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ウェブアクセシビリティとマシンリーダブル

2018年4月22日 日曜日から24日 火曜日まで3回に分けて書いた「なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう ☆」の中でマシンリーダブルという言葉を使った。ウェブアクセシビリティとマシンリーダブルがどのような関係にあるのか。

「視覚障害者のかたってホームページ見れるんですか?」

組織内で人事異動があり新たにWebサイトの担当になったかたと最初にWebアクセシビリティについて説明すると、毎年のように
「視覚障害者のかたってホームページ見れるんですか?」
という質問が出る。

当然の疑問だと思う。
視覚障害者=見えない人
そう思っているかたが多いのだから。

視覚障害といっても、さまざまだ。

大きく分けると全盲とロービジョン(弱視)がある。
ロービジョンには、視野の一部が見えていない、見えづらい、ぼやけてしまう、色の見え方が異なる、夜になると見えない・まぶしいと見えないなどといったかたもおられる。そして個人差がある。だから街中で白杖を持っているけどスマートフォンを操作しているかたもいらっしゃる。

重度視覚障害で白杖無いと外歩けないけど運転免許持ってるよ-
namekoさんのブログ

私自身は近眼で中学生から眼鏡を使い、今はコンタクトレンズを使っている。眼鏡等を使えば視力がでるのであれば良いのだが、使っても視力が出ないのが視覚障がいだ。

晴眼者の見え方と視覚障害がある場合の見え方の違いを、秋田県立盲学校のウェブサイトで写真で紹介している。

2.視覚障害について 2-2 視覚障害の状態 秋田県立盲学校

全盲のかたのウェブサイトの利用方法

では、全盲のかたはどのようにしてウェブサイトを利用しているのだろうか。最近では、スマートフォンやWindows10の標準で音声読み上げ機能がついているので使った事があるかたもいると思うが、以前から視覚障害者も専用のスクリーンリーダーを使用するなどしてウェブサイトを活用されている。

弱視のかたのウェブサイトの利用方法

続いて弱視のかたの場合だ。

紹介した動画は、いずれも総務省が公表したものだ。
あくまでも例なので使用方法には個人差があるが、イメージがつかめたかと思う。

ウェブアクセシビリティにおいてのマシンリーダブルであることの重要性

スクリーンリーダーはソフトウェアなので、コンピューター上で動いている。ということは何らかの機械語で動作を判別したりウェブサイトの文字を読み取っているわけだ。逆に言うと機械語で読み取れなければ、音声で読み上げができない

マシンリーダブル("machine readable")とは機械が読みやすい状態のことをいう。例えば、googleやYahoo!Japanといった検索エンジンはクローラー(ロボット)があちこちのウェブサイトを巡回して、そこに書かれている文を読み取って自分のところのデータベースに情報を蓄積しておく。誰かが検索したら、
「はい、こんなウェブページがありますよ」
とすぐ表記してくれるのはそのおかげだ。ところが、検索エンジンが読み取れない状態でウェブサイトを公開していたらクローラーは情報収集ができない。人の目ではなにか見えていたとしても「なんだ、このウェブページには何も情報がないや」と去ってしまう。検索エンジンにとってマシンリーダブルではないウェブページはいつまで経っても検索エンジンで表示されない。

スクリーンリーダーは人とは違う

ところで、このページの書き出しで、
『2018年4月22日 日曜日から24日 火曜日』
としているが、これはどのようにスクリーンリーダーで読み上げるだろうか。スクリーンリーダーNVDAに読んでもらおう。また、続けてこれが以下のようになったらどうだろうか。
『2018/4/22 (日)~24 (火)』

前後の文章や、これまでの経験から「ここは日付と曜日なんだな」と察することはできるが、慣れていないと考えてしまうかも知れない。

では、次の例はどうだろうか。
『東京の方』
方は方角をさしているのか。それとも人をさす敬った言い方なのか。
実際読み上げてみよう。

「とうきょうのほう」と読み上げられた。だから、例えば視覚障害者のかた、と読ませるつもりで方を使用すると「しかくしょうがいしゃのほう」になってしまう。

3番目の例。例えば、見た目を整えるために次のようなことはしていないだろうか。

開 催 日 
議   題
注   意

『開』と『催』と『日』の間に全角スペースを1つづつ、また『議』と『題』の間に全角スペースを2つ入れている。『注』と『意』も同様だ。この場合は、『議題』と『注意』が次のように読み上げられる。

「議題」は「ぎだい」、「注意」は「ちゅうい」と読まれたが「開催日」は「ひらくさいひ」になってしまった。文字間にスペースは入れないこと。また文書作成ソフトであれば均等割り付け機能がついているので、体裁を整えるならばその機能を使おう。

見出しに「スクリーンリーダーは人とは違う」と書いた。当たり前だけど、いざウェブサイトを作っているときはそういったことを忘れてしまうものだ。ウェブサイトから情報を得ている人の中には、スクリーンリーダーを使ってい人もいるんだなとちょっと思い出してみると、ウェブアクセシビリティ対応に一歩近づいたことになる。

もし機会があれば、スクリーンリーダー等の音声読み上げ機能でご自分のウェブサイトがマシンリーダブルなのか試してみてはいかがだろうか。思いがけない『発見』もあるかも知れない。

なお、文中で使用した音声は無料スクリーンリーダーNVDAを使用している。スクリーンリーダーによっては若干癖のようなものがあり、例えば最後の「単語の間にスペースを入れて見た目をそろえる」場合、あるソフトでは単語としてとらえられても別のソフトでは単語にならない、といったこともある。(なので、スペースで見た目を揃えるのはやめましょう)

(了)

ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド ダニーデン ©moya

最後までご覧いただきありがとうございます! 現在放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究中。noteはそのメモを兼ねてます。ヘッダー写真はnzで私が撮影しました。 【ご寄付のお願い】有料noteの売上やサポートはnzクライストチャーチ地震の復興支援に使わせて頂いております。