萩原朔太郎詩集『月に吠える』を解説 〈一篇(天景)を深掘り〉
萩原朔太郎詩集『月に吠える』(「天景」)を解説
今回の詩人は萩原朔太郎です。
現代詩の源流に朔太郎あり。西脇順三郎も朔太郎がいなければ日本語で詩を書くことを諦めていたかもしれないですし、少なくともスタートは遅れていたはずです。となれば西脇以降の詩人たち、吉岡実をはじめとした現代の詩人たちの詩も今とは違うものになっていたかもしれません。
そんな偉大な詩人、朔太郎の詩の中から『月に吠える』の「天景」を取り上げます。
「天景」を読むにあたっては、参考にしたい、これ以上ないくらいに素晴らしい「天景」を扱った記事がありますので、まずご紹介します。
ヨジローさんの記事も参考にしながら(ヨジローさんの許可はいただいてます。ありがとうございます)読んでいこうと思います。
たった七行の短い詩です。
「天景」の、僕が考える重要なキーワードは〈しづかにきしれ〉です。この朔太郎の〈詩の言葉〉が一気に幻想の世界へと誘ってくれます。つまりは、四輪馬車の上昇です。ヨジローさんの記事にあったように、詩人の小池昌代さんも言われていますが〈しづかにきしれ四輪馬車〉を繰り返すことによって、上昇していく様を描いているとみます。加えて僕は、この繰り返しが時間の経過の役目も持っていると考えました。
〈光る魚鳥の天景〉はヨジローさんの記事のおかげで、光る魚や鳥が空を舞っている、幻想的な新たなイメージを持つことができました。これは大きな収穫でした。
次の行の〈また窓青き建築〉の、《まぁたぁ》の開放的な響き、色の青と《あおきぃ》の澄んだ音の響きから、朝のイメージが立ちあがってきました。ですので、ここを軸にして時間を考えた時〈ほのかに海はあかるみて〉は夜明けの頃と読みました。
夜明け頃、四輪馬車に乗ってゆっくりと空を上ぼってゆきながら、ほのかにあかるくなってきた海と遠く風にながれる麦を眺める。昇ってきた朝日に光る魚や鳥は幻想的に空を舞い、眼下には窓の青い建築も見える。
たった七行の詩が、豊かで美しいイメージを僕にいだかせてくれました。朔太郎おそるべし!
詩集『月に吠える』について
萩原朔太郎の詩集『月に吠える』は基本おそろしく陰鬱な世界です。「天景」のようなきらきらした作品を集めた詩集と思わないよう注意が必要です。
「天景」はいわば砂漠のオアシスのようなものです。ですから砂漠を知ることでよりオアシスの輝きも増すでしょう。
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〔簡単な自己紹介〕
詩書き。〈青い鳥書店〉店主。
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詩の面白さを伝えたい。
何度も読んでもらえる詩を書いていきたい。
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