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JAL 国際線ビジネスクラス

 JAL Business Class (April 2016)

今回は、JALの欧米路線に投入されているビジネスクラス(B777仕様)について記そうと思います。
ご存知のように一度破綻したJALは、コストを切り詰め復活してきました。しかしコスト面から機内設備の更新ができずが古くなっており、これを嫌う顧客が他社に流れていました。ついに黒字化を果たしたJALは、2013年に念願の機内リニューアルを開始します。そしてお目見えしたのが、今回紹介するサービスです。どんなサービスになったのかを詳しく解説して行きたいと思います。

ラウンジ
ラウンジのアプローチはANAなどの他社と同じです。チェックイン後、プライオリティー会員は、特別なルートを通りセキュリティーを通過します。空港が混雑していても、その列に並ばず出国ゲートに行けるので時間の短縮になります。出国ゲートで自動ゲートを使えるよう登録しておくと、かなりスピーディーにラウンジまでたどり着けます。
ラウンジは、JALらしくとても広いです。ただ結構込んでいます。これはマイルを使ったりJALカード保有者等が利用できるよう緩和措置をとっているためだと思われますが、込んでいて座れないということはありません。ANAラウンジはうどん・そばが好評ですが、JALはもっと充実していました。ホテルの朝食バイキングのようなコーナーがあり、自由に食べる事ができます。その他ドリンク、酒類も豊富に揃っています。ここまで充実していると機内食はいらないのではないかと思う程です。早めに空港に着いてラウンジで食事をしてしまうと機内食を食べられなくなりますので、機内食を楽しみにしている方はほどほどにしておくのが良いでしょう。

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シート
ビジネスクラスのシートは、2013年、様々な賞を受賞し高い評価を得ました。
JALは、2-3-2のスタッガード式を採用しました。ANAビジネス(1-2-1)よりも席数を多くでき、利用客の使用感をほぼ同じにしたという巧く考えた構造です。
しかし注意すべき点があります。JALビジネスクラスのシートは、どこに座っても同じというわけではないのです。シートは3つの種類に分かれます。このシートにはそれぞれ異なったメリットとデメリットがあります。では、このあたりを詳しく記して行きましょう。

JALビジネスクラスには、次の3種のシートがあります。
1)通路側のシート(C, D, G, K)
2)窓側シート(A, H)
3)真中のシート(E)

通常のエアラインなら左右線対称の違いはあれど、同一のシートサービスが展開されています。しかしJALは不思議なシート配列となっています。もし初めてJALビジネスに搭乗する方がいらっしゃったら、是非事前の研究をお勧めします。席により快適度が異なりますので、乗る前のシート指定が重要になってきます。

1)通路側のシート
席番で言うとC,D,G,Kとなります。一番数がおおいシートです。このシートのメリットは、通路に出やすいこと、そしてサイドに小さいながらテーブルが付いている事です。上記の写真がこのタイプです。ANAのビジネスシートにあるものよりは遥かに小さなテーブルですが、これが大活躍します。食事中ここに読んでいる本やiPADを置いたりできますし、本を読んだりPCを使う時はコーヒー等飲み物を置いたりできます。狭い空間を効率的に使う事ができるので、JALビジネスクラスではこの通路側の席が人気です。デメリットは、通路側の壁が大きくあいているので、プライベート感がなくなり、通路を通る人からよく見える事です。
2)窓側のシート
席番で言うとA、Hとなります。このシートの最大のメリットは窓がある事です。1席で3個の窓を独占できます。窓外を見たい方はこの席しか選択できません。以前の機材より窓側の席数が大幅に減っているので、この席を確保するためには早めの予約と座席指定をお勧めします。そして、通路に直接アクセスできるのですが、適度に個室感覚があるのも良いところです。通路に直接面していない分、他のお客さんや乗員から一定の距離を置けるのがメリットです。残念なのは、通路側シートにある小さなテーブルがないことです。このテーブルがないことによる面倒から避けて通る事ができません。
3)真中のシート
席番でいうとEにあたります。このシートのメリットは、真ん中にあるという事で左右に壁があり、プライベート感を楽しめます。ただANAビジネスのように開放感があるわけではないので閉所恐怖症の方にはお勧めできません。実際に座ってみると幅が狭くかなりの圧迫感があります。特に狭いところは気にならない私でも10時間を超えるフライトでは息苦しくなりました。そしてモニターまでの距離があり、他の席よりも映像が遠いのもマイナスポイントです。テーブルが無く、飲み物等はモニター前のテーブル(かなりの距離があります)に置くか、いちいち食事の時のテーブルを出さないといけません。一番辛いのは、通路に出る時の狭い隙間です。ワイドボディ機の場合、機内に2つの通路があります。そのどちらにもアプローチできるのですが、太っている人だと挟まってしまうと思えるくらい狭いのです。このあたり改善してほしいものです。フライトアテンダントも通常は各通路が持ち場となり、通路に並んでいるシートのお客さんにサービスを提供するのですが、E席は両方の通路に面しているため、2人の乗務員から同じ事を聞かれます。「お食事はいかがしましょうか?」「通関書類はお持ちですか?」「免税品はいかがですか?」といちいち2度聞かれるはめになります。
この席についてもうひとつ重要な点があります。狭い左右の壁は、自動で開閉できるシステムになっています。航空機が空港でタキシング中、離着陸中は、この壁を開けておかなければなりません。隣が知人や家族なら何の問題もないですし、新婚旅行ならばむしろずっと開けておきたいのですが、知らないお客さんだと、すぐ隣に知らない方が座っているという状態になります。これは結構嫌なものです。勿論お互いが見ているテレビ番組や読んでいる本がよくわかってしまう程、隣の人との距離は近いのです。たった数センチの壁があれば気にならないのですが、離着陸の場合はこの苦痛が伴います。
総じて、JALビジネスクラスに乗る時は、このEのシートはお勧めできません。

