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シグマのAPS-C用F2.8通しレンズ

「シグマ」と言えば、日本においては企業名や名称などに使われることが多いものの、カメラになってくると「カメラレンズのメーカー」と言う方が多い。
今回はシグマ製のレンズの中でも他のレンズメーカーでは見られないAPS-Cセンサー対応のF2.8通しレンズに付いてご紹介していく。


F2.8通しズームレンズとは

「F2.8通しズームレンズ」とは、広角端から望遠端まで絞り値がF2.8で変わらないレンズの事を指す。通常のズームレンズであればF3.5-5.6やF4-5.6など広角端から望遠端へ至るまでに絞り値が変わってしまうレンズが多い。F2.8通しであれば広角端から望遠端まで絞り値が変わらないので、常に同じ絞り値で撮影することが出来る。
しかし、絞り値が変わらないズームレンズは絞り値が可変するズームレンズと比較すると高額になってしまう事が多い。そんな中、シグマはとあるレンズを登場させてF2.8通しのズームレンズに斬り込んでいった・・・


シグマが送り込んだF2.8通しAPS-C対応レンズ

高額となってしまう絞り値通しレンズに斬り込んでいったシグマ。最初に登場したのは2004年8月の「18-50mm F2.8 EX DC」である。

2004年と言えばデジタル一眼レフカメラが世に出てきてから3年ほど経った年であるが、この頃のデジタル一眼レフカメラのセンサーサイズはAPS-Cサイズがメインで、フルサイズはプロの写真家か報道等で用いるケースが多かった。ところが、このようなF値通しのレンズは大半がフルサイズ対応が多いため、APS-C機に取り付けるとセンサーサイズの関係で焦点距離が変わってしまう。また、フルサイズ対応のレンズはフルサイズ機向けに作られているため筐体が大型になるのと、APS-C機は普及価格帯での販売を基本にしていた関係からF3.5-5.6の様な絞り値可変のレンズが多かった。APS-C機用のF値通しレンズももちろん純正で製造されてはいたものの、展開はごく僅かにとどまっていたのだ。
そこに斬り込んだのがシグマである。純正品であると10万を超えてしまう絞り値通しレンズであるが、シグマの18-50mm F2.8 EX DCは絞り値通しでありながら希望小売価格を7~8万円台に設定する等、純正品と差別化を図った。
その後2006年には後継品の「18-50mm F2.8 EX DC Macro」を発売。標準ズームでありながらちょっとしたマクロ撮影にも使えるようになった。
(等倍マクロは不可)

2010年には広角側を1mmずらした17mmスタートの「17-50mm F2.8 EX DC OS HSM」が販売。

17-50mm F2.8 EX DC OS HSM

このタイプになってからは多くの数が売れるようになり、純正品はどこへ行ったかのようになってしまった。その要因となったのは価格を一気に下げた事である。
当時は7万円台(推測)での販売となっていたものが、2015年ぐらいになってからは2~3万円台後半ぐらいの価格で購入出来るようになった。それもあってか私も2回購入したことがあり、撮影に一役買っていたのと、お気に入りのレンズにしてしまったほどだ。

2012年にシグマは「SIGMA GLOBAL VISION(シグマ・グローバル・ビジョン)」を発表し、既存のレンズについては「Art(アート)」「Sports(スポーツ)」「Contemporary(コンテンポラリー)」の3つのラインに再編されることになった。発表後も17-50mm F2.8 EX DC OS HSMは引き続き発売は続けていたが、当レンズは新たに設けられた3ラインへの編入はしなかった。

この間はF2.8-4と絞り値可変タイプの「17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM Contemporary」が実質担っていたと言っても良い。

Contemporaryラインに編入された「17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM Contemporary」

ところが、カメラの変化をきっかけにF2.8通しのAPS-Cレンズは形を変えて登場する事になった。その話は後述する。


17-50mm F2.8 EX DC OS HSMの写り

ここでは17-50mm F2.8 EX DC OS HSMで撮影した写真をご紹介。全写真RAWからの現像です。

撮影日:2016/4/2 カメラ:Canon EOS 80D
焦点距離:17mm{35mm判換算:27mm相当} SS:1/800 絞り値:F2.8 ISO感度:100
撮影日:2016/4/9 カメラ:Canon EOS 80D
焦点距離:17mm{35mm判換算:27mm相当} SS:1/400 絞り値:F6.3 ISO感度:160

