黄砂が見せてくれたもの

ドアベルがなった
ボクはドアを開けた

傘を差した少女が立っていた

どちら様ですか?

ボクの問いかけにニコリと笑い
「笑顔を届けに来ました」と言った

思わず笑ったボクに
グゥに握った手を差し出した。
「手を出して目を瞑ってください」

ボクは目を瞑り
手を出した。

「私がいいというまで目を開けないでくださいね」

次の瞬間
手のひらに懐かしい感触が。

「目を開けてください」

手のひらには白いハンカチと「懐かしい物」

これは…?

問いかける僕の声に
答える声はない

少女は消えていた
小さな傘を残して

この小さな傘…
これも懐かしい物だった

ずっと泣いていたボク
少女は
ボクにハンカチを届けるために
「あの頃」から「懐かしいもの」を届けてくれたんだ。

あの少女はきっと
彼女だ!

もう2度と会えない

彼女は…

そう思っていた。

悲しい顔をしていると
ハンカチを差し出してニコッと笑った彼女

ありがとう
もう泣かないよ

彼女が置いて行った
傘を差して
黄砂で霞む空を見た

彼女の笑顔が見えた気がした。

※ 懐かしい物、なんだと思いますか?

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