最近の中国の政治状況について

とにかく速く書くという制限の下で、最近の中国政治状況について、世間一般の見方へのコメント的に自分の考えをお話したい。

私は、もともと政治には興味がなくて、庶民生活とか文学的な側面に興味のある人なんですが、色んな中国人と話す感触から大まかな全体像くらいはある程度想像できるように思います。

私は、現総書記が政敵を全部倒して自ら完全独裁体制を作り上げた、という風には見ていません。

習近平に権力が集まっているのは、共産党も、また庶民も含めた総意に近いと思う。そのふわっとした全体的動向の上に、習近平が乗っている、というのが自分の大雑把な見方です。

習近平は安定感がある、というか、あまりおかしなことはしそうではない感じがあります。少なくとも比較的多数の共産党員含め、地元民にとってはそうだと思います。じゃあゼロコロナの封鎖は?、と言われるでしょうが、それはよく分かりません。しかし、その他の点ではout of control のような事になったことがありません。少なくとも重慶で毛沢東時代の革命歌を歌わせるような大衆動員的とも見られる運動をしたと言われる薄熙来などに見られるような危なっかしいところはありません。習近平に批判的ではないかと思える安田峰俊の以前の文藝春秋での記述でも、落ち着いた感じの人物、として描かれていたような気がします。
 
これは、日本の安倍晋三などと比べても強い対照があります。安倍首相は「中国包囲網」的なことを言ったり、国会で数々の問題発言をしたりしていました。習近平は、私が思いだせる範囲において、驚くほどこの手のものがないような気がします。私が記憶から見るに、現在の世界の各国トップで、外国について一番煽情的なことを言わない人の一人のように思えます。
 
次に、歴史的な経緯です。大抵の日本人は以下のことあまりよく考えてみたことがないのではと思います。清朝の終わりのアヘン戦争から、列強に侵略され、長い抗日戦も戦い多くの人が死んで、大躍進の餓死?や文化大革命の時期も経て、その後もずっと貧しくてほんとに大変な生活をしてきて、初めて大都市に住んでいる人の多分半数くらいはコロナ前なら容易に海外旅行に行けるような時代になりました。胡錦濤の頃はまだそうでもなかったです。バスでなく乗り合い白タクで通勤してた人も多い時代です。100年単位の混乱と貧乏の末に、やっとここまで来た。この安定を手放したくない、という気持ちがあると思います。またナショナリズムというか誇りの気持ちもあると思います。ずっと馬鹿にされ続け、自分でも一部卑下するほどであったわけですから。
 
習近平は、若い頃は農村で働いていたこともあり、働きぶりは真面目だったようで、中国国内では真面目な人と見ている人が数的には多いように想像します。日本では想像し難いと思いますが、中国国内ではそうと思います。もちろん批判的に見ている人も沢山います。ただ比率的には多くない。ロックダウンで随分反感を持つ人が出たと思いますが、それは強烈な封鎖のされた都市に集中していて、封鎖がなかったり、きつくなかったところでは単に比較上の話ですが、比率的に少ないのでないかと思います。
 
習近平は、思想的には庶民寄りだと思います。左、といえると思います。これが大衆から支持が集まりやすいところだと思います。じゃあ党の中核部分はどうか、ということですが、共産党は元々、建て前が左の党ですから総体的に、いまはそちらでまとまった、という感じかと思います。胡錦涛は何も口出さないことで間接的に習近平を助けている、という見方をする日本国内の研究者や記者もいるようです。これは総体的にに習近平が、国内で、党人の持つ価値観を体現している、また外国から見た印象とは異なり、極端なことをしそうでない穏健で安心できる人物、と見られている、ということではないか、と思います。
 
じゃあ、思想の締め付けは、いいのか?極端と考えられないのか、ということになりますが、それは「穏健な」権力を強固にするものだから、穏健さと安定を担保するための方便、として認められる、と考えている人が多いから成り立っているのではないかという気がします。
 
ここまで読んで、読者の自分の習近平観とあまりに違うので、そんなことを言って責任がとれるか?と思われる方もいると思います。実際、よく分かりません。まず、私にとって、中国国内でそのような見方が多いのではないか、と思われるということです。次に私自身も概ねそのような見方をしています。好意的な見方、というのではなく、今まで書いたことの範囲についてはその見方、ということです。で、本当のことは絶対に知り得ませんし、私も知識はとても少ないです。ただ、私がそのように思っているというのは、事実で、これは情報としてのある程度の有用性はあるのでないか、と思っています。国内の中国観は一面的になりがちで、私の見方をお話しすることは、複数の観点からいろいろ考えて見るのに有効だろうと思うからです。
 
不動産の問題、言われています。これ、私も問題と思います。中国で土地は公有です。私もあまりよく知りませんが、地方政府が、デベロッパーと一緒に土地を開発すれば、周辺地価は高くなります。そして公有の土地を放出する。それによる収入が地方政府の大きな財源にずっとなってきた。私は専門家でないので、用語や正確性に大きな問題があるでしょうが、だいたいのイメージはそんなところと思います。土地の値段が上がらなくなると、これが崩れて来るから大きな問題だと思うんです。
 
最後に権力集中の話に戻ると、習近平に権力集中といいますが、これはふわっとした全体的総意によるところが多く、信長や家康が天下を統一して皆が恐れおののきひれ伏した、というのとはだいぶん違う状況ではないか、と感じています。欧米ではそれに近い方向で考えられているように感じますし、日本でもそうした見方へのひっぱり力が働いている気がしますが、どうも違うじゃないか、というのが私の考えのようです。

では心配はないのか?ということですが、心配はしていると思います。ただ私が心配したからといってどうなるものでもない、という考えもあります。世の中に分からないことがある、とよく思います。今は、よい方向にいくよう祈るのみ、という感じかもしれません。


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