府省庁のウェブアクセシビリティ方針と公開事例一覧
卒業研究と来月後半の単位認定試験とがあるというのに、他の調べものを始めてしまい止まらなくなってしまっています。困ったものだ。
今日は府省庁のウェブアクセシビリティ方針公開事例について。
ウェブアクセシビリティ方針とは
ウェブサイトを運営している府省庁、企業、団体などが、文字通りそのウェブサイトのアクセシビリティをどの様に取り扱っていくか明文化したものである。拠り所としているもの、対象範囲、目標の適合レベルと達成状況、また達成する期限を検討し、文書化したものを各団体ホームページ等で公開することとして、総務省が各府省庁に向けて出した「みんなの公共サイト 運用ガイドライン(2016 年版)」にも書かれている。
なお「みんなの公共サイト 運用ガイドライン」はJISの更改にあわせて更新されてきているので、今後JISの改定があった場合は要チェック。
また策定にあたっては、ガイドラインがウェブアクセシビリティ基盤委員会(waic)から出ているので、詳細はそちらをご覧いただきたい。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会 ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン
公的機関のホームページはページ数が多く、また同じドメイン内でも政策ごと・部署ごとなど管理している担当が異なることも往々にしてある。場合によって、ウェブアクセシビリティ方針を策定する主体の設定も必要だ。
例えば、公式ホームページの管理運営担当部署(例えば、広報を担当している部署、あるいはシステム部門など)が主体となって全てに対してウェブアクセシビリティ方針を策定をするのか、各ウェブコンテンツの管理運営担当部署が主体となって各々がウェブアクセシビリティ方針を策定するのかといった方法があるが、もともとのウェブコンテンツの管理に紐づけるなどして主体設定する把握しやすいように思う。
また政策・プロジェクト毎に、所管の府省庁とは別にドメインをとりウェブサイトを運営することをよく見かけるが、これもウェブアクセシビリティ方針策定と対応が必要となる。
(蛇足だけど、一時的なものでもgo.jpドメイン使ってくださいよ、と言いたい。あとプロジェクトが終わったあとのドメインの管理や移管も「ドメイン管理ガイド」に則って対応すべき。)
ウェブアクセシビリティ方針公開事例
ウェブアクセシビリティ方針公開は、前項「ウェブアクセシビリティ方針とは」の冒頭に記載した通り、総務省の「みんなの公共サイト 運用ガイドライン(2016 年版)」に依って文書化したものを各団体ホームページ等で公開することとあるのだが、公開が見当たらない或いは見つけられないものも多い。
以前記事にしたウェブサイト上でみられる文字拡縮や読み上げツールについての調査(1)と同じ調査対象で、ウェブアクセシビリティ方針を公開しているものを以下記載する。
なお対象とした府省庁や確認方法、調査環境他は次の通り。
対象とした府省庁
首相官邸のウェブサイトと当該サイト内の「国の政策(政策情報ポータル)」ページに掲載されている府省庁のサイト 46サイトから、以下の条件に適合したもの。
・独自ドメインであること
・または独自ドメインの配下もしくはサブドメインであってもデザインが異なるもの
結果、44サイトを調査対象とした。
なお、「ウェブアクセシビリティ方針とは」の項に記したようなウェブアクセシビリティ方針を複数持っているケースもあるため、その場合はトップページを対象に含むウェブアクセシビリティ方針を公開しているものとした。
確認したページ
対象とした府省庁のトップページおよびウェブアクセシビリティ方針ページ、サイトマップ。見つからないものについてはサイト内検索を利用し「ウェブアクセシビリティ」または「アクセシビリティ」をキーワードに検索。
確認方法
目視による
調査日
2018年6月9日、2018年6月24日
調査環境
OS Windows10
ブラウザ Google chrome(バージョン: 67.0.3396.79)
調査結果
ウェブアクセシビリティ方針の掲載‥19サイト
掲載が見あたらなかった、みつけられなかった‥25サイト
※厚生労働省が「アクセシビリティについて」というページがありましたが、ウェブアクセシビリティ方針ではなかったため「ウェブアクセシビリティ方針の掲載」は19サイトに修正しました。(2018年6月26日)
公開事例一覧
首相官邸
Webアクセシビリティ
国家公安委員会
国家公安委員会ウェブアクセシビリティ方針
個人情報保護委員会
ウェブアクセシビリティ方針
金融庁
金融庁ウェブアクセシビリティ方針
消費者庁
ウェブアクセシビリティについて
外務省
ウェブアクセシビリティ
※余談ですが、外務省は英語のページはアクセシビリティ方針どうしているのかなと確認したところ、JIS X8341-3に則るといった基本的なポリシーだけ書いてありました。(「Accessibility」)
文部科学省
文部科学省ホームページ ウェブアクセシビリティ方針
※スポーツ庁がこれを共有(スポーツ庁独自ではないのでカウントせず)
経済産業省
経済産業省ウェブアクセシビリティ方針
資源エネルギー庁
経済産業省・資源エネルギー庁ウェブアクセシビリティ方針
※経済産業省のサブドメインだが別に策定
原子力規制委員会
アクセシビリティについて
国土地理院
国土地理院ホームページ ウェブアクセシビリティの取り組み
上記以外の府省庁ウェブサイトでは、ウェブアクセシビリティ方針のページは見つけられなかった。
なお国土交通省に関しては、管理運営担当部署毎のウェブアクセシビリティ方針は幾つも見つかったが、トップページを対象としたウェブアクセシビリティ方針が見あたらなかった。
また環境省は環境省ウェブサイト作成ガイドラインページを公開しているものの、ウェブアクセシビリティ方針は見あたらなかった。
復興庁はこのホームページについてのページ内に「アクセシビリティについて」の項があるが、簡易な説明でウェブアクセシビリティ方針ではない。
人事院と特許庁はウェブアクセシビリティ方針が見あたらなかったが、本年6月の調達情報によるとウェブアクセシビリティについての記載はあることから、今後の対応を期待したい。
まとめに代えて
見つけやすい場所(例えば、ウェブサイト全体に関わるようなフッター)にウェブアクセシビリティへのリンクがあるウェブサイトもあれば階層が深く見つけにくいケースもあった。
またその表記も「ウェブアクセシビリティ方針」あるいは「ウェブアクセシビリティ」といった直接的な表現ではなく「ご利用にあたって」のような別の表記のページ内にリンクがあるなど、一見してどこにあるかわからないケースもみられた。
以前にも紹介した政府CIOポータルに掲載されている日本語版Webサイトガイド(1.1 版)を確認すると、トップページのデザインまたフッタの項目にウェブアクセシビリティについての記載がある。
3.1.7 フッタ
4)ウェブアクセシビリティ
Web サイトのウェブアクセシビリティ方針などを記載したページに移動する。
基本構造はこれに倣い構築することが利用者の戸惑いを軽減する一手ではなかろうか。
さらに、プロジェクト毎にウェブサイトを構築する機会も増えており、必ずしも日常的にウェブコンテンツに関わっている職員が担当になるとは限らない。
情報セキュリティ同様に(例「サイバーセキュリティ月間」)組織全体に周知する取り組みが必要と考える。
(了)
ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド Waitangi Treaty Grounds ©moya
最後までご覧いただきありがとうございます! 現在放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究中。noteはそのメモを兼ねてます。ヘッダー写真はnzで私が撮影しました。 【ご寄付のお願い】有料noteの売上やサポートはnzクライストチャーチ地震の復興支援に使わせて頂いております。