写りはカリカリのシャープさが特徴であり、これはシグマのレンズ共通で言える事である。純正と比較すると色収差などが少なく、純正の高級レンズ(キヤノンであればLレンズ)と見間違えるほど素晴らしい写りをしてくれる。カリカリシャープな写りもあってか、焦点距離70mmのマクロレンズ(70mm F2.8 EX DG MACRO → 70mm F2.8 DG MACRO Art)に「カミソリマクロ」と言う名前がついてしまったほどである。

私自身はカミソリマクロを購入したことはないが、この17-50mm F2.8 EX DC OS HSMもカミソリマクロ程ではないものの、十分シャープな絵を出してくれるのでいつしかお気に入りのレンズになってしまった。


小さくなったF2.8通し

時は経って2021年。感染症プロパガンダ全盛期に新時代のF2.8通しレンズが誕生することになる。

それがこちら「18-50mm F2.8 DC DN Contemporary」
広角端は2006年以来の18mmに戻ったが、APS-C一眼用の「DC」とミラーレス一眼用の「DN」が名前につき、同時に3ラインの1つであるContemporaryラインのレンズとして登場した。

ミラーレス一眼用と言う事もあり、レンズ自体は一眼レフ用と比べて小さくコンパクトにまとまった感じとなった。重さは290g(ソニーEマウント用)となり、APS-C用F2.8通し標準ズームレンズとしては最軽量になっている。

(参考)2021年10月19日の「SIGMA STAGE ONLINE」

私は2023年にα6600導入と同時に購入したが、非常に良い写りであった。

SONY α6600 + 18-50mm F2.8 DC DN Contemporary
焦点距離:47mm{35mm判換算:70.5mm相当} SS:1/100 絞り値:F2.8 ISO感度:100
{2023/7/6撮影、RAW現像}

発表された当時はソニーEマウントとライカLマウントの2種類のみであったが、後に富士フイルムXマウントも登場している。

2024年になってからはキヤノンRFマウント用のレンズも製造を開始。これまで他社製品を殆ど入れていなかったRFレンズにも新たな選択肢が増える事となった。

キヤノンRFマウント用の18-50mm F2.8 DC DN Contemporary。
マウントの大きさに合わせてマウント接合部分がやや広がっている。

写りはソニーEマウント用と変わらないが、カリカリシャープさは従来の17-50mm F2.8 EX DC OS HSMを引き継いでいると見て良い。
(使用カメラはCanon EOS R7)

(JPEG撮って出し)
(RAW現像)

薄暗い場所で風鈴を撮影した場合はこのような感じとなる。

(JPEG撮って出し)
(RAW現像)


最後に

今回は「シグマのAPS-C用F2.8通しレンズ」をご紹介しました。
高額なイメージがあるF値通しレンズをあえて価格を下げて販売するなど、純正と差別化を図った事で人気を博し、17-50mmへ焦点距離を変えた後も手ごろな価格で発売に至るなど、純正レンズをどこかへ行ってしまったかの様な雰囲気になると言う、ある意味カメラメーカーにとっても恐ろしい存在とも言えるレンズだったのではないかと思います。
F2.8通しのレンズはソニーでは「Gマスター」の製品となりますが、これはあくまでもフルサイズ対応のレンズであり、APS-Cでは一切出していません。APS-C用では18-50mm F2.8 DC DN Contemporaryが唯一のF2.8通しレンズとなっています。
2024年のキヤノンRFマウント用では、純正のRFレンズでもF2.8通しはフルサイズ対応の「Lレンズ」のみで、こちらもソニーと同じ立場になっています。

純正品にない焦点距離と絞り値を持つシグマのレンズ。同じレンズメーカーであるタムロン同様、今後も純正品にない独自のレンズを作り上げていき、一眼カメラ利用者に合わせたレンズを作り上げていって欲しいですね。


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