TVアニメ『星のカービィ』に切り捨てられたファンのボヤき
30周年の記念ライブで発表されたTVアニメのBlu-ray BOX発売の一報。
往年のファンは待ち望んで歓喜の声を上げていたが、私の心は少し複雑だった。
そして、きっと購入しないだろう。
ここに一つ、老害のボヤきをこぼしておこうと思う。
警告:アニメ版星のカービィ以降からカービィのファンになった人は即座に読むのをやめてください。老害が延々とぼやきます
TVアニメ版星のカービィが放送開始された2001年後半〜2003年前半。
都市圏で児童向けの朝番組といえば、平日のおはスタ、日曜日のおジャ魔女と平成ライダーぐらいだった(プリキュアもかいけつゾロリも未放送)。半ドン(土曜日の午前授業)がギリギリ残っていた時代である。この頃、土曜の朝に子どもが見る番組といえば、改変で週一放送になったポンキッキーズ21ぐらいだろう(あとは全国放送のNHK教育ぐらいか)
ただ当時は、サザエさんやクレヨンしんちゃん、ドラえもん等では、既に体罰表現や暴力表現は消えてなくなり、下ネタや皮肉、時事ネタ、メタ発言といったモノは別のゴールデンタイムのアニメで、と役割分担化が進んでいた。(むしろ、これらのアニメに体罰があったのか!?と驚かれるかもしれないが、しんのすけがみさえにゲンコツなり尻叩きをくらい、カツオとのび太は廊下に立たされてたのが、30年前は普通だった)
コレらと比べて、アニメ版星のカービィはかなり攻めた内容なのは間違いなく、またそれを見ていた幼児〜小学生にとっては、とても衝撃的だったであろう。そして、時は流れてニコニコ動画などで散々ネタにされた。今のカルト的人気は、30代以下のこの思い出補正が強いと思われる。
だが、モノクロのゲームボーイ、コピー能力すら無い頃からのカービィファンだった私にとっては「綿で首を絞められるように」苦しめられ、強制的に卒業させられ、一時は呪物とさえ言える代物であった。今、あえてそのパンドラの箱を開けて、残った希望をもってコレを供養をしたいと思う。
なぜそんなにアニカビを嫌うのか
何を言おうが、私は途中で見るのを辞めた人間だ。薄い感想と言われるのは覚悟の上だ。だが、放送前はそれだけ期待していたのだ。
和製シンプソンズ、和製サウスパークと評されてる時点で「星のカービィ」ではなく、ププビレッジでの群像劇でしかない
カービィは添えるだけ。下手すれば、まともな活躍もないもある。一時はデウス・エクス・マキナの駒も同然だった。カービィはゾロリではない。
ただ不快でしか無いデデデ
絶対悪として出されたデデデ。だが、行動原理が幼稚すぎる。何も考えてない。カリスマ性もクソも無い。かと言って、黒幕に操られてもいない(いい様に使われてたけど)。ブラス老みたいに主人公を育成させてくれる訳でもなく、阿笠博士みたいに主人公をサポートしてくれる訳でもない。ゲームのデデデはそれなりに考えて行動しているのに……
ププビレッジで完結した狭い世界
カービィはワープスターで様々の惑星を駆け巡る。そんなゲームを題材にしておきながら、展開される話はププビレッジという城下町(と言う名のほぼ村)での話がほとんどだ。他の惑星に行ったのかすら記憶が薄い。ワープスターの飛び出し口がウィスピーウッズというのも、なんとも微妙だ(当時のウィスピーウッズは、ワールド1ボスの定番だった)
音楽とカービィの質感、メタナイトの掘り下げは良かった
音楽は豪勢だった。エアライドでも使われただけある。
カービィのポヨポヨ感は最高だった。あんなにヌルヌル動くカービィは当時としては異例だったのだ。
ゲームでも謎の仮面剣士だったメタナイトを掘り下げたのは、後のシリーズでも活躍するきっかけだったのは確かだろう。結局、その役回りは未だに謎のままだけど。
なぜ『切り捨てられた』と言うのか
とまぁ、ここまでボロクソ愚痴を言っているが、オタク界隈ではシリーズが続くとファンを切り捨て、賛否両論で紛糾する事は度々起きる。
下級生2ディスク割り事件、アイドルマスター2の9・18事件、アニメ版SHUFFLE!の空鍋、涼宮ハルヒの暴走のエンドレスエイト、ドラゴンクエストユアストーリー、トイストーリー4など、例を挙げたらキリがない。
アニメ版星のカービィもコレらに類似すると言っていい。ただ、実を言うとアニメ版星のカービィが放送される前から、カービィというキャラクター、2Dアクションゲームとしての進化の限界が見えていた。それでもアニメ版星のカービィに期待し、新しいカービィを見せてくれると信じていた昔からのファンは確かに存在した。だが、その期待は裏切られ、切り捨てられたのである。
カービィの登場からアニメ放送まで
星のカービィは1992年に『初心者向けの2Dアクションゲーム』として登場した。当時のアクションゲームはいわゆる「死にゲー」ばっかりで、カービィみたいに「初心者が少しずつ成長していく意図を持たせたゲーム」が少なかった時代に登場した。初めてアクションゲームをする人にとって、星のカービィは一つの道標だったのだ。
夢の泉の物語では今やカービィの代名詞と言えるコピー能力が追加され、様々な追加アクションができるようになる。カービィ2ではコピー×仲間の組み合わせによるコピー能力の多様化がなされる。スーパーデラックス(SDX)ではコマンド入力による必殺技、2人協力プレイが追加され、多彩なゲームモードが楽しさを彩った。
