手 ・ 心引き




昔昔あるところで 一度死んだ時のことを思い出してご覧よ どういう意味で捉えてくれても構わない 君がその時に一度 小さくしかし完全に死んだことを思い出せよ お前はお前の死骸じゃない 俺もお前の死骸じゃない お前だって俺の死骸じゃないし 鏡でも壁でも檻でも道ですらない 単純に手 と心 とかの集合体 から滲み出してくるよく分からない何か

昔 世界史を謳うイギリス人のおじさんが エジプト文明とは究極的には死を謳う不毛であり 過去の文明から引き継いだ物事を発展させることもなかった と言っていた 俺はそれは言い過ぎだと思う 死を想う中にもエロいことはずっと起きるさ でも最後の最後のスパイスのタナトスを裏切れるかそれかどうか そこんとこは重要だよな だから概ねあなた様に賛成 砂漠の上のピラミッドじゃオーガズムできない よくてエセヨギーがクンダリーニしましたって言うくらい

死んだことは思い出せたかな 俺はセイジのハーブティーを飲みながら黒檀の机の大きな天板に足を乗せながら窓の向こうをじっと見つめて思い出したよ 思い出さなきゃ始まんねえなってここ数日ずっと思ってたかんな 読書したって運動したって仕事したって何したって いつからこれが始まっているのか明らかにならなきゃ埋められない穴があることを知っていたのさ そいつを埋める巨大隕石はもう宇宙の彼方から召還してる あとは実直な着陸作業だけさでもさ何故かどうしてかしかし 今のままじゃ何故かどうしてかしかし埋まってほしくないんだよそこから覗き込むことのできる泥の一色の美しい灰と黒 シンプルに言えば思い出せないことの不思議さそのものですよね

でも確かそう具体的に死んだんだよなあの時 フィジカルなものもあった お風呂で浮き輪遊びしてたら半分溺死して気がついたら肺の水を嘔吐してた三歳の時 フラッシュの後にゲホゲホコールを遠巻きに聞きながらああああ今俺は何がどこにあるのか全部分かるぞおおおってその時なりの興奮の仕方をしてみたました 母さんが一階で斜めを向いてキッチンで浅漬けのきゅうりを短冊切りしている 通りを行く小学生が空にこんにちはして小石に躓いてる 共用地の夏みかんの木を蝉の幼虫が登ろうとして三回目落ちてる その他の人々が昨日と同じくらいの行動を同じ場所でしているズレはそれぞれに総和五センチメートル にゃんちゃんは違うおうちでポップコーンを食べてる 認知拡張っていうの 首締めせっくすにハマるOLの気持ちがその時の三歳に分かったよ OLも首締めせっくすも知らなかったけどな あれは認知の強制再起動かつ事故的強制自己拡張なんだよな やりすぎてことキレたら問われない自己責任が誰かに転嫁される類の

そんなことじゃないんだよ お前が死んだ時のこと もう喋らないよ 今日は何してたの 昨日はどこ行ったの 前に言ってたあれさ 美味かったよありがとうね お茶飲む ローズマリーでも淹れようかな 淹れようか 声で触れている今にここから 指 ささくれあるよ 栄養不足か保湿不足か もう秋だから乾燥するしね 保湿は何より保水だからサブだけど シアバターってやっぱりいいよ 美味しそうだし

髪に肌が美しいな 俺も整ってるけどお前のはいいよ 優しくされるためにあるって感じがする ダーウィニズムも多分そう言ってくれるさ チャールズは実際女に優しいって評判だったよ 私はそれをオルダスに教わった ハクスリー家では親子三代に渡ってこの伝説が受け継がれて来たのだ チャールズは知っていた 女に優しくすることの競争上有利を そしてチャールズの高貴は競争の利とは別に女を愛していたことなのだ ああなんていう素晴らしい世界 お裾分けの隠し味に秘伝の絶望を下さい ドメスティックバイオレンスしましょう 一人分の心と体で まずは己を殴りましょうぞ

そうそ君が死んだ時のこと 死ななきゃ生きていけなかった時のこと その際に行われた儀式とお祭りのこと お囃子の音をカチャリラサンサンママランタニカ お囃子の音はオラリカサンサンハニヤロエン 今ここでお前の粘膜に触れるよ 心に挿れる前のエチケットだ 死んだ名残の割れ目から温かいもの絞り出し 残り物の生を冷蔵庫に入れろよ















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