バットに当たれば天才的。阪神タイガース江越大賀に落合博満のバットコントロールの金言のススメ 7,400文字


今回の話は熱い阪神ファンからの要望が複数あったので書くことにしました。

昔から阪神ファンはNPB,日本のプロ野球界において愛の溢れ方が凄いです。
時に溢れすぎてややこしい。
そんなエピソードから書き始めます。
そしてそんなエピソードでこの話は締めようと思います。

1985年バース、掛布、岡田の時代、阪神は21年ぶりのリーグ優勝をします。
ちなみにその年はバースが三冠王を獲得しています。
そして球史に残る名場面、巨人の投手槙原から掛布、バース、岡田のバックスクリーンへホームラン3連発もあった年です。
ちなみに打たれた槙原寛己は後の1994年に完全試合を達成する大投手です。
そして阪神はこの年、日本シリーズで西武相手に4勝2敗で勝利し、初の日本一になっています。
この頃の阪神はとにかく打ちまくる印象が強く、象徴的なのはやはりランディ・バースですね。
この年のシーズン終盤、ホームラン54本を打ち、誰もそうは言わないとは思いますが、当時NPBホームランシーズン最多記録の王貞治の55本を護るためという意識がなかったとは思えないくらい、各球団がバースを敬遠で歩かせ続けたことを憶えています。
とにかく1985年の阪神タイガースには華がありました。

その後、
2003年松井秀喜が海を渡り、ニューヨークヤンキースに移籍した年。
星野監督に率いられる阪神タイガースはリーグ優勝をします。
私はその時大阪に住んでいました。
優勝が目前に見えてくると、街中が他で感じたことのないザワザワ落ち着かない空気に包まれ、
優勝マジックが一桁に突入した頃、タクシーに乗っていると、運転手のおじさんが「優勝のときはミナミ(難波、心斎橋)には行ったらあかんで。私らは会社に行くな、言われてるから。タクシーもおらんと思うし、店も全部閉めると思うで。バース・掛布の時(優勝した85年の時)はタクシーひっくり返されたりして、そらあもうひどかったから…行かん方がええよ」

タクシーがひっくり返されるとは…喜びの表現として理解が不能です。
そんな言葉を聞いたら行かないわけにはいきません。
とりあえず、何が起きるのか観たくて仕方がありませんでした。

その日はデーゲームでした。家でその広島戦をTVで観戦していたと思います。
記憶が曖昧ですね…もしかしたら職場で観ていたかも知れません。
伊良部秀輝が先発、点を取られると表情豊かな星野監督のわかりやすく不愉快を示す表情が印象的でした。今思うと、それも含めて当時の野球はエンターテイメント性に溢れていました。
星野監督のあのキャラクターは今の時代だとパワハラと叩かれてしまい、成立しないかも知れません。ほんの少し前のことなんですけどね。
なんでもきっちりと潔癖な形にするばかりが良いことばかりを生みません。
緩くあることに豊かさがあり、エンターテイメントについても違わずというところでしょうか。
あの頃の星野監督、阪神タイガース、阪神ファン、共に時代の中で豊かに輝いていました。
クライマックスは9回、赤星憲広がライトの頭を越える劇的なさよならヒットで阪神が勝利。
これで優勝マジックが1となり、
甲子園球場は大盛り上がりで、六甲おろしの大合唱が起こっていたのが印象に残っています。
優勝を競っていたヤクルトの勝敗の結果待ちで、結果次第で阪神タイガース18年ぶりの優勝が決定するという中、ヤクルトが負けているという解説が入り、私はそのタイミングで外に出て地下鉄の駅に向かい、何かが起こるであろうミナミに足を向けました。

心斎橋の駅に着いて、御堂筋線のホームに降り立つと、異様に下水臭くて、地上に上がると、さらにその濃度が上がった異臭に街中が毒されていました。

最初はわかりませんでしたが、道頓堀川に大量の阪神ファンが次から次へと飛び込んでいたので、川の中でヘドロが攪拌されて、その匂いが拡散されたようです。
歩道は人が鮨詰め状態で歩けません。欄干の上や街灯の上、車道にも人が甲子園の蔦が這うように溢れ返っていました。
どれだけの人が飛び込んだのか。本当に臭かったことを憶えています。
メイン通りとも言える心斎橋商店街の店々はシャッターを降ろして、どこも開いていないシャッター通りと化していました。
みんなが次から次へと飛び込んだ道頓堀川。
後日ニュースになりましたが、数人亡くなっています。
阪神タイガースが優勝するとファンも命懸けで喜ぶ。全くもって理解に苦しみます。
次の年からだったと思いますが、川に飛び込めないように色々と改修が成されています。
何事にも節度は必要です。