シート全体を通してテーブルの位置が悪く食事やPCを使うのに不向きです。どのテーブルも自分とは反対側に傾いていてとても使いづらいのです。そしてどのシートも幅が狭いので圧迫感があります。通路や窓等心理的に広く感じる場所と隣接していればいいのですがE席は本当に息が詰まります。ANAのビジネスシートのような開放感がないことが最大のマイナスポイントです。

エアウィーブ
JALは、エアウィーブと共同開発したベッドマットを搭載しました。ヴァージンアトランティックは乗務員がベッドメイキングをしてくれますが、JALは自分で行います。エアウィーブのマットは上部収納棚に入っています。不規則なシート配列のため、どのマットが自分のものなのかわかりにくく、隣のシートの殿方と無言の取り合いとなります。もっとわかりやすく自分のマットをゲットできるようにならないものでしょうか。数はきっちり搭載されているので自分のマットがないということは起こりませんが、この争奪戦がちょっと面倒です。マット自体は、これそんなにいいものなの?と思う程たいしたことないです。ただのマットです。なくても問題ありません。

機内エンターテイメント
MAGIC Vというシステムと大型モニターで楽しめます。手元のスマートフォンのような端末を使って操作します。
私は機内で映画を見るのが嫌いでした。理由は画面が小さいからです。映画はスクリーンで見るように作られていますので、小さな画面では制作者の意図が伝わりません。家庭では、せめて50インチ程度のモニターで見たいと常々思っていました。なので機内ではいつもテレビ番組や情報番組を見るようにしていました。しかしJAL新ビジネスクラスには23インチの大型スクリーンが備え付けられています。その大きさは正面がモニター画面で埋まってしまう程の大きさなのです。これなら映画を見てみようと思える大きさです。実際に映画を見てみると、まるで小さな映画館の最後列に座っているような感覚になるほど気持ちよく鑑賞できます。個人的には初めて機内で映画を見ようと思える機材だと感心しました。
是非、この素晴らしいシステムを利用して映画を見てほしいのですが、残念ながら作品数が少ないのです。他社は作品の数に力を入れており旧作から新作まで取り揃えています。さらに劇場で公開中のシリーズ映画の旧作や、シリーズ物を全作取り揃えるなど映画ファンに喜ばれるラインナップがあるのですが、JALにはありません。話題の中途半端な作品が揃っています。ドラマも少なく情報番組も数本しかありません。番組ラインナップに関してはANAの勝ちです。JALの番組選定担当者はあまり映画やドラマに興味が無いのでしょう。このあたり客の目線に立って頑張ってほしいです。
そして、どういうわけかニュースが見られません。ホーム画面にはニュースというアイコンがあるのですが私が搭乗した6回共に一度もニュースが提供されていませんでした。これは旧機材では提供されていたサービスなので是非復活してほしいです。

機内wifi
JALの国際線で777を使っている路線ではwifiが使えます。15年程前もwifiが使えましたが、当時はまだwifi搭載機器が少なく利用者がいなくて廃止されてしまいました。現在のwifiサービスは、使うとなかなか便利です。
利用は有料となります。1時間11.95ドルか24時間21.95ドルです。カード決済なのですが、これがかなり複雑です。私の場合JALカードだと価格が安いという事で何度かトライしたのですが認識されませんでした。結局ANAカードが通り無事開通。おそらく料金を支払う段階でかなりの数の方が脱落すると思います。それほど複雑なシステムになっています。これは早急の改善が必要です。
ネットに接続するとネットサーフィンやメールの送受信等ができるようになります。ただし音声通話は禁止されています。接続速度はかなり遅いです。調べてみると1機に1回線、乗客全員で492kbpsを共有しています。YouTubeなどの動画はスムースに再生できません。すぐに止まってしまうので一度ダウンロードしてから見るようにするしかありません。長時間の動画を見るのはほぼ不可能です。
最大のマイナスポイントは、途中で使えなくなる事です。アメリカ路線の場合、カナダ上空で数時間使えませんでした。ヨーロッパ戦の場合はロシア上空で数時間使えませんでした。使えない場所は毎回変わるので地理的な事ではないと思いますが、毎回使えない時間がある事は事実です。

