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スキップリンクの実装状況

以前は必要と思われた技術やツールが、経年それを補う手立てが出現するなどし存在意義が薄れるというのは、ままあることだ。特にインターネット周辺技術は移ろいが早く、関わっている私としては振り返るとずっと何かしら学んでいる状態になっている。この先も同様だろう。(好きじゃないとやっていられないと思うこともある‥)
この状態、私だけではない。先日もこのようなツイートが目に留まった。

さてさて、本日はスキップリンクの実装状況について。

ブロックスキップとスキップリンクとは

WCAG 2.0の達成基準に2.4.1「ブロックスキップ」がある。

2.4.1 ブロックスキップ: 複数のウェブページ上で繰り返されているコンテンツのブロックをスキップするメカニズムが利用できる。 (レベル A)

ウェブサイトには、ページが変わってもヘッダーやグローバルナビなど、そのウェブサイトの中で繰り返し出現する部分がある。
次の画像は、首相官邸トップページと首相官邸記者会見ページだが、上部(ヘッダーとグローバルナビ)が共通している。

例えば音声読み上げソフトでこのウェブサイトを見ている時、ページを移動する都度同じ内容のものを頭から読み上げる必要はない。本当に知りたい情報まで、毎回毎回同じ内容を聞く必要はないだろう。そこで、利用者が任意で操作することでその部分を飛ばし、本文などメインのコンテンツ部分に移動できる(=ブロックスキップ)ようにしておくということが、この達成基準で言っていることだ。

(なおこの達成基準 2.4.1 の具体的なメリットについて等は、WAICの解説書をご参照ください)

ブロックスキップを達成する手立ての1つとして「スキップリンク」という方法がある。このスキップリンクについての必要性について、予てから不要であろうという意見が出ているのだけれども、現行のJIS X 8341-3ではレベル Aであるがゆえに、公共機関のウェブサイトでは達成基準に順ずる手段としてスキップリンクが用意されているものも多い。

なおこの必要性についてはJIS X 8341-3:2010 達成基準7.2.4.1の意見募集や、ウェブアクセシビリティ界隈の皆さん(例えば、知る人ぞ知るアクセシビリティおじさんやおにいさんたちとか)から既に十二分に意見が出ているので、そちらをご参考頂きたい。

2013年4月22日「JIS X 8341-3:2010 達成基準7.2.4.1を満たす条件に関する意見募集の結果について」(WAIC) 
【質問】スキップリンクは絶対に必要なの?【回答】もはや必要ないのかもしれません。(エー イレブン ワイ)

ウェブサイトを取り巻く環境の中での変化もあり、スキップリンクについての議論はあるものの、今日はスキップリンクの実装状況をまとめてみたのでそれについてお知らせしたい。

なお調査対象等は、以前記事にしたウェブサイト上でみられる文字拡縮や読み上げツールについての調査(1)と同じなのだが、改めて記すと次の通りとなる。

対象とした府省庁

首相官邸のウェブサイトと当該サイト内の「国の政策(政策情報ポータル)」ページに掲載されている府省庁のサイト 46サイトから、以下の条件に適合したもの。

・独自ドメインであること
・または独自ドメインの配下もしくはサブドメインであってもデザインが異なるもの

結果、44サイトを調査対象とした。

確認したページ

対象とした府省庁のトップページ

確認方法

目視による

調査日

2018年6月9日、2018年6月20日

調査環境

OS Windows10
ブラウザ Google chrome(バージョン: 67.0.3396.79)

調査結果

スキップリンクあり‥30サイト
スキップリンクなし、または確認できず‥14サイト

なお、スキップリンクがあるウェブサイトの中で幾つかさらにタイプが分かれた。大きく分けて、常時表示させているタイプと隠してあり何かトリガーを機に表示されるタイプだ。

「本文へ」のように常時表示
‥18サイト

Tabキーをクリックで「スキップリンク」が表示される
‥10サイト

Tabキーでアンカーが置かれているカテゴリーに移動
‥2サイト
※見た目の表示とは別に、音声読み上げで聞くとアンカーが置かれているコンテンツ部分がある。

まとめに代えて

スキップリンクがあるウェブサイトのうち、「常時表示」と「隠しておいてトリガーに反応して表示」があった。記憶があいまいなのだが後者のほうが比較的早い段階でスキップリンクを取り入れ、常時表示はその後にリニューアルなどを迎えてスキップリンクをウェブサイトに設けた省庁だったのではないかと推察する。

なお、スキップリンクの存在そのものについては、必ずしも要るものではないんだろうなぁと思いつつ、実務面で考えるとあちらの事情もこちらの事情も判るだけに、どう書こうか考えたけど自分の中でも結論出ずじまいという‥。歯切れの悪い終わり方ですが、本日はこれにて。

(了)

ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド フランツジョセフ氷河のヘリハイク

最後までご覧いただきありがとうございます! 現在放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究中。noteはそのメモを兼ねてます。ヘッダー写真はnzで私が撮影しました。 【ご寄付のお願い】有料noteの売上やサポートはnzクライストチャーチ地震の復興支援に使わせて頂いております。