原色の庭

透明な世界



時間が遅れてくる

理性と呼ばれてきたものは

視界となって時たま顔を出し

そうじゃないみたいだ

と一声だけ掛けていく


その他のことは全て知っている

鳥のような小脳が唸りを上げ

身体はその重さ分の効力を発揮する


道を曲がる前から崖の先の風景が見える

キャンバスに絵を描く未来の感情さえ見える

川の流れが話し掛けてくる

そうさそいつをどけてくれ


許されないスピード

事実がシルクロードを一瞬で駆け抜け

抽象が重みを獲得し

具体が手触りを失う


ドン・キホーテを書き始めたころのセルバンデスは

まるでこんな気分だったらしい

じゃないと説明がつかないよ

こんな透明な世界は




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