「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」を読んでみる
令和2年度の教科書展示会が始まっていますね。
私も地元の展示会を他用のついでにチラ見してみましたが、カラフルで親しみやすいイラストの教科書が大量に積んでありました:-)
気になったのが、デジタル教科書に関する情報がなく、紙オンリーの展示だったので、チラ見ついでに、文科省のデジタル教科書について調べてみようと思いました。
早速ですが、冒頭の以下の記載。
学習者用デジタル教科書を制度化する「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が平成31年4月から施行
法律関連がすでに動いていたのは知りませんでした。
紙の教科書と併用して、デジタル教科書を一定の条件で使っていいという学校教育法の改正があったのですね。
さて、法改正の趣旨や背景はいろいろあるでしょうが、今後、現場でどのように使われるかが知りたいので、以下の「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」を読んでみます。
序文でまず知識不足を感じたのが下記。
教科書は,各教科の学習における主たる教材として法律による使用義務が課せられ,基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するものである。
法律で教科書の使用義務があって、その内容を押さえることが基本を学んだということの証明であると。
自分が学生だった頃、教科書よりわかりやすかった参考書に手を出していましたが、教科書はやはり重要な位置付け。
ただ、前述の法改正までは、紙の教科書を使うことがほぼ前提だったようです。それがようやく、デジタルによる情報への効率的なアクセスに着手できるようになったと。
従来の紙の教科書には、下記のような縛りがあるそうで、なるほど、デジタル化は単純な道のりではなかっただろうなと感じさせます。
そもそも一人一台のPC 等のデバイスが前提になりますし、著作権も大事。
① 各学校において使用しなければならないこと。
② 文部科学大臣による検定を経る必要があること。
③ 義務教育段階においては児童生徒に対して無償で給与されること。
④ 国から教科書発行者に対して,発行の指示,定価の認可等が行われること。
⑤ 著作・編集等に当たって,著作権の権利制限が認められていること。
様々な縛りを乗り越え、デジタル教科書を使える条件となるのは下記を踏まえることが必要とのこと。
・2020 年度新学習指導要領「主体的・対話的で深い学び」のための授業改善
・障害のある学生の教科書へのアクセス支援
後者はわかりやすいですが、前者はまだよくわかりません。(後で調べよう :-p)
また、デジタル教科書とは、「紙の教科書と同一内容」というのが定義になるらしく、下手をすると、紙の教科書をスキャンしたPDF を「デジタル教科書」と言ってしまう可能性もありそう。(紙の構成をそのままだと、紙媒体の方が使いやすそう)
また、デジタル教科書は有償であり、紙と内容が同じことが前提なので、教科書検定は改めて行わない。
何より、デジタル教科書は紙の教科書の代用が可能なだけで、使用義務はない。
とすると、紙と同じ内容のデジタル教科書を発行する教科書会社がいないと、使うこともできないのか。。
ちょっと脇道にそれて、教科書会社はどういうスタンスなのか確認してみます。
東書こと東京書籍のサイトをのぞいてみると、一元ビューア、書き込み、外部リンク等、デジタルならではの機能付加をつけた取り組みは進んでいました、、少し安心。光村図書も同様に取り組んでいるようです。
さて、少し安心したところで、ガイドラインに戻ります。
著作権に関しては、デジタル教科書の発行者が補償金を支払うことで、利用者は特に考慮不要とのこと。
ただし、引用抜粋、学習者への配信等にまで広がると他の著作権法との兼ね合いが必要になるかもしれないので注意とのこと。。
いろいろ道半ばという気もしますが、ガイドラインは、デジタル教科書の可能性と活用について言及していきます。
前述の外部リンクや動画、書き込み等のデジタルであれば普通の話に加えて、
ネットワーク環境を利用して,児童生徒が行った書き込みの内容や関連して検索した 情報などを教師や児童生徒間,さらには学校・家庭間で共有する
教師の宿題の提出や集計、添削が楽になりそうな話もありますね。
同意が取れれば、ビッグデータ化して、つまづきやすいところが可視化できるでしょうし。その他にも、下記(一部抜粋、加工)はデジタル化ならでは。
・教科書への書き込みを何度も繰り返すことを通して、試行錯誤する
・教科書の紙面から必要な文章や図表等を抜き出し、それらの関係性を書きこむ ことを繰り返すことを通して、試行錯誤する
・教科書の紙面に関連付けてドリル・ワークシート等を使用することで、個々の児
童生徒の習熟度に合わせて練習問題に取り組む
・前回授業や既習事項の振り返りを効率的に行う
・教師の教材準備や黒板への板書の時間を削減
そして、ガイドラインの終わりには、以下の注意書き。少し長いですが引用。
学習者用デジタル教科書は,このような教育の情報化の流れの中で,教科書に ICT の特 性・強みを生かすという観点から制度化が行われたものである。
この新たな学びのツールを 効果的に活用するためには,教師の ICT 活用指導力の向上や ICT 環境整備に取り組む 必要があるとともに,学習の目的を実現するための手段である学習者用デジタル教科書の 使用自体が目的化することは避けなければならない。
このあたりはその通りなのですが、すでにツールがないと、知のネットワークへのアクセス効率が悪くなる時代ですので、早く使える環境整備を支援していきたいですね。
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