赤城颪
北風が吹き
小僧が笑う
風の強い季節
私は大嫌いだ
風鳴りが
耳元で
濁声で囁く
早くけぇれ
なにしてる
ノロマが
赤城颪
ペダルを踏む私を
荷台に乗り込み
あかんべー
ノロマなんかじゃない
あんたが邪魔してるのさ
ぜぇぜぇ
息継ぎも難しい
口を開けたら
台風並みの風が
“おじゃましまーす”
いっきに
呼吸混乱してしまうから
口を開けずに
“こんちくしょう”
いつもより
ちょっと
遅い帰宅して
ただいまも言わずに
倒れ込む
ぜえぜえ
ぐるぐる回る視界の隅で
くつっいてきた
赤城颪の小さな渦が
少しずつ
小さくなって
消えていった
それを見届けると
私の意識は
外で暴れる赤城颪と
一緒になって
赤城山へと
旅に出た
短い短い
夢の中
空から
街を見下ろして
風を従えて
胸を張る
そんな
夢から覚めた時
私は息が楽になったことに気づく
冷たい床から
登る冷気に
身をすくめた
やっぱり
この時期の風は大嫌いだ!