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縫い目が少なければ安いのか

縫い目が少ないから安い。

という記事があったので、僭越ながら補足をさせて頂こうと思う。この表現だけでは誤解を招く可能性が高いと思った為。

デザインや縫製仕様、コストは複雑に絡む為、1つの事柄だけで判断するのは非常に難しく表に現れていない事こそ重要、ということもある。


製品作成【のみ】に掛かる費用

まず服を作る為【だけ】ならどのような費用が掛かるか。大まかに言えば、生地+付属+工賃。これらに輸送費や倉庫代、クレジットカード手数料など様々な費用を想定して予定を立てる。詳細は会社ごとに異なると思うので、予算構成に興味がある人は、各会社ごとのPL作成等を調べてみてほしい。

生地

表地・裏地・別布など。ざっくり言えば服に使っている布全ての料金。

付属品

ボタン・ファスナー等。表には見えない位置に使っている付属もある。

工賃

縫製の代金+二次加工代金(ワンウォッシュ、プリント、刺繍)など。



縫い目が少ないと安くなるのは。

上の中で工賃の部分。工賃計算は工場さんごとに考えが異なると思うが、時間が掛かるものほど高くなる、という理解で良いのではないかと思う。そのため縫う回数≠縫い目が多くなれば時間が掛かり高くなる。

難易度が高い縫製仕様や特殊ミシン、針間(縫い目)の細かさなどでも時間が変わり工賃は高くなる。これらも説明すると長いので省略。

この点だけで判断するなら、縫い目が少ない=安い、というのは成り立つ。


縫い目を増やせば用尺が減ることがある

用尺とは製品を作るために必要な生地の長さ。

縫い目を増やせばパーツは小さく分割される。パーツが小さければ、効率的に裁断出来るようになる場合がある。上で言う所の生地の値段が下がる。

結果、減少した生地代金 > 縫い目が1箇所増えた場合の工賃上昇 が成り立つ場合、費用は下がる。


つまり

縫い目が少なければ安い、というのは他の費用に関わる部分が変わらないという条件を満たしている時のみに正しい。


補足

・縫い目をどこに設定するか次第で、かえって用尺が増えることもある。

・縫い目が少ない方がパターン作成としては難しい事が多い。

等など、背景を理解した上でデザインや表現したい事と価格・ブランド価値などのバランスを取る必要がある。


個人的に思うこと

どんな比較検証にも言える事だが、変数がどこなのか・どの条件を固定するのかなど明確にせずに、○の場合が正しいというのは誤解を招く可能性が高いと思う。

自分がコレが好き、という発信は良いと思う。【個人の感想】として。


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