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東京大学広報の「東大オンライン授業の現在地」を読んでみる

コロナ禍の影響から、オンライン授業化を素早く整備し始め、マニュアルをGithub に公開した東京大学ですが、学内広報で現在地を振り替えているので早速読んでみます。

下記ブログで学ばせてもらった東京大学の情報公開は3月頃で、そこから約半年。いろいろ知見だけでなく、課題も感じられているかと思います。

まず、5000科目超のオンライン授業化に貢献した要因は下記。

・オンライン化にあたり、各担当が具体的な検討を始める前に、こうすればできるという情報を説明したこと
・東大では早い時期に情報を共有し、その後に総長が全学でやるぞと宣言する流れができた
・これは、やり方が示される前に方針だけが降りてきて、それを受けて各部局が動き出し、努力が重複するという悪い流れにならなかった
・オンライン配信のツールは何でもいいという現場先達のアドバイスもあった

先に情報基盤となるツールについて、情報共有したのは大きかったようですね。確かに、所帯の大きいところだと、ツールの選定や使い方を各部で検討し、サイロ化するリスクは持っています。

組織内での手持ちの使える手段は、組織内で知られていないというのもよくある話。確かに方針が提示される前に手段が広く認知されるのは、スピード重視のプロジェクトでは、効果が大きいですね。

システム管理の側面では、共通アカウントが整備されていたのも、ツールを「何でもいい」と言えるベースがあったようです。

下地という意味で重要だったのは、共通ID のUTokyo Accountが全員に配布されていたことです。これを基盤にZoomとWebexが利用できるようになっています。

膨大な問い合わせについては、sinclo というチャットボットを使って、カスタマーサポートを効率化したと。問い合わせメールは確実に減っていったとのこと。


そして、見えてきた課題とは。

「学生は教室で知り合った友達とのつながりがなくて寂しい思いをしていると思います。大学の価値は知識伝達だけではなく、学生間、学生・教員間の人間関係を築くことにあり、オンライン授業が長期化するとその部分が顕在化するでしょう。その辺りと、学生の精神を含めた健康状態が課題になると思います」

このあたりは本当にそう。
オフラインで見知った人同士がオンライン化するのは容易ですが、初見(新入生)の人同士でオンライン化は負荷が大きいです。実際、各メディアで記事になっています。

東大の学生も、相当参っているようで、大学側のオンライン授業化の手応えはあるものの、学生側の課題はまだ未解決となっています。

「ただ、学生のストレスは相当です。悲鳴は窓口閉鎖の代替として設置した学生用Googleフォームなどに届いています。必修授業の先生には、連続欠席の学生がいたら連絡するよう頼み、そうした学生に学生支援チームから電話しています。私の講義で匿名の質問を募ったら、ノイローゼになりそうといった学生がいました。愚痴を言う時間を設けたら、課題の多さ、人に会えないつらさ、大学に入れない不満……と出るわ出るわ。受験生時代よりいまのほうがつらいといった学生もいてショックでした。仲間と相談する機会、愚痴を言い合う機会が足りていないと思います」


これは、Zoom 等の効率的なオンライン化ツールが発展した時期が一息つき、愚痴や雑談を言い合えるホンダの「ワイガヤ」を実現するようなツールが必要になってきたということですね。

最近だとNTTコミュニケーションズ社が製品リリースをしていましたが、こうしたツールが今後発展していくのでしょう。各ツールのメンタルサポートに期待です。


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