酸化不飽和恋愛運
とんと『恋愛』なるものに触れていない。
まもなく三十路を迎えようという妙齢の独身女性であるこの私が、果たしてどなたかを『好き』になるなどと言うことがあるのだろうか?(いや、ない)と見事な反語が聞こえてくるような気がしてならない今日この頃。
あの、もどかしさ。
何をしてもあぁ間違えた!と自信を失くしてしまう、あの甘酸っぱさ。
さて、今ごろどこで油を売っていることか。酸化して少し黄ばんでいる頃ではないだろうか、、、
『恋愛』をしたい!とか、どなたかを『好き』になりたい!とかいう気持ちは、ある、のだ。確かにある。
しかし裏腹にそういった方に巡り合わない。
お仕事でご一緒する皆さまはあくまでもお仕事のパートナー。もっとも、髪を引っ詰め、やや眉間にシワなど寄せながら、戦々恐々と仕事に没頭している私など、彼らから見ればいわゆる out of 眼中であろう。
「キャリアだね!」とか「できる女!」とか言うのは、三十路の独身女性にしてみれば九割がた嫌味なので、お使いのシーンには特にお気をつけくださいね。
一昨年はまだ過去の恋愛から抜け出せていないから。と言い訳をし、去年は仕事を頑張ったから。と言い逃れ、今年は運が向いていないから。と!(ついに運任せである。)
「運も実力のうち」などと本当によく言ったもの、、、
命運が尽きた、とまでは言わないにしても、私の『恋愛運』とやらは先ほどの甘酸っぱい乙女心と手を繋ぎ、嬉々として仲良く黄ばんだ湯船にでも浸かっているらしい。(そろそろのぼせるわよ、と言ってやりたい。)
最近辛いと思うようになったのは歳下の女子から「彼氏いるんですか?」と聞かれること。
こう聞いてくる女子はだいたい自分の彼氏とのお悩み相談を聞いて欲しい。
こじらせた私に何を聞く気か、と思いつつも耳を貸すと、たいてい最後には「それ言って欲しかったんです!さすが!スッキリしました!」と有り難がられる。ここまでがテンプレート。
自傷行為は趣味ではないので直訳するのは避けたいが、あえて皆さまに忠告としてお伝えするならば、この台詞は「独身女性のあなただからこそサバサバとその意見が言えちゃうんです!彼氏持ちの女の人とは違う意見あざーす!」である。
少しずつ、少しずつ、こうして姉御化していくと、周囲からも「あの人は自由だから」とか「あの人は仕事人だから」というポジションに置かれてしまう。ちなみにこの椅子から立ち上がるのはなかなか難しい。
最近の癒しはInstagramで海外のイケメンが微笑みかけてくれる動画をみること。そう、ついにここまで来てしまったのだ。
だが望みはある。
実在する男性に、仮にもSNSの中の知らない誰かだとしても、ときめいている自分がいるということ。
これは特筆すべき事項である。
私はまだまだ、男性に恋心を抱くことができる!のだ。(ここでほっと胸を撫でおろす。)
たとえ会ったこともない遠い海の向こうのイケメンだとしても、、、
さて、少々荒っぽいようにも思えるが、私の『恋愛』はまだ枯れて散って、なにかほかのための肥料になったわけでは無かったので、これで良しとさせていただこう。
できるだけ朝晩歯を磨いて、毎日きちんと化粧を落として、週に2回はスカートも履いて、髪を引っ詰めないでくるんと巻いて毎日を過ごしていれば、少しは『恋愛』もその横顔くらいは見せてくれると願って、、、
その前にまず、足を開いて電車に乗るのはやめようと静かに誓って。(アーメン。)
20210227
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