待ち焦がれていた幸せな日常
IKEBUKURO LIVING LOOP 2020 の記録─第1話─
まちに流れるアコーディオンの音に頬を涙がつたう。子供たちのスキップ。そう、このシーンをずっと夢みてきた。湧き上がる心。この瞬間を心の底で待っていたことを思い出した。
新しい日常を育もう
池袋の街に黄色のさし色。駅も、百貨店も、飲食店も、カフェも、本屋も、池袋界隈の場所に関わる皆さんがポスターやデジタルサイネージや懸垂幕で池袋リビングループのビジュアルを伝えてくれた1ヶ月。大袈裟に言えば、オール池袋で共同声明を発信して迎えた2020年10月31日。
正直、不安でいっぱいだった。
当日の設営中に雨がパラついたときは心もざわついた。誰もこなかったらどうしよう。
設営してくれるキャスト、続々と集まってきてくれた出店者と挨拶を交わすたびに少しずつ灯りはじめる希望。
世界中が不安と閉塞感に支配された2020年。それでも未来はやってくる。ならばせめて。
中止の一択、ゼロイチではなく、今だからできるやり方で、ずっと我慢してきたワクワクと、お互いへの思い遣りをもちよって、新しい日常を育みたい。
都電テーブルというお店をこの街で仲間と営んでいる。正直半年前の苦しさはあまり思い出したくない。でも、あのときから本当のチームになれた気もする。それぞれのチームの分だけきっとドラマがたくさんあったはずだ。そんな皆さんの笑顔を増やすきっかけになれたら。そんな想いを胸に迎えた16時半のスタート。グリーン大通りの入り口で奏でられ始めたアコーディオンの優しい音色があっという間に胸を満たしてくれた。
これだ。これを待っていたんだ。
コロナ禍のラッシュアワーを避けるべく帰宅を急ぐ皆さんの足が少しだけ緩やかになったような。
次第に立ち止まりはじめる人々。マスクをしていても優しい表情をしているのが伝わったくる。みんな心の余白を求めていた。
この日はわすが4時間のナイトマーケット。いつもより間隔をあけて並べられたTINY STANDに鈴なりの照明が灯った瞬間。
なんだか滲んでダイヤモンドみたいに見えた。
温かな気持ちを掻き消すよう吹き荒れる北風。ディスプレイを何度も直す出店者。大丈夫?の声には元気に大丈夫!と返してくれて。出店者の皆さんもこの時を待ちわびていたことが伝わってきて、それが本当に嬉しかった。
どんなに寒くても飲みたくなる、温かなディスプレイ。出店者の皆さんが魅せてくれる豊かなシーンが眉間のしわを伸ばしてくれたます。
店長のみひろが言うんです。なめてました、ボス。こんな人が来るはずないって。売り切れてしまいました。すいません。
都電テーブルのおでんと熱燗は寒さも手伝ってあっという間に売り切れ。
あしたはもっと仕込めよと伝え、他の出店者に挨拶をすると、聞こえてくるのは同じような嬉しい悲鳴。
なにかが違う?なにかが変わった?そんなことを感じさせてくれた初日。
こんなことなら自分で食べるんじゃなかった。笑
買いにきてくれた皆さんごめんなさい。
それにしても笑顔がたくさんみれて嬉しかった。
この日一番嬉しかったシーン。
「グリーン大通りは飲食店街になるって聞いたんだよ。だからずっとここで一人ぽっちになってもやってきたの」
グリーン大通りで孤軍奮闘する、もつ鍋帝王の二号店の店主がそう教えてくれたのは僕らの活動がはじまって一年くらい経った頃。
「いつもありがとうな。最高だよ」
店先の客席で、この街に増え始めた小さいお子さん連れのファミリーを接客しながら、優しい眼差しで語りかけてくれた。
15時間近くずっと酷使してきた脹脛はパンパンだったけど、おかげで帰りの足は軽やかに。
まちが喜んでいる。
優しさがいつもより溢れてた。
あしたもまちを喜ばそう。
(続く)
後半戦は11/20から11/24。
池袋の街でお待ちしています。
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