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ムーミンバレーパークの劇中歌「おっきいりんごの唄」と原作の話(ちょっとスウェーデン語のことも)

相変わらずムーミンバレーパークのショーの沼にどっぷりつかっています。これから書く内容は、ショーの沼からお届けします。好きが溢れてどうしょうがない気持ちが主成分なので、感情が前のめりでいつも以上につたない文章かもしれませんが、どうかご容赦ください。

頻繁にショーを観に行けるわけではないので、配信されている前回のショーの劇中歌を購入して毎日のように再生し、エネルギーを補充しながら最近は過ごしています。

曲は↓ここからダウンロードできます!

2020年3月から2021年3月に上演された前回のショー「勇気を知った少女 ~ムーミン谷の仲間たちより~」は、短編集『ムーミン谷の仲間たち』の「目に見えない子」というお話がもとになっています

劇中歌「おっきいりんごの唄」は、YoutubeでMVが公開されています。個人的な注目ポイントは、ハンドバッグとかごを持ちながらじょうずに踊るママです。可愛くて可愛くて、可愛いです!!

歌と原作

「おっきいりんごの唄」を聴くと、原作の本の中に入ったような気持ちになります。その秘密は、歌詞にありました。

「おっきいりんごの唄」は次のように始まります。

(スナフキン)
きれいに晴れた秋の朝
日差しはまるで夏みたい

大きなかごをかかえながら
木々の木かげをこえてゆこう

(リトルミイ)
ゆうべの雨でぬかるんだ
ぬれた芝生をふみならそ
大きなかごをかかえながら
足音ならして歩いていこう

原作「目に見えない子」でムーミンたちがりんごの収穫をする場面は、次のように始まります。上の歌詞で太字にしたところと似た表現があります。なお、原作では「でっかいりんごの歌」として曲名のみ出てきます。

 きれいに晴れた秋の朝は、日かげに入ると鼻先が少しひえましたけど、日ざしはまるで夏のようでしたなにもかもゆうべの雨でぬれて、色という色があざやかに、くっきりとしています。 りんごがすっかりもがれたり、ゆすぶり落されたりすると、ムーミンパパがいちばん大きいりんごおろし器を庭に持ち出してきました。こうしてみんなは、りんごソースをこしらえはじめたのです。
 ハンドルを回す役目はムーミントロールで、ママが器械にりんごをさしこみ、パパがいっぱいになった大びんをベランダへ運びます。ちびのミイは木の枝に腰かけて。「でっかいりんごの歌」を歌いました。
(新版『ムーミン谷の仲間たち』pp.161-162)

りんご収穫の場面は、冒頭の美しい情景描写により秋の雨上がりの朝を思いっきりイメージして読みますが、ここが歌の歌い出しに使われているので、本の中に入った気分になれるのだと思います。トーベ・ヤンソンの情景描写はいつも、とても丁寧で美しいです(そして難しい…)。

歌い出しがスナフキンなのがいい

「目に見えない子」(本)にスナフキンは登場しません。「勇気を知った少女」(ショー)では、スナフキンはいるにはいますが、冒頭と、中間と最後の歌の時に出てきて、お話にはほとんど絡んでこないところが絶妙です。

「おっきいりんごの唄」の歌い出しはスナフキンで、スナフキンのソロパートはここだけです。スナフキンを好きすぎる私の妄想ですが、歌を聴き始めると、スナフキンが本を読んでくれているような感じがします。また、そのあとみんなが歌っているのを聴いてのめり込んでいくと、本の中に入ってスナフキンと一緒にみんなの様子を見ているような気分になります

ちょっとスウェーデン語の話

おっきいりんごの唄・でっかいりんごの歌は、スウェーデン語の原文では「Stora Äppelsången」です。「りんごのうた」=Äppelsångに「大きい」=Storがついているので、りんごが大きいのではなくて、うたが壮大という解釈もあるのかな…と思いました。

さいごに:「おっきいりんごの唄」が大好き!!

この歌については、タイトルしか物語には書かれていないので、ヤンソンがどんなうたをイメージしていたかはわかりません。いくらでも想像を広げることができるなかで、「おっきいりんごの唄」を創り出した方々はすごいです。原作に寄り添った歌詞と可愛らしい曲調とショーの演出によって私の想像をぐっと広げてくれたこの曲が大好きです

ショーでは、ミイがりんごの風船を客席に回す演出がありました(私が観に行った2020年秋にはやっていませんでしたが…)。想像と推測の域を出ませんが、ミイがこの歌の中心にいるのも、本ではミイが歌っている歌だからかもしれません。


昨日これを書きながら、やっぱり本格的に暑くなる前にもう一度行きたくなって、今日行ってきちゃいました。防備が甘くてさっそく蚊に刺されたのは残念極まりないですが、ショーも夏のパークの雰囲気も最高でした!!

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