直接と間接




夏になって小蟻が湧いた

ベランダからか基礎構造からか

フローリングの隙間から列を成し

少しの匂いを辿ってバナナの皮へ

時に私の体液へ

鉄フライパンにこびりついた

ササミのか細い筋繊維へ

食らいつき 少しずつ運んでいく

可愛いけど 可哀想だけれど

殺すしかない 微かに動く黒点は認知を削る

臭いも不潔もない彼らの体を抹消する

罪も目的もない彼らの生命を抹殺する

このフローリングと壁紙の空間から

なぜならそれがこの部屋の契約だから

ごめんね ごめんな ごめんなさい

手で潰しまくるとか 足で踏みつけるとか

昔やっていたようなそういうような

直接なのは気が引けるから間接的にやった

ニールズヤードの高級品

ペパーミントの精油を通り道に撒いた

見えないルートをびしょびしょにしてやった

すると瞬時に彼らは断絶し

右往左往しながら漂い始めた

ネットワークが切れて 充満する空白に投げ出された

みんなみんな近くにいるのにそうしてた

もしも痛覚と声があれば うががうがとか言ってた

面白くて少しだけ見てた 飽きてお風呂入って寝た

それで翌朝 目をやるとみんな死んでた

丸まって一匹ずつそこで死んでた

目的達成 でも疑問 あれ

間接ってなんだ

俺は鮮やかに壮大に

数千をぶっ殺した

知恵を使って圧倒的に 間接的に

手を使わず でも手は使った 目も開いてた

何ならずっと見てた 奴ら死ぬのを

めっちゃ見て おいアイヒマン

間接ってなんだ






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