【ロック名盤100】#40 Pink Floyd - The Dark Side of the Moon
今回紹介するのは、ピンク・フロイドが1973年3月にリリースした「The Dark Side of the Moon」(邦題は「狂気」)だ。前回紹介したキング・クリムゾンの1stアルバムと並んで、プログレッシヴ・ロックの金字塔とみなされているピンク・フロイドの最高傑作だ。プリズムを描いたジャケットは誰もが知るところ。本来難解でポップとはいえないプログレのジャンルとしては異例のセールスを記録したことでも有名だ。
本作は葛藤、貪欲、時間、死、精神病などの詞を中心としたこの世界の「狂気」をコンセプトとして探求している。そのため「狂気」という邦題はこの上なくマッチしているといえるだろう。原題の「月の裏側」というのもとても優れた表現だとは思うんだけど。歌詞の一部には、ドラッグの過剰摂取により精神を病んでバンドから脱退してしまったシド・バレットについて述べていると思われる部分もある。全体として「狂気」に満ちた音作りが構成されていて、没頭して鑑賞できる作品となっている。僕も勉強中によく聴かせていただいてます。
1 Speak to Me
2 Breathe (In the Air)
3 On the Run
4 Time
5 The Great Gig in the Sky
6 Money
7 Us and Them
8 Any Colour You Like
9 Brain Damage
10 Eclipse
僕がプログレに目覚めた瞬間は、「タイム」でデヴィッド・ギルモアのパワフルな声とともに全員の演奏が動き出した瞬間から。喧しいベルで叩き起こされる印象的な始まり方もすごいし、ギルモアのギターソロはロック史のなかでも上位に入るアイコニックなプレイ。ピンク・フロイドのみならずプログレッシヴ・ロックを代表する名曲だ。
このアルバムでもうひとつ注目すべきトラック「マネー」は7/4拍子という特徴的なリズムを基盤に、耳に残るベースリフが展開されるかっこいいロックナンバー。やはり名盤は締め括り方も完璧であるというもので、終盤の「ブレイン・ダメージ」と「エクリプス」も素晴らしい。特に「ブレイン・ダメージ」でのはっきり「The Dark Side of the Moon」というアルバムの題名が歌われる壮大なコーラスは、本作で盛り上がりが最高潮に達するポイントだろう。
やっぱり狂気はヤバすぎる。アルバムとして余りにも完成されていると改めて感じた。ロックのアルバム芸術としての完成形がここで1つ築かれたのだと思う。最後の曲が終わったときの感動は形容できないほど大きい。しかし満足感だけが残っているかと言われればそうではなく、ディープな音像に恐怖も少し残るような感情も覚えた。これからも僕らは狂気に塗れた世界で生きていくのだろうか。月の裏側のような闇に怯えながら。
↓「タイム」