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食事
どの便も、搭乗した直後の食事は、今まで通り和食や洋食などを選びます。その後の食事は、ヴァージン航空のフリーダム・ミールのようにメニューから自由に食事や飲み物をリクエストします。このシステム、なかなか優秀です。
手元の端末MAGIC Vは、スマートフォンのように高機能になっています。ボタンは最小限で、大きな画面をタッチして操作します。ホーム画面に「お食事・お飲物」というアイコンがあるので、ここをタッチすると様々なメニューが写真付きで表示されます。あとは自分が欲しいものを選び、最後にカートにいれ「注文する」を押せば、席に持ってきてくれます。注文の仕方は簡単です。複数注文することもできます。好きなものを選んでカートにいれ最後に注文ボタンを押すだけです。例えば、カレーとコーヒーとアイスが同時に欲しい場合は、3つのアイテムを選び注文します。おにぎりと牛丼を同時に頼む事も可能です。この食事を自由に注文できるサービスはANAもトライしましたが、CAが大混乱しサービス中止に追い込まれてしまいました。JALは、メニューをうまく開発し搭乗員の負担を減らしつつ見事にサービスを提供しています。到着90分前まで自由にオーダーできるサービスは、JALビジネスクラスに乗る一番のモチベーションになるはずです。
食事の味ですが、日本出発便はなかなかのものです。頑張って美味しい食事を提供してくれます。自由にオーダーするメニューもお好み焼きやラーメン等頑張っています。それぞれ量が程よく女性にも嬉しいですし、おなかがすいている人は2品、3品と違った味が楽しめるのも魅力です。帰国便は、出発地で作られているので味は微妙です。特にアメリカ発のミールはもう少し頑張ってほしいです。帰国便でも端末からオーダーする一品メニューは、頑張っています。スープ、牛丼、カレー等が美味しいですが売れ行きが良く、かなりの品がなくなって行きますので、食べたい品がある場合は早めのオーダーをお勧めします。

トイレ
ボーイング777、787の場合、トイレにはウォシュレットが付いています。トイレ自体は快適ですが、数が少なく狭いです。飛行を通してトイレには行列ができています。そして入ると狭く動きづらいです。このあたりはスペースをもう少し広く取るべきだと思います。

アメニティ
耳栓、歯ブラシ、マスク等を配ってくれますが、最低限のものです。ANAの場合はかなり充実したケースをくれますがJALは、そのようなサービスは行なっていませんでした。

その他
機内にはバーコーナーがないです。端末でなんでもオーダーできるので必要ないということでしょうが、ちょっと立ち寄って自由に飲み物やアメニティーを入手できたらいいなあと思う事があります。

サービス
寝ているのに何回も起こされることに閉口します。食事を注文していないのに、食事を持ってきて起こされるという事がよくあります。おそらく座席番号を間違っているのだと思いますが、これは本当に不愉快です。ANAのようにDo Not Disturbボタンがあればいいのにと何度も思いました。
機内の温度は26度に設定しているそうなのですが、何故か汗ばみます。何度乗っても乗客の皆さんはTシャツでこの熱さを凌いでいるので、私個人の問題ではないでしょう。機械の数値に頼るのではなくもう少し臨機応変にお願いしたいものです。以前ANAのパイロットにお話を伺ったとき、食事が終わり睡眠時間になると機内の温度を2度下げると言っていました。人は温度が下がると睡眠に入りやすいそうで、皆さんスヤスヤと眠りにつくのだそうです。こういう気配りが必要ですね。
JALは、フライト・アテンダントは費用面で安い外国人を積極的に採用しています。これについては何の問題もありません。皆さん日本語を良く勉強していて感心します。このような国際化は大歓迎です。しかし教育が行き届いていません。例えば箸がある方を手前に置くのが日本人としては普通ですが、箸が反対側になったままテーブルセッティングしてしまったり、コーヒーがカップからこぼれているのに、そのまま置いて行くなど、日本人ならではのきめ細やかさに欠きます。通路にゴミが落ちていても乗務員は気にしません。このあたりは、育った環境が違うので、きちんと教育しなければいけないのですが、どうもそんなことはわかっているでしょうという日本人乗務員の態度を感じます。日本人でも海外に行くと礼儀が違っていて戸惑う事があります。せっかく外国人を採用しているのですから、日本の素晴らしさをきちんと教えて皆さん立派な乗務員になってほしいものです。

JAL欧米線のビジネスクラス。総じて頑張っています。特にミールサービスは素晴らしいです。wifiも使える事は良い事ですし、乗務員の皆さんも一生懸命仕事をしています。残念な部分は、改善を重ねれば克服できる事がほとんどですので、しばらく状況を見守りましょう。残念なのはシートの幅が狭い事です。これは今から改善するのは無理なので、心して乗ってください。
個人的な感想は、現状ではANAビジネスクラスが優れています。しかし、今後の努力でANAを超えるポテンシャルがあるのではないかと思います。


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