御堂筋は車が生贄のように動けない大渋滞の状態になっていました。
その連なる屋根の上を興奮した若者が肩を組み、奇声を上げながら飛び跳ね、走っていました。
カニ道楽のカニのオブジェにまで若者がよじ登り、カニの目玉は千切られていたように記憶しています。
これこそがカオスです。
警察や機動隊のような方々も街中に多く立つようになり。
私はもみくちゃにされながら、なんとかその場を離れました。

タクシーの運転手が言っていた通りの、行ってはいけない場所でした。

神戸、大阪、関西にとって阪神タイガースはソウルチームです。
阪神が勝てば機嫌が良く、阪神が負ければ機嫌が悪い。
そんなおっちゃんおばちゃんが本当にたくさんいる街です。

それでです。
本題の

“バットに当たれば天才的。阪神タイガース江越大賀に落合博満のバットコントロールの金言のススメ”

なのですが、“バットに当たれば天才”なんて、プロならば誰でもそうだと思う方もおられると思います。

愛あふれる阪神ファンたちが期待していますので説明します。

私の周りには熱い阪神ファンたちが多くいます。
その方々から、今に始まった話ではなく、もう随分前から散々耳にしている話ではあります。
“江越大賀のポテンシャルがとにかく凄い” “ただしとにかくバットとボールが当たらない。当たれば打球はエグい”
そんな話です。

たくさんプロ野球選手の治療もしていますが、その選手たちからも話は聞きます。
他チームの某有名選手も絶賛していました。
「江越は肩強い、足速い、守備うまい、打った時の打球は凄い。なぜ一軍に定着して安定した活躍につながらないのかわからない」

NPB史上最年長。左投げに限れば世界最年長となる41歳でのノーヒットノーラン、2008年には同じく史上最年長での200勝を達成。2015年には50歳代での登板という経歴を持つ、中日ドラゴンズのレジェンド山本昌にも
「12球団で一番もったいない選手だと思う」と評されています。

今回の話はそんな江越大賀に届いて欲しい話でもあります。

ボールとバットが当たらない➡︎これはバットコントロールの問題です。
この問題はフォームだとか、身体の運動連鎖の問題ではありません。
空間の把握、そしてその中で変化するものに対しての距離感。未来予測。それらと運動機能の相互コントロールといったことへの問題です。

ぐちゃぐちゃのフォームで、運動連鎖的に正しくなくても、当てるだけのことならば小学生で野球をしてない子供でも上手い子供はいるかもしれません。

江越は打つ以外は総てスペシャルで、打つのも当たればとんでもない打球が打てるということなので、“野球”に関しての問題ではなく、これら機能に対しての問題があるのではないかと思います。
バットにボールが当たりさえすれば天才ということです。

このバットコントロールに対して紐解いていきたいと思います。

姿勢制御や運動中の動作コントロールは
・視覚➡︎視覚機能は視力だけではありません。
    相手や物体との距離感が測れます。対象物の質感、重さが解ります。
    ボールの行き先などの未来予測に機能します。
    など、まだまだありますが、姿勢・運動制御の枠を超えて
    人間の機能全般に大きな影響力を持ちます。
・前庭覚➡︎一般的に三半規管と呼ばれるバランス感覚です。
     耳の伝音に重要な働きをする鼓膜を有する中耳の奥に繋がる
     内耳に存在します。
・体性感覚➡︎身体中にある感覚器の機能。足底の感覚器により地面の硬さや  
      質を感じるとか、手で感じる熱い・冷たいもそうです。
      筋肉、関節の状態、それらの感覚情報など、
      皮膚感覚などもそうです。
      
この三つによって制御されています。
バッティングにおいても、運動動作は姿勢・運動制御の元、行われますので、この原則について特別違ったりはしません。

落合博満と西武の山川穂高の対談がYouTubeにあります。

私は落合さんのYouTubeで話す内容が好きでよく観ます。
おそらく医学ベースで理解してはいないと思いますが、落合さんの経験と試行錯誤、鍛錬から得ている感覚ベースからの解説に、もの凄く医学的に考えさせられるものが多いからです。

この時も、山川が落合に質問をします。
スランプに陥った時、良い時のバッティングフォームの動画を観てバットを振り込む。
といったことを山川が話すと。
落合はそんなことをしてもダメだと言います。
そしてアドバイスとして、
「部屋を真っ暗にして、その中でバットを振れ」とだけ言います。

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