表と裏の世界
最近は自分たちの”創作”に取れる時間がふえてきていて、少しづつだけれど、織物でやりたいことが形になってきています。
今回は、龍の柄について書いてみます。
私たちの作っている織物は、経糸(たていと)2400本くらいを使用しています。
その2400本をざっくりと4分割して、緯糸(よこいと)をその経糸にからませて表と裏との”2層”の奥行きがある一枚の布へと作り上げていくのです。
【 表の層 】
写真に見られる龍は、白い経糸と、9種類もの緯糸を使って織りあげたものです。
①~④ 白、ベージュ、赤、青の絹糸。
⑤~⑦ 金糸、銀糸、ブルー銀糸。
⑧ 白パールコマ箔。
⑨ 黄色の毛糸。
⑧、⑨についてですが、
龍の身体の部分には、”コマ箔”と呼ばれる少し平ぺったい糸を使用しています。
そして、裏側にあるもう一層と、表の層との間に”毛糸”を入れて、少しぷっくりとさせる効果をつくり上げています。
【 裏の層 】
龍の胴体の間に入っている黄色い毛糸は、表側に少しだけその色が響いていて、龍の胴体がちょっとだけ、ベージュっぽくなっています。
このように、裏と表とをつくる層があって、一枚の布が出来上がってきます。
糸数は作っている本人でないと、表面をちらっと見ただけで「言い当てる」のは難しいと思います。
ちょっとだけほんのりと光が射してほしい部分にだけ、わずかなニュアンスだけで使っている糸もあるので、同業者の方でも表面だけ見て、9種類もの糸があることを見通せることは至難の業かもしれません。
この成り立ちは、私たちの現実の世界と少し似ているなあと思います。
目に見える世界と、目に見えない世界。
それぞれの世界が存在しているからこそ、私たちが”私たち”としてここにいることができます。
表向きは目には見えないけれど、確かに存在している層があって、その層があるからこそ私たちが”いま”を感じ”自分”を認識しながら生きることができている。
そして、別の角度から言えば、龍という存在は空想の世界のものです。
私の暮らしている京都市の山のほうでは、山裾にかかる雲が本当に龍のようでいつも娘がその雲を見つけるたびに、
「龍がいるねぇ」
などと指をさして嬉しそうに教えてくれます。
そんな空想の生き物のイメージが形になったものが”龍”という存在です。
目には見えないけれど、神社などで風がさわさわと渡ったりするときなどは、龍があたかも上空を飛んでいるような気になったりするものです。
そのようなイマジネーションこそが、私たちが物を創り出す”原動力”になったりもします。
目には見えないけれど、確かにあるもの。
目に見えない世界があるからこそ、わたしたちはより豊かに生きていくことができるのだろうと思えるのです。
フランスからスペインに抜けて進む、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼旅へいつか出たいと思っています。いただいたサポートは旅の足しにさせていただきます。何か響くものがありましたらサポートお願いします♪