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コスモスの花が揺れるまで

花は主のことを教えてくれるのだと思う。

通勤路の途中に畑と道路の境を記すように、
ズズッと、白いカラーを植えているお宅がある。

玄関への南側通路入り口には、黄色い水仙が植えてある。

春の水仙が咲き終わって、しばらくすると、
まだ青い葉の付いたままで、早めに刈り取ってしまう。

同じ場所でコスモスが芽を出し始めるせいかな。

春は黄色の水仙、初秋が撫子色のピンクのコスモスが咲く場所。

水仙は丈夫で増えていくので、込み合って来れば、
株分けしなければならない。

そのお宅の入り口の水仙は、
このところ、年を追うごとに小さな花に変わって行った。

きっと、土の中でおしくらまんじゅうしながら、球根同士で、
場所の妥協をしあって、あえいでいるのだと思う。

葉は細く、花はミニ水仙のようになって咲いていた。

一昨年あたりからは、
風に揺れるコスモスの小さな群生が見えなくなってしまった。

雑草が増えていたので、コスモスのこぼれ種が、
土を求めての椅子取りゲームに負けてしまうんだろうと思った。

水仙を株分けすればいいのに、と思うけれど、
畑と道路の間の白いカラーの花さえも、込み合っているのが分かるし、
優雅さが無くなって、とりあえず咲いている感じになっていった。

きっと主に、花仕事をする体力が無くなったのだと思った。

花に興味がなくなるわけはない庭先だったので、そう思うしかなかった。

好きならば、時間はやりくりして作れてしまうものだけど、
肉体的な衰えは容赦なく、出来ることと出来ないことを分別してしまう。

同じような趣味を持つご家族がいれば、水仙やコスモスやカラーに、
少しだけ心を寄せてくれるかも知れないと思った。

カラーは本当に見事で、余裕をたたえた美しさだったのに。

だけども丈夫で手間がかからない、ということは、
頑固で、始末に面倒な花、と思う人が居ても仕方がない。


今年の春の水仙が咲き終わった場所では、雑草とともに刈り取られて、
刈り取られたあとにまた、雑草が育っていた。

もしかして、いつもそこにコスモスが芽を出すことに、
ご家族は気が付いていないのかも知れない。

もう丈の低いコスモスしか咲かなくなっていたけれど、
刈り取ることで綺麗を保っているつもりなのかも知れない。

花を愛する主は亡くなられたんだな、と思った。

今頃はコスモスの葉が低く揃っているはずなのに、
この何日かのうちに、また綺麗に刈り取られてしまっていたから。

雑草も、たぶん少しのコスモスもいっしょくたに。

コスモスが特別な訳ではないし、
雑草は、雑草ではない名前がちゃんとあるのだとは思うけれど。

変わらない、ということはありえないから、
ただそれをコスモスを通して、目撃してしまっただけだけど。

変わらないことを楽しんで、変わることも楽しんで。

いつもその時々で都合よく考えてしまうなんて、
自分が滑稽に見えることもある。

私だって、ただ誰かの都合で生かされているだけかも知れないのに。

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