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【姫文余話】第12話『児童文具#1』

「きまじめ姫と文房具王子」の第12話『児童文具#1』(2巻収録)についての余談です。

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私が小学生の頃は、学校の隣に駄菓子も取り扱うような文具屋さんがあり、子供だけで文具を買いに行くこともたくさんありました。

ファンシーキャラクターものや、ファミコンのキャラクターものの文具が流行してた時期で、筆箱も多面式のものだったり、サイコロおみくじのようなものがついてる鉛筆だったりと、玩具的な要素の強いものもたくさん存在し、文具売り場は夢空間でした。
でも、自分の好みのものを自由に選んで買うようになったのは2年生くらいからで、入学時はやはり親が選んで用意したものを皆使っていました。

絵柄の入ってないマチック筆箱、2Bの名前入り鉛筆、真っ白な消しゴム(香りなし)…親からすれば、気が散らないで勉学に励めるように無駄をそぎ落としたもの、品質が確かで丈夫で長持ちするものを選んでくれたんでしょうが、子供心的にはちょっと味気ない文具達…(笑)

12話はそういった、小学校入学時に親が買い揃える、児童文具(学童文具ともいう)について描きました。児童文具の現在って一体どうなっているのだろう…自分も親になったこともあり、子供の使う文具に興味が生まれたのです。

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だいたい児童文具は年が明けて、2月くらいから店頭に並び始めるらしいのですが、児童文具の話を描きたいなと思って調べはじめたのがタイミングよくその時期だったこともあり、まずは実際に店舗に行って売り場をみようと思いました。これまで文具店に行っても、自分の使う物のコーナーばかりで、児童文具のコーナーをきちんと見ることなんてほぼ無かったので新鮮でした。

まず売り場を見ていて思ったのは、私の頃と同じように、遊び的要素だったり装飾の派手なものはないものの、昔に比べてカラーバリエーションが豊富で、子供目線から見ても気に入りそうな文具が多くなった印象を感じました。
それに加えて、子供にとっての「使いやすさ」を追求した優れもの文具がとても多くありました。これがとっても驚きでした。

漫画にも登場した文具やそうじゃないものもありますが…いくつか自分がこれは…!と思ったものを挙げてみます。

◆『トガリターン』 ソニック
http://www.sonic-s.co.jp/product/ek-7022
鉛筆がトガると自動で出てくるリターン式ムダ削り防止で、鉛筆のムダ削りを防止する鉛筆削り。
◆『ippo! 低学年用かきかたえんぴつ(三角、六角)』 トンボ鉛筆
https://www.tombow.com/products/ippo_kakikata_pencil_for_kids/
低学年用の鉛筆で、通常より15mm短くしている。万が一目に当たっても安全なように書く方と反対の方の先は、角を落とした加工をしている。
◆『もってカエルファイルA4』 キョクトウ・アソシエイツ
http://www.kyokuto-note.co.jp/products/detail/?id=266585
宿題とお知らせプリントを分けて入れることができ、ランドセルの中でも目立つデザインで、出し忘れを防げるようになっている。
◆『こどもがよろこぶかるい学習帳』 ナカバヤシ
https://www.nakabayashi.co.jp/news/2018/release/521
従来品に比べ約20%軽量化した本文用紙使用で、ランドセルの重さの負担を軽減できる。

驚きですよね…。ちょっと並べただけでもこんな感じ…。
20~30年のブランクを経て見た児童文具は、『他人には無関心の味気無い奴』から、どれもこれも『恐ろしく細かい所に気の利く奴』に進化していました。

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でも、しばらく見ていてちょっとしたことに気づくんです…。これらの文具の持つ優れた機能って、子供の為でもあるんだけど、親のための文具でもあるよなあ…と。

例えば、軽くまわしやすいハンドルのついた鉛筆削りや、軽い力でも消せる消しゴム。ランドセルが重たくならないよう、軽量紙で作られたノートなどの低学年の体力や能力を補助するための文具は、大人の手助けを必要としない文具でもあるし、

目にささらないよう少し短めのサイズの鉛筆、刺さっても危なくないよう芯がとがり過ぎない鉛筆削り、うっかり怪我をしないよう、カバーの付いたコンパスや彫刻刀など危険を事前に取り除いた文具は大人が目を見張らせてなくても安全に使えるための文具だし、

洗濯で落ちる墨汁や、プリントを親に忘れずに渡すことができるよう工夫をしたファイル、片づけを誘導するようなお道具箱などは、親の手間を軽減してくれるような、子育てを助ける機能をもっている文具なわけです。

画像1

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12話を描いたあとしばらくして、自分の母と同じくらいの年齢の方と子育てについて会話する機会がありました。 

その方曰く『リビガク(リビング学習)とか今流行ってるらしいけど、子供は勉強机で勉強しなきゃ姿勢が悪くなるし、親だって片手間じゃなくて子供の隣についてちゃんと見てあげなきゃ。ああいうのは私は好きじゃない。』とのこと。そうは言われても、なかなか思うようにしてやれないことを口にすると『甘え』だとぴしゃり😭

う~ん…まぁ確かに、私の子供の頃を思い返すと、母はいつでも家にいて、いつでも自分を見てくれていたとは感じます。
絵を描けば見て褒めてくれましたし、刃物を使うような夏休みの工作も一緒に手助けしてくれました。
手芸が好きで上履き袋やお弁当袋、30cmの竹尺を入れる袋までも作ってくれたりする母でした。
忘れ物をすれば学校に届けてくれたり、学校で使うものを前日に言って困らせてもすぐさま自転車を走らせて買って用意してくれました。
改めて思っても、膨大な時間を私に費やしてくれたんだろうなと感じます。

…しかし、今の親が子育てに労力を注ぎたくないと感じているから…というわけでは決してないと思うのです。
私だって、本当は子供が絵を描くのを隣でずっと見てあげたりしたいし、自分が子供に『気づき』を与えられる存在になれるのならそれはとても嬉しいですしね。

自分の親がしてくれたことを、自分は同じようには子供にしてあげられない。でも、どうしたってそれ以上にはむずかしいですよね…だって、働いているわけですし…。

今は時代が違うのだししょうがないと自分に言い聞かせても、呪縛のように嬉しかった記憶が残っていて、なんだか自分は親として何にもしてあげられてないなと感じる私の世代のお母さんは多いんじゃないでしょうか。

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技術の進歩が可能にした便利さに『すごい!』と驚く半面、今の児童文具はきっと、不景気による共働きの世帯や、単親世帯の増加等によって親が子供に向ける時間を作ることが困難になってきていることが背景にあって、そういう親の気持ちをリサーチした結果生まれた面もあるかと思うと、なんだか少し切なくなりました。

それとは別に、自分の中にとある疑問が浮かびました。
道具によって危険が減ったり、育児の苦労が軽減されるのは素晴らしいことに違いはないのだけれど、これ以上道具が進化した時に、子供にとって文具は器用さや創造性を育む知育としての道具ではなくなってしまい、子供は道具ありきの成長しかしなくなっていくのではないか。
もしかして、文具は過保護になっているのではないかという疑問です。

『児童文具#2』につづく)

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