寺地はるなさん『水を縫う』を巡って
(1)更新されてく言葉たち
新しい物語との出会いは新しい言葉との出会いでもある。今回、読書仲間の方から教えて頂いた寺地はるなさんの『水を縫う』があまりに良くて、今こうして文章を書きはじめている。
男子高校生の「清澄」がこれから結婚する姉「水青/みお」のためにウェディングドレスを縫う。ただそれだけの物語。そこにはドラマティックな展開も壮大な謎解きも無い。ここにあるのは日常だ。清澄、水青、さつ子、文枝、全、そして黒田を中心としたキャラクターたちの日常。朝の気怠さや登下校の景色