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なぜ、医師はあなたの薬を減らさないのか? その3 専門医の立場

 専門医・・・

 その道を究めたことを約束してくれる肩書きで、非常に頼りになる存在です。

最も医師の数が多い内科なら、循環器・消化器・血液・神経内科・代謝内科等など、たくさんあります。

最も守備範囲が少なそうな眼科でも前眼部・白内障・緑内障・眼底などの専門に分かれています。

自分の病気がそこにぴったりはまれば、これほど力強い存在はありません。


 ほとんどの専門医資格は専門医試験を受けて通らないと手に入りません。

専門医試験で出てくる問題は病気や治療に対する基準に対する知識が求められます。

高血圧の基準が下がった時など、その一部はマスコミでも報道され一般の方に知られるようになりました。

基準は、それを変えて治療した方が良い結果が出る、長生きできるという証拠が揃って初めて変わります。

長生きする為には新しい基準に合わせて治療を行った方が良いのですが、概ねその基準は厳しくなり、対象となる人数も増えていく一方のような気がします。


治療に対する基準というのは統計的な結果や副作用なども考慮して最高の結果が出るように設計されています。

言い換えると、長生きすることや生活の質を上げることに対してそれなりの対価を支払っても良いという人向けに治療を理解し、実践するのが専門医の仕事です。

更にいうと、100歳まで、できるだけ長生きしたいと思っている人が何とかできないかとたずねて来るものだと専門医は思っています。


 例えば一流の料亭で白ご飯・味噌汁と漬物を頼んだ場合を考えてみましょう。

完璧な炊き方をした白米と、こだわった味噌を使って昆布や鰹から丁寧に出汁を取った非常に美味しい一品、自家性の漬物が出てきます。

値段は1,000円以上するでしょうか・・

定食屋で頼むと300円ぐらいで同じ物が出てくると思いますが、味噌汁がインスタントだとか漬物が自家性じゃないとか文句を付ける人はいません。

値段とサービスが合っているからです。

 料亭で『味噌汁はインスタントでいいから安く出して』と考える人はいないと思いますし、料亭も『値段を下げるために味噌汁をインスタントにしよう』とは考えません。

料亭には、値段が高くても良いから最高の料理を食べたい、という人が来るからです。

ファミレスならTシャツ短パンで気軽に行けますが、高級料亭に行くときはキチッとした格好をしていくのがマナーです。

店の格上がれば従業員の対応も店のしつらえもしっかりしたものになり、茶髪でピアスの兄ちゃんがペイペイ言いながら会計してる店は無くなります。

高くても構わない、店主のもてなしを受け止める姿勢はできている、ということを、客はTシャツ短パンではなく、スーツや着物を着て店側に分からせようとしているのです。


 専門医にかかるということはこのこと同じで、患者さんが『最高の治療を希望するから薬はしっかり出して欲しい』『適当に治療して欲しくない』というメッセージを出しているのと同じです。

日本では大病院の専門医の外来に行っても場末の町医者にかかっても待ち時間は違えども診察料は初診時以外はほぼ同じです。

そのため、気軽に専門医にかかる方が多いのですが、基本的に専門医は『最高の治療を目指す』ところです。

その専門医で『クスリ減らしてくれませんか?』とお願いするのは、料亭で『インスタントの材料でも良いので安くしてくれませんか?』と聞くのと同じ事だと私は思います。


 専門医が最も力を発揮するのは状況が刻々と変わる病気を診ているときです。

平たく言うと入院しているときです。

病状が急に悪化したりする可能性がある時で、専門医は入院している患者さんに持てる知識や技術を24時間投入できる環境にあるので、最も力を発揮します。

そうでなければ1-2週間で状況が変わるような時にも、その観察眼は非常に頼りになります。

 三ヶ月間同じ薬を出していて、3分診療を行っているような場合は、はっきり言って担当医はあなたに興味を持っておらず、『近くの病院に行くって言ってくれないかなあ』と考えていると思って間違いありません。

友人でも3ヶ月ぶりに会って、少し髪の毛を切ったぐらいなら気づきません。

そういう状況が1年も2年も続いて患者さんが『よく診てもらっているという感想を持つ』ことを、医師も期待していません。

クスリをもらいに行くだけなら場末の町医者で充分です。


まとめ

 

・専門医は最高の結果を出したい時に行くところ

・専門医の真価は入院したときに発揮される

・3ヶ月ごとの3分受診は、診察ではなく、『薬を買いに行く』のと同じ


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