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映画『福田村事件』(森達也監督)感想

映画『福田村事件』(森達也監督)

実話に基づいたフィクション。

この映画が公開される情報を知った時、
直感的に「これは観にいかなければ」と
そんな衝動に突き動かされました。

今日の分の小説のゲラ作業を早く終え、
辿りついたのは、渋谷ユーロスペース。

チケットを買い、一人席に着くと、
高齢の方から若者まで、ほぼ満席。

100年前の日本の
自然豊かな農村の様子が、
スクリーンに静かに広がり、
当時を生きる人々の力強さを感じ、
しかし、辛い戦争による暗い闇が、
たしかに人々の心に影を落として、
主人公の澤田が隠す辛い過去が何か、
少しずつ少しずつ展開され始めた頃から
気がつけば森達也監督の演出に誘われて
食い入るようにスクリーンを眺めてた。

舞台は1923年の、千葉県東葛飾郡福田村。

関東大震災の5日後の9月6日。

主人公の夫婦
リベラル派の村長
村の自然の中で生きる青年
戦争で夫を失った未亡人
福田村の自警団のリーダー
香川から訪れた薬売りの行商団

全ての人たちの視点で
物語は慎重かつ丁寧に描かれ、
「善悪二元論」でもなく
「個別の視点」でもなく
なぜ、普通の人達が集団心理に流されて、
惨たらしい事件が起こってしまったのか。
それに追っていきます。

とても辛かった。
辛かったけれど、観て良かった。
脳が震えるほど衝撃を受けました。

人は、美しい生き物。

けれど、窮地に追い詰められ、
弱さや狡さが露呈したその時、
どこまでも悲劇が起こり得て
そして、それは
遠いどこかの出来事ではなく、
現実に起こったことなのだと。

これを、「見知らぬ他人の弱さ」だと
切り捨てることは、私には出来ません。

いつ、どんな時でも、
自分にも違う形で起こり得る可能性があるから、
平和について考え続けることが大切なのだと、
この映画が私に教えてくれるのは、
とても、とても多いと思いました。

人はあらゆる決断をする時、
自分のことだけではなくて、
大切な人の顔を思い浮かべ
たくさんのことを天秤にかけながら
選択をしていかなければなりません。

心に余裕を持ち、
知性や教養、矜持、
それらを駆使しながら
社会的に生きていくためには
「愛」が必要であって、
しかし、簡単に「愛」というけれど、
その愛を、私は持っているだろうか。

本当に窮地に追い詰められた時、
どのような判断を迫られるのか。

本当の弱さとは、強さとは。

今、問われている気がしました。

原作「福田村事件」(辻野弥生さん)。

幾度も取材を断られ
大変な思いをされて
手弁当で駆け回りながら
とにかく執筆に苦しみ難航したと
とあるインタビューで読みました。

原作者の方にも心から敬意を感じます。

最後になりますが、主演の井浦新さん。

それから個人的ではありますが、「818倶楽部」(僭越ながら誕生日が8/18でご一緒の)、いつも温かく私の作家活動を見守って下さる水道橋博士の熱演。

お二人共、本当に素晴らしかったです。

ご出演者の俳優の皆様、とても素晴らしかったです。

#福田村事件

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