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雑観・Ghost of Tsushima

 海外作品の中に描かれる日本の描写のちぐはぐさ。と言えば、思い当たる映像を浮かべる方もおられよう。深い憧憬と些細な行き違いが産んでしまった差異を、ある人は笑いある人は楽しんでいるだろう。

 文永11年。対馬国に元朝の大船団が襲来する。迎え撃つ武士団は僅か八十。しかし地頭の志村をはじめ、誰一人引く気はなかった。
 志村の甥、境井仁もまた、果敢に首領の首を狙うが、強力な火器攻撃に倒れ、志村は囚われの身となってしまう。
 ゆなと名乗る女野盗により九死に一生を得た境井は、蒙古に踏み荒らされた領土と、志村を助けるべく一人立ち向かうのであった……。

 文永の役という史実をベースにしているが、人物や物語やマップはすべてオリジナルである。開発はinFAMOUSシリーズで名を馳せる北米のSucker Punch Productionsが手がけている。
 と書けば、冒頭のちぐはぐさを期待する方も多いと思うが、断言してしまおう。本作には全くそれがない。むしろ行きすぎたくらいの見事な描写が、舞う木の葉一枚にまで行き届いている。
 また全編をモノクロとフィルム粒子で包んだKurosawa Modeなるモードを実装するあたりにも、強いリスペクトを覚える。

 ゲーム自体はオープンワールドのアクションRPG。ミッションをこなして成長し、武器装備を揃え進んでいく。
 複数の敵を向こうに日本刀一本で立ち回るアクションは、まさに時代劇のそれであり、スロー演出などを挟んで繰り広げられる剣戟は、爽快感に満ちている。

 そして何より映像美の素晴らしさよ。考証にどれほどかかったのかという美術設定の細やかさから、風を効果的に使った誘導や、舞い散る紅葉など、どれも見入ってしまうものばかり。海外発のタイトルであることなど忘れてしまうことだろう。

 ゲームやネットは数々のボーダーを飛び越えてきたが、ついに時代と国家の差異まで飾り立ててしまったと感嘆する一本。必携である。

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