見出し画像

【蒼雑記】満を持してラブデスターの話をしよう

ラブデスター、それは至高のWeb漫画

きみは『ラブデスター』を知っているか?

少年ジャンプ系漫画配信サイト「ジャンプ+」の創刊初期ごろ(だったはずだ、多分……)から連載を始め、色々あって(後述)2018年4月、ついに完結した名作だ。

作者は榊健滋先生だ。「誰だそれは?」と思った君も安心してくれ。その辺の解説もするつもりだから、とりあえずこの水でも飲んで待っていてほしい(ペットボトルの水を差しだす)。

ラブデスター、それは__漫画。

肝心のジャンルだが…えーと…第一話は「劇場型デスゲーム開幕!」って書いてあるので…劇場型デスゲーム漫画なんだろうけど…。

(ジウ(青いやつ)がまだ天パ気味だった1話。だんだんサラサラになる)

とはいえ「告白成立せねば爆死!」「一定期間以内にキス(もちろん口と口でだ)しなければ爆死!」「特殊ルール:お見合い」とかやるくらいなので恋愛漫画…でもある。男女の愛に限らず、いろいろな形の(美醜善悪問わない)「愛」が登場するのがポイントだ。そういう意味では恋愛漫画っていうか愛漫画なのだ。

さらに言えばその描写、筆致は恐ろしいものがありホラー漫画と呼んでもいい。怖いんだよな、あいつの固有結界…。

あるいは新撰組を描いた幕末譚であり、はたまたノーベル賞受賞者の半生を描いた伝記でもある。ノーベル賞の教授の半生は今度映画化もする。

作者本人は「ゾンビやサメ映画を見る感じで見てください。(中略)この漫画では死は笑い」とまでツイートしている。そんなこと言ってるから「サメ映画漫画」なんてトンチキニックネームで呼ばれるんですよ先生!

死は笑いだけど笑えない(感涙の)死に様もあるからごあんしんだ。

結局のところ、きみが思ったジャンルがラブデスターのジャンルなのだ。(だから読んで確かめろ)

ラブデスター、それは「愛」

冒頭のリンクから1話をチェックした君ならご存知だが、ラブデスターは主題が「愛」である。

真実の愛を告白できなければ即ち「死」!!少年少女たちは今、出口なき実験の被験者として凄絶なる試練に立ち向かう…!!
(公式ページより引用)

もう少し具体的に紹介するとルールは以下の通り。

・男女70人ずつが対象である(月代中学校3年生のことだ)(後で増える)
・タイムリミットは1ヵ月
・男女どちらからでも「告白」を行える。(男女ペアでないといけない)
・告白によって男女双方が想い合う「真実の愛」を観測できたとき、二人は実験から無事解放される。
・告白者、被告白者のどちらかでも「100%の愛」でない場合、告白者は爆死。遺体すら残らない血だまりになる。(例外有:BMPのBM)
試験官(ファウスト)の匙加減で追加・変更ルールが発生する。(これが本当に面倒なんだ)

デスゲームに恋愛要素をくっつけたのか、恋愛要素にデスゲームをくっつけたのかよくわからんルールだが、要するにカップル成立を目指そう!ということである。

で、メインキャラは以下。

・重すぎるトラウマから恋愛嫌いの生徒会長(男)。恋愛以外の解放方法を模索する。先述の赤いの。
・↑が好きな幼馴染の少女。彼の恋愛嫌いを知っているので告白できない。鳴き声は「ウボァ!」。クラスはアーチャー。先述の黄色いの。
・↑が好きな幼馴染トリオの一角。文武両道眉目秀麗完璧超人副会長、モテすぎる女子殺し(爆死)。クラスはセイバー。先述の青いの。
・生徒会長が好きな男子(オネエ)。本作のメインヒロイン。
・実験で散った子の仇を取るため主催への復讐を誓うレディースの次期総長。恋愛なんてチャラついたモンしないよ!!
・特進コースの転校生の狂人。別名「出る漫画を間違えた男」「テンプレサイコパス」「デスゲーム怪人」。耳掃除道具を持ち歩いている。

……どいつもこいつも恋愛が出来ねぇ!!!(追加されるメンバーもだいたいこんな「事情持ち」で、そう易々とは帰れない)
そんな集団なので、「だけど友情(友愛)や恋愛に目覚めていくんだ…」とホッコリしたり、逆に「極限においても自分を曲げない」ところが輝いたりするんだよね……。

恋愛友愛の他にも、およそ人類が紡ぎ得る全ての「愛のカタチ」が描かれるのでお勧め。――それは美しいとは限らないのだけれど。

ラブデスター、それは「愚」

例に漏れずゲーム主催者側の主張が「人類は愚か…」なラブデスターなんですけど、普通読者が「人類は愚かじゃない!極限状態を作ったお前が悪い!!」って言うところで、ラブデスター読者は「はい…人類は愚かです……」って言わざるを得ないほどの愚かを魅せ付けられることになる。人類は8割がた愚かなので滅ぼしてください。

