きものリアルクローズ 1
似合う色は若見えする
いつもと違う色を試そうと、ずっと気になっていたペールブルーというか薄縹というか、とにかく水色系を巻きつけてもらうことにしました。大きな鏡の前で、反物を見頃のようにかけ、袖のように輪にして、そして見つめた自分の顔は、うーん、イマイチ。老けて見えるのです。地味だわあ。
言い訳させてもらえれば、断じてきものの地色のせいではなく、私の肌色との相性なのだと思います。
よく、着映えする、という表現を使いますが、それは、カッコよく見える、オシャレに見える、若々しく見える、などをひっくるめた言葉だと思うのです。きものの場合、洋服のようなデザインバリエーションはありませんから、素材の醸し出す色の感じ−−−これが難しいのです、何色か、という単純なものではなくて、色と素材の組み合わせが、着る人を引き立てるかどうか。水色は、私にとっては新たな着映え色として採用したいものなのですが、このたびは残念でした。
で、違う反物を当てました。灰色です。地色にちょっと青色が感じられます。生地に光沢がほのかにあります。ああ、かっこいい。だけど私に似合うかなあ。恐る恐る、巻きつけてもらったら、おお、顔が若返りました。
どう考えても、水色より地味、よく言えばシックな、メンズっぽい色です。
でも、灰色にほのかな青色、糸の光沢が奏でるエレガンスがあって、その味わいが私の肌にとても合っていたのです。
似合う色は人それぞれです。でも、若々しく見せたい、華やかに見せたい、と思って綺麗な色を選ぶのは、早計だと思うのです。とにかくまず当ててみること。その時に、鏡に映し出された自分の顔が、自分の好きな顔かどうかを冷静に見てみましょう。私たち、毎日鏡の前で、自分と向き合っていますよね。今日はシュッとしているなあ、今日はやだわあ、むくんでいる。あれ、垂れてるなあ、目が窪んでる、あれこれ雑感が去来しますが、それって、誰よりも自分を知っているということではないでしょうか。だから、「お似合いですよ」というおだて言葉には惑わされず、自分が思い描くコンディションの良い日の顔と、鏡の前の顔を比べてみてください。
気に入ったものが、ピタッと似合えば、最高にハッピーです。でも似合わなかった時に、なんで似合わないと感じたのか、どんな場所に着ていきたいのか、などを具体的に言葉にしてみると、お店の人が、真剣に似合いそうなものを探し出してくれます。まず一枚、気に入ったものを当ててみることで、真に似合うものと出会える扉が開きます。ちょっとドキドキしますが、どうしても出会えなかったら、ごめんなさい、とお断りしてよいのですよ。高い買い物なのですから、真剣勝負してください。
写真は、私の大好きな帯の一つ。勝山健史さんのルーマニア華文の袋帯。江戸小紋や色無地、光沢のある織りのきものに合わせます。