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フル活用期待の「学校における先端技術の活用に関する実証事業」を読んでみる

高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材が話題ですね。
教員向けの研修用教材で、がっつり「情報」を学べる機会に期待ですが、文科省は小中学校向けの先端技術の実証実験もやっているみたいなので、関連資料を読んでみました。

サイト添付のPDFのタイトルは、「新時代の学びにおける先端技術の導入」。
この実験は、埼玉、岐阜、京都、大阪、香川の参加校33校での先端技術活用モデルを参考にして、ノウハウの蓄積やガイドライン化を提言していくようです。

教員や児童だけでなく、保護者や行政との連携も考慮して、「どこに先端技術をぶつけるか」を整理しているらしく、資料の冒頭からわかりやすいイメージ図があったので引用させていただきます。

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最近の教師のオーバーワークは有名ですので、授業前や授業後、授業外の負担を軽くする所にも先端技術を適用して欲しいですし、保護者目線では、客観的な学習のフィードバックデータをリアルタイムに把握できるのはいいですね。

何より、この図のいいところは、「学校で」と「家庭で」と場の変化も表現しているところ。私の応援している「オンライン授業の進化」は、場にとらわれないことも含まれていますし。学校で得られるコンテンツが家庭でも得られるなら、不登校等の改善にもつながる気もします。

さて、早速本題の実証実験参加の各都道府県がどのような取り組みをしているのかみてみたいと思います。

【埼玉県の場合】
下記取り組みを行い、①個別アドバイスシート、②個別学習教材、③進路支援シートを作成する。
・調査や学校保有データのAI分析
・分析結果から過去、現在の学習のつまずき検知
・将来の学力予測

埼玉県は、ビッグデータ&AI による分析、予測ですね。
令和1年度は、県学力・学習状況調査の結果のAI分析を行い、①個別アドバイスシートの試作版を作成とのことなので、将来は、埼玉県内に閉じているところが広がるといいのですが。あと、学校の紙データのデジタル化に苦労してそうな雰囲気も。

【岐阜県の場合】
・AIと多言語翻訳。
・教科学習Webシステム「GIFU Webラーニング」と、統合型校務支援システムを連携し、蓄積されたデータをAI分析
・外国人児童が日本語を 学んだり、多言語で学んだりする機能を追加

岐阜県は、自前のデータを収集、蓄積できる基盤がすでにあるのですね。
スタディ・ロ グ(学習記録データ)だけでなく、校務支援システムにある児童のライフ・ログ(生活記録データ)や教師指導のアシスト・ログ(指導記録データ)もAI分析の対象にできると。
また、「やさしい日本語を学んだり、計算の仕方を英語、ポルトガル語等で学んだりすることができる環境」を検討しているとのことで、外国人児童にも優しい。

令和1年度はシステムの連携とデータ分析の詳細検討を進めているそうで、岐阜県の取り組み、強そうです笑
あとは、自前システム?が将来の技術トレンドの足かせにならぬよう大事に育てて欲しいですね。

【京都府の場合】
・授業中に取得した音声データをテキスト化し、発話数や発話時間、指定したキーワードの有無等を解析し、リアルタイムに可視化
・過去の成績やコミュニケーション力、リーダー性、人間関係等認知/非認知的なパラメータ(設定値)により、授業に適したグルー プ編成案を提示

京都府は音声データを重視してますね。
それに協働学習を効率化(グループ化検討という教員負担の削減含め)するところにICT をぶつけていくのは面白い。
課題として一人一台のPCや高性能マイク等の設備が必要ですが、具体性のある期待大な取り組みですね。

【大阪府の場合】
・AIカメラによる、教員と児童の発話量の比較、授業での癖、児童生徒の集中度等を解析、可視化
・顔認証による出欠
・AIドリルによる、問題の正誤によって、レベルに合った問題を出題

大阪府はツールを重視していますね。カメラによる分析、教材の提供と。
このカメラは物議を呼びそうですが、教員の主観排除が目的との言及もあり、どのような効果をうむか。。
世の中的には、ドライブレコーダーの普及等、監視型社会に移行している気もするので、受け入れられる土壌はありそうです。
ただ、令和1年度は、生活困窮世帯への放課後学習支援という、学校外での学習環境整備から始めるとか。

【香川県の場合】
・学習履歴(AI 解析を含む)から最適な教材の提案
・授業中に取得した音声データをテキスト化し、発話数や発話時間、指定したキーワードの有無等を解析し、思考スキルの活用状況等をリアルタイムに可視化

香川県は、AI解析と音声データ分析という京都府同様のアプローチ、、と思ったら、『授業中、「思考に関する言葉」を抽出する等、思考スキルの活用状況 をリアルタイムで把握すること』という「思考スキル」を養うことを重視しているようでうす。
また、「ベテラン教員から若手教員への授業力の伝承」するためのデータも蓄えたいとか。


さて、ここまでみてみると、各都道府県では狙いも基盤もいろいろですね。
実績事例が増えていくことは素晴らしいですし、個人的には、下記に期待しています。

・基礎学力定着(全員一律のドリルや宿題からの脱却)
・生活支援(体調や人間関係、いじめ、不登校の傾向把握)
・校務支援(必要書類作成の手間を削減)

これらに先端技術をぶつけて、省エネ化し、授業の品質向上や、教育政策の立案が進む土台を生み出していきたいですね。



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