それは愛ゆえにだったり、ただの愚か者だったり、性根の腐った大人だったり、ねじ曲がったプライドや功名心だったり、根性の歪んだ大人だったり、土手を滑り落ちるデブだったり……。愛と同じく、残念ながら愚かさもまたあらゆる角度から投げつけられます。絶望と笑いで息が出来ねぇ。

その愚かさはモブをして「愚かモブ」、各章ボスは「ラブデスター怪人」と呼ばれる狂気の宴。僕は詳しく説明できる自信がない。ので参考文献を以下に挙げておこう。

この人は丁寧な紹介記事も書いてるので合わせて読んでね。

とにかく愚かな中学生&主催者が「俺がルールだ!」「わたしが生き残る!」「試験官に歯向かうのか?被験体を爆死処分だ」と目まぐるしいフール・ジェットコースターを繰り広げます。サメが2秒後に海水浴客になって別のサメに食われるサメ映画、流石に観たことないでしょ?僕もないです。でも僕はラブデスターを読んだことがあります。

榊健滋先生、それは狂気の作家

”狂気を描くこと”に長けた作家という意味でもあり、「こいつあたまおかしい…」という意味でもあります。

読めばわかります。気の狂い方、ホラー描写は絶望的な筆致で、登場人物(ていうかジウ)を襲う理不尽は悲劇と呼んでまだ生ぬるく、そこに持ち込むまでは多彩なガバ、論理の穴、無茶無理無法を押し通し、だけど僕らは告白成立で泣かされるんです。恐ろしいまでの作劇能力によって!どんな脳みそしてんだ!?

ちなみに女性で、「もうちょっと右だったらストライク!!」や「フードファイタータベル」でお馴染みうすた京介先生の奥さんだったりする。女性作家だからどうこう言う気はないですが、ご本人たちが公表してるし一応付記しておきましょうねの気持ち。
しかし育児&第二子身籠ってあの最終章を描き切るってどんなメンタル視点だ!?母は強いな……。

ラブデスター、それは参加体験型エンタテイメント

Twitterで感想を漁ったりするととても楽しい。それもまたラブデスターの楽しみ方の一つだ。

特にこの3ヵ月とすこしは毎日復刻連載だったため毎晩毎朝感想を漁るのが楽しかった。

「えっ、じゃあ乗り遅れた俺は楽しくない!?」いいやそんなことはないさ。

なんと有志がまとめた感想ツイートまとめがある。
(これは復刻版だけど、リアルタイム版も探したらあるかもしれない)

今回の毎日復刻のお陰もあってTwitter上には頭のおかし…感性の鋭い読者が活発に感想発信する土壌が出来上がっている。そして彼らはお互いの感想を、そして君の感想を待っている。まだ遅くない。飛び込んでみよう。

ラブデスターと僕

少しだけ個人的な話をする。

僕は榊健滋先生の前作、エニグマを本誌連載で読んで以来、榊健滋先生を「恐れて」いた。

何故って?あまりにもホラー描写が強く(ぼくはホラーが苦手だ)、そしてあまりにもガバガバだからだ。

余りにもガバガバだった。異能×サスペンス×デスゲームのエニグマは、異能のアイディアはキレキレだった。三次減算とか好きだった。だけど余りにもガバガバだったのだ。「え、そここうやって攻略すれば終わりじゃない?」が多すぎたのだ。あと一部年齢計算がひどかった(これは本当に読んで計算して確かめてほしい)。

だけど単行本は全部持ってるのだ。序盤の掴みが面白かったせいで…。

そんな狂人が性懲りもなくデスゲームで帰ってくると聞いたときは、そりゃ「えぇ…」と思ったものだった。…が、最初は付き合い義理人情で読んでたラブデスターが…気付けばなんか普通に楽しみになっていた。

正直に言えば別に毎週の楽しみとか、絶対的な盟主というわけでもなく、普通に面白いだけだったんだけどさ。

で、最終盤。117話中の110話くらい…その辺で…ケータイが壊れ、さらに心身が慌ただしくなって読めなくなってしまったのだ。残念な運の巡りだった、と諦めていた。

そこにこの「完結記念毎日復刻連載」である。いや~ありがたかった。おかげで1.5週目を楽しめた。一人一人の感情に寄り添ったり、逆に穿ったり俯瞰したり、3ヵ月を楽しく過ごせた。愚かに笑い、友情に燃え、超必殺技演出に拳を握り、幻影に恐怖し、愛に泣いた。感情は多彩であった。

一度見限っても、三度離れても、それでももