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令和2年4月未来投資会議の「学校現場におけるオーダーメイド型教育(ギガ・スクール)」を読んでみる

学校でのIT先端事例を調べていると、首相官邸の未来投資会議の議事が検索ヒットしたので、早速読んでみます。

未来投資会議は、毎月様々なテーマを官邸、有識者の方々が議論しているそうですが、今回の「オーダーメイド型教育」テーマは、第37回令和2年4月3日のもので、論点要旨は下記にまとめられていてわかりやすいです。

一部を引用すると。。

‧ 現行制度上(学校教育法施行規則)においては、各教科につき、学年ごとの標準となる 授業時間を定めている(「標準授業時数」)。
‧ 先端技術の活用(例:AIドリル)により個別最適化した学びが可能となることを踏まえ、各 教科毎の標準的な年間の授業時間にかかわらず、特定科目の授業時間を柔軟に増減 できるよう、検討を進めるべきではないか。

これは面白いですね。
以前、義務教育の簡単な定義を調べてみましたが、先端技術(AIドリル等)で効率化できるのであれば、授業時間を柔軟に増減変更できると。

現行の小中の義務教育は、この標準時間数を消化していくことに近く、留年も実績的にないそうですが、これをオーダーメイド型に変更できる余地があるということですね。

さて、その根拠となった議論はなんだったのか見てみると、下記の基礎資料のP.19 に AI ドリルの事例実績が報告されていました。

学校現場の改革で有名な千代田区立麹町中学(当時、工藤勇一校長)が、2018年9月〜2019年2月の間、AI 型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」を活用して、学習の効率化(学習時間の短縮)を検証したそうです。

中学2年生のクラスでAI型ドリル教材を活用することで、数学の授業時間 63時間のうち、知識習得の時間を31時間に効率化。残りの32時間をSTEAM教育(ドローンを活用した幾何学の 演習等)や高学年(中学3年生)の数学の学びにあてることが出来た。
(注)小中学校では、教科ごとに必要な時間として規定されている「標準授業時数」を下回る教育課程を編成することは適当でない とされているが、麹町中学校では、中学2年生の数学の授業時間を維持しながら、STEAM教育や中学3年生の単元を教え ている。

知識習得の時間を半分にし、残りの時間を時代のニーズに応える教育に使うと、、これはオーダーメイド型とAI教材ががっつり噛み合った効果でしょうか。

注記には、標準時間数を下回ることは適当でないと言及があるので、導入のリーダーシップや現場、保護者の理解もあったのかと思います。(中学2年という時期も)

上記P.14 からは、中学2年の数学授業数 105時間のうち、63時間部分なので、効果が見込める部分に特化したのだろうなと。

これは、COMPASS社の「キュビナ(Qubena)」についても、興味が湧きますね。下記記事でメリットがしっかり読み取れます。

生徒間で互いに教え合っている姿も目につき、通常行われる板書主体の授業より教室には活気がある。授業終わりに「今日は94問も解けたよ!」と先生に嬉しそうに報告する、ある生徒。自分の学習成果や進捗を可視化できることもキュビナの特徴のひとつだ。

苦手部分の反復、教え手と受け手の相性の悪さがなくなる、生徒間とのゲーム的競争、成功体験の蓄積と、、基本の知識習得に必要な要素がしっかり入っていますね。

単純に授業時間が半分になるという点だけをクローズアップするのはあれですが、数学の計算式、漢字、英単語の暗記にはどんどん適用してほしいところです。

この先端技術の適用を振り返って、当時の麹町中学校校長が最近、日経のインタビューを受けていました。

これも麹町中の例になりますが、教育熱心な地域にあるので、小学校時代に塾などで詰め込み教育を受けてきた子供たちが多いんです。散々与えられ続けると、自分で学ぶことを忘れてしまう。何をしたらいいか分からなくなってしまう。

教育熱心な地域であるからこその取り組みで、鍛えられた教師も多そうですが、生徒の自立性にシフトさせていくために、詰め込み時間を効率化短縮化し、自分から学びたいと思わせる時間を作っていくのは素晴らしい取り組みですね。

最後に未来投資会議の参加者の文部科学大臣のコメントから。

危機的状況といえば、先週、ユネスコのコロナ対策の教育大臣会合にテレビ会議で出席をし た。フランス、イタリア、イランなど11の閣僚らと話し合いをしたが、日本の医療の体制とか 環境衛生については非常に高い評価をいただいたが、うちを除く10カ国はみんな初等中等教育 をオンラインでやっているので、もう言葉がなかった。

先端事例ばかり見ていると見誤りますが、多くの学校現場は現行を維持せざるを得ないとか、今の形で困っていないとかの状況に囚われているので、生徒一人一台端末、安定した通信環境の整備等の支援を粛々と進めていただきたいと思います。

その環境、あるいはマーケットの土台ができれば、いろいろなものが生み出されていくので。。



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