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#理性

善と無力(キリスト教によせて)

アウグスティヌスの時間論 ニーチェ『善悪の彼岸』 バタイユ『宗教の理論』 言うまでもなく、善くあるためには無力である必要がある。そして、この無力さには一抹の愚かさが含まれている。 そしてその「愚かさ」とは、合理的な判断ができない文字通りの愚かさというより、愚かでいようという合理的な判断なのだ。 例えば、善の神は無力だ。それは無力を貫き通して十字架上で死ぬような神なのである。苛烈さや恐ろしさのゆえに神であるような、多神教の神々とはわけが違う。 そして、この「無力さ」も文

国家的「区分」とアイデンティティ

国家的「区分」個人的に、多様性と近代国家の制度は相性が悪いと思っている。 近代国家の公的制度は、AとBの厳密な区分を必要とするからだ。 例えば、年収「195万円」と「195万1円」でガラリと所得税の税率が変わってしまうように。 公的制度は、根本的に多様性(=スペクトラム、グラデーション)とは相容れないのである。 先の所得税の例にしたって、税率が変わるような境界線をたくさん引いたとしても、どこかで機械的な区分がなされるということに変わりはない。 そもそも、人によって家族

贅沢⇔生産性

「贅沢なもの」の話をしようと思う。 とはいえ、ここでいう「贅沢なもの」は私たちが一般に想像するものとは少し違うので、まずこれの説明から始めよう。 この記事における「贅沢」とは、浪費的な性格を持ち、なんらの生産性も持たないことを意味する。 ざっくり言うと「すぐに消えてしまって、後には何も残らない、砂絵のようなもの」のことである。 例えば、メイク/化粧は贅沢であるといえよう。 メイクには、時間も手間もお金もかかるが、その日のうちに落とさなければならない。 もちろん、メイク