外伝ではカービィボウル、ピンボール、ブロックボール、コロコロカービィといったように、ボールになれる事を活用したゲームも登場する。
どれも面白いものばかりだったが、同時にカービィのゲームとしての進化に限界が訪れる。
時は1996年6月。SDX発売から3ヶ月後。新機種NINTENDO64の同時発売タイトルであるスーパーマリオ64によって3Dアクションゲームの面白さ、可能性が一気に広がった。同時に、かつてゲームボーイでカービィをプレイしていた子どもたちは中高校生になって、難しいゲームも普通にプレイするようになり、カービィは次第に『(難易度を上げる方法があっても)子ども向けのヌルいゲーム』となっていった。
アニメ放送の前年(2000年)にカービィ64が発売される。コピー能力のミックス、ポリゴン化されたカービィの表情豊かな姿は魅力的だった。しかし、実際のゲームは2Dアクションゲームをポリゴン表現化したモノでしかなかった。また、コピー能力のミックスも2や3で登場したコピー×仲間の変化版だ。スーパーマリオ64みたいに3D空間を自由に動ける訳でもなく、コピー能力自体に新しい進化が出た訳ではない。
そして、プレステの台頭、ゲームキューブの発売、スマブラDXの発表(発売はアニメ放送開始直後)が続く。ぶっちゃけ、アニメ版星のカービィは子ども向けと認識して当時の中高校生は気にも止めなかった。そう、アニメ版星のカービィを期待する『かつての子どもたち』はもはや絶滅危惧種だった。
そんな中、アニメ版星のカービィが放送開始される。
アニメ化で期待していたモノと出されたナニカ
今までのタイトルで、カービィは星々を跨ぐ冒険をしている。ワープスター1つで世界、宇宙を飛び回る。デデデをはじめ、いろんなキャラクターを仲間にしていく。そんな冒険をアニメで観れると期待した。
が、実際にお出しされたのはカービィのガワを被った、下ネタと長編が無い銀魂みたいなナニカであった。好きな人は好きだろうけど、長編(の様に世界や惑星を跨ぐ話)が無いから締まりがない。カービィである必要があったのかさえ今でも疑問だ。
アニメ放送開始後のゲームのカービィ
放送期間中に夢の泉がリメイクされるが、SDX調にアレンジされ、当時最先端のカービィとして改められたと考える向きが強い。そして、アニメ放送後に最初に出たゲームのカービィは、アニメ版同様にカルト的人気が残るカービィのエアライド(2003年発売)である。ゲームモードの一つであるシティトライアルにて、ついに3D空間でカービィを動かすことができる様になる。しかも、今まで夢にまで見たワープスターで駆け巡る形で。それは、いつかは本編でも3D空間で冒険できる希望にもなった。だが、ソレが叶うのは19年後の2022年まで待たされることになるとも知らずに……
ゲーム『星のカービィ』の暗黒期
エアライドの後、鏡の大迷宮、タッチ!カービィ、参上!ドロッチェ団と続くが、明確に「ここが進化した!」と言うものが無かった。新しい要素はいくつかあったが、鏡の大迷宮のエリア方式はロックマンのソレだし、ドロッチェ団のコピーパレットは進化というより、ゲームの利便性向上(=難易度的に緩くなっただけ)である。タッチ!はコロコロカービィやカービィボウルみたいにかつてハル研が強みとしていた、独自のハード技術やアイデアが薄かった。
正直、いちユーザーの目線から見ても、これ以上「カービィのゲームとしての進化」は望めなくなってきていた。
演出の強化と世界観の再構築
ウルトラスーパーデラックス(USD)でディレクターになった熊崎氏が立て直しを図る。アニカビ以降、色々とっ散らかった世界観を再構築させつつ、2Dアクションゲームとしての演出面を強化させていく。
今までに登場した重要アイテムのフレーバーテキストの拡充や補完、奥行き方向を意識させた攻撃、派手なアクション演出、ムービーによるストーリー補完、カービィカフェの登場など、キャラクタービジネスやゲームのトレンドを後追いしつつも、ゲーム初心者向けに落とし込む形を守って、少しずつ進んでいた。
正統進化した星のカービィ ディスカバリー
熊崎氏による再構築されたカービィの集大成とも言えるスターアライズ(2018年)の発売後、毛糸プラスやファイターズ2、スターアライズのアップデート、カービィカフェの常設化など本編に動きがない中、2021年9月。Nintendo Directにて、星のカービィ ディスカバリーが初披露される。スーパーマリオ64から25年、カービィのエアライドから18年。正真正銘、3D空間を冒険するカービィのゲームが登場した。
3D空間での冒険は言わずもがな、ファジー処理やカメラ固定による「3Dアクションゲームを初めて触る人でも楽しめる」を追求した技術。カービィらしさを残しつつも、ゲームとしての正統進化も遂げている。
結局、『卒業』できてなくね?
少なくとも、カービィにかつてほどの熱意が無くなったのは事実だ。そして、ディスカバリーにて、ゲームとしてのカービィは、最終進化してしまったとも思う所もある。ただ、アニカビの時とは違い、清々しい気持ちになっている。
今度、エアライドやコロコロカービィの正統進化とも言えるカービィのグルメフェスが発売される。もしかしたら、コレを餞にゲームとしてのカービィから『卒業』してしまうかもしれない。
なんだかんだ言って、もう若くないから……。
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