事を知ってから苦手だった胎動に意識を向けるようになった。

意識的に胎動を感じるようにしてみると、なんだか胎動が少ない気がする・・・。
週数的に、そこまではっきりと感じられる週数じゃないと分かってはいるものの、前はもっと動いていたかもという不安が拭いきれない。

安心のために、産婦人科を受診して相談しようと夫に連絡を取った日だった。
「今日の仕事終わりに、病院に行ってくるね。胎動が少ない気がして心配だから」
と夫に連絡。
その日私は在宅勤務で、お昼休憩の間はベッドに横になって休んでいた。
そうすると、今まで感じたことのない激しさで、お腹の中の赤ちゃんが動き始めた。
ぽこぽことお腹の中を元気に動き回って、まるで「元気だから病院に行く必要なんてないよ!」と言ってくれているみたいだった。
なんだかそれがとても愛おしく、元気だと伝えてくれてありがとう、という気持ちになった。

夫には「病院行くって言ったら今までで一番元気に動いてるわ。もしかしたら病院嫌いなのかも」と冗談混じりのLINEを送っておいた。
その日から、私の中で胎動が「別の命を感じさせてくるもの」から「赤ちゃんからのメッセージ」だと感じられるようになったのだった。

最初から親になれるわけがない

当たり前だが、妊娠したからといって急に親になれるはずがない。
いろんな知識を得て、一つ一つ不安を解消して(それでも新しい不安は生まれてくる)少しずつ親になっていくのだ。
これはもう何万回も言われてきたことだけれど、怖かった胎動を愛おしく感じられた日に、私は身をもって「こうやって徐々に親になっていくんだな」と思うことができた。

生まれてくる我が子は、こんなふうに私たちに色んなことを気づかせてくれるのだろう。
生きているだけで、呼吸をしているだけで、その小さな手足を動かすだけで、あなたはこれからたくさんの気づきを私たちにもたらしてくれるんだろうな、と思う。
私に胎動の愛おしさを教えてくれたように。
もうすでに、私の考えを良い方向に変えてしまったお腹の中の命に、面と向かって「ありがとう」を伝えられる日を心待ちにしている。

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