童話「とぶひよこ」
お日さまがまぶしい、とってもきもちのいい朝。
一わのひよこが、ぴかぴかのランドセルをせおって歩いています。
名まえは、“ひなた”。
今日からぴょー学校にかようひなたは、うれしくてしょうがありません。
だってぴょー学校に行けば、いろんな友だちに会えるから。
ひなたがよこを見ると、知らないひよこが歩いています。
ひなたが早足で歩き出すと、知らないひよこも早足で歩き出します。
ひなたがかけ出すと、知らないひよこもかけ出します。
ひなたが思い切り走ると、知らないひよこも思い切り走ります!
”はぁ、はぁっ、ぼく、ひなた”
”はぁ、はぁっ、ぼく、ゆうま”
ぴょー学校についたひなたとゆうまは、さっそく友だちになりました。
ひなたとゆうまが教室に入っていくと、頭に赤いリボンをつけた女の子の
ひよこがいました。
“わたしは、さくら、よろしくね!”
ひなたとゆうまは、その女の子、さくらちゃんのあまりのかわいさに、
ポーッとしてしまいました。
ひなたは、さくらちゃんの前で、とくいの鉄棒を何回も回ってみせます。
ゆうまは、さくらちゃんの横で、とくいの算数を教えてあげます。
二わは、なんとかさくらちゃんの気を引こうとがんばりました。
音楽の時間に、さくらちゃんが歌を歌いました。
“わたしはそんな春がすき~♪”
さくらちゃんのあまりにかわいい歌声に、ひなたとゆうまは感動して
泣きそうになりました。
ぴょー学校の帰り、ひなたとゆうまはさくらちゃんに言いました。
「ぼくと、つきあってください」
さくらちゃんは、二わを見て、かわいい声で言いました。
「わたしのことを、いちばん思ってくれたら、つきあうわ」
日よう日、ひなたは町がみわたせる公園の高台のところへ、
ゆうまをよびだしました。
「さくらちゃんのことを、どっちがいちばん思っているか、
はっきりさせよう!」
ひなたに言われたゆうまが返します。
「いいよ、ここで決めようじゃないか!」
「じゃあ、木のぼりで勝負だ」
「いや、なぞなぞで勝負だ」
「木のぼり!」
「なぞなぞ!」
その時、下の方から犬の鳴き声が聞こえてきました。
「ワン!」
二わが下の公園を見ると、そこにさくらちゃんがいて、その前にはなんと、
大きなブルドッグが、さくらちゃんをにらんでいます!
「たいへんだ!さくらちゃんを助けなきゃ!」
「よし!でも、どうやって?」
「どうやってって・・・、とにかくここからとんで、
さくらちゃんのところへ!」
「ここからとんで!? ぼくたちまだひよこで、空はとべない・・・」
「そんなことより、いまはさくらちゃんを助けなくちゃ!いくぞーッ!」
ひなたがいきなり、高台から青い空にとびだしました!
「しょうがないな、ええいっ!」
つづいてゆうまもとびだしました!
二わとも、ちっちゃなはねを、おもいっきりばたつかせて・・・!
高台のすぐ下、公園の草むらにひっくりかえっているひなたとゆうまを、
さくらちゃんと、ブルドッグがのぞきました。
「ひなたくんとゆうまくん、ここで何やってるの?」
二わが気がついて、とびおきました。
「いや、あの・・・」
「紹介するわ、こちらとっても仲良しのブルさん!」
「さくらちゃんの友だちかい?こんにちは!」
「こ、こんにちは!」
ひなたとゆうまは高台を見上げ、笑いました。
とべないはずの二わのひよこは、今、いっしょに空をとんだのです。
いちばんの思いと、せいいっぱいのゆうきで――。
(おわり)
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