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謳う魚、騒がしい蟹達

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稲垣足穂『一千一秒物語』のオマージュ作品です。
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2014年11月の記事一覧

『謳う魚、騒がしい蟹達』冊子版計画

先ほど『謳う魚、騒がしい蟹達』のまとめ記事を投稿しました。

現状で目標の3分の2の量を執筆した状態なのですが、全量が上がったら、その後は全体の質を向上した上で冊子(A6版)を作成するつもりです。

将来的には、文学フリマにて、出来上がった冊子を提供できたらなー、と考えています。
需要がどの位あるかわかりませんが、人の集まる場所に出ていきたいので、、、

というわけで、期間はあいてしまってますが、

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謳う魚、騒がしい蟹達(20141129版)

○私が、私に撃たれた話
 市電通りを歩いていると、フロック・コートを着た男が話しかけてきた。
 私が男のほうを振り向くと、ズッシリと重い紙袋を渡された。
 おや、なんだろう、と思って袋を開けると、中には黒光りする六連発が入っていた。
 驚いて前を向くと、フロック・コートの男が私に背を向けて歩き去ってゆくのが見えた。
 私は、急いで六連発を構えると、男の背中をめがけてズドン!
 そのとき、私は腹部に

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マンホールの話

ある朝、私が家を出てみると、マンホールの穴からキラキラした光がもれていることに気がついた。はてと思い、思いきって蓋を開けてみると、中からどっとお星さまが溢れだして、空へと上って行った。地面に倒れ込んだ私の目に、たくさんのお星さまが青空へと溶け込んで消えて行くのが見えていた。
翌日、何気なく新聞を開いたら、伝言欄にコメットクラブという発信人で、『昨日は、お怪我はありませんでしたか?』という記事が掲載

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放り投げられた話

夜になるとお星さま達が市立公園に集まっているというわさがあった。
ある日、彼らが今夜も集まるらしいという話を友人から耳打ちされたので、私はこっそりと市庁舎のベランダに忍び込んで望遠鏡で見張っていたが、突然ひょいと背中をつままれると、ホイッ!という声と共に放り上げられ、気がつけばT川の茂みに倒れ込んでいた。そして私立公園の方から賑やかな歓声が響いていたが、私が市立公園に駆けつけてみるとは、もうそこに

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家にお星さまがいた話

 ある晩、家の白熱灯のスイッチをひねった時、ふと見ると電線が切れていることに気がついた。はて?と思いその白熱灯を見たが、確かに灯りがともっている。
 これはいよいよ妙な話だと思い、 白熱灯を調べると、チラチラとした光が揺れていて、手で触れるとパチン!と鳴った。
 ポケットから手袋を出して、思いきってそれをつかもうとすると、突然周囲が明るくなり、白熱灯の輝きが、シューと音をたてながら夜空へと飛び立ち

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呼び鈴の話

 夜中、私が家でねていると、けたたましく呼び鈴がなった。
眠い目を擦りながら入り口に出てみると、そこには誰もいなかった。
誰かのいたずらかと思い、部屋に戻って寝ようとすると、そこにはすでに私が寝息をたてていた。

 翌朝、この事件について色々と考察がなされたが、結局は私がお星さまに騙されただけだろうという話だった。

家の場所を聞かれた話

 ある晩の事、アセチレン灯の明かりの下に立っていたら、一人の紳士がやってきて、私に道を訪ねてきた。私は紳士の聞く通りに答えたが、紳士と別れた後でどうやら紳士のいく先が私の家であることに気がついた。
 私は、はて何だろう?と思いながら家に帰ってみると、ただ私の家の上にたくさんのお星さまが集まっていることに気がついただけの話だった。

三日月の話

 新月のすぐあとの話で、ある晩に悪友のFがおもむろに空にハサミを当てると、実に注意深く三日月を切り取った。
 お月さまはふんわりとFの手のひらに落ちてくると、淡い光を放った。
『今日は、三日月だな』私がお月さまを見定めてそう言うと、
『そうでもないさ』
そう答えると、Fはお月さまを裏返しにして空へ返してしまった。
 そんなわけで、数日後にすぐにまた次の新月と、三日月の夜がやって来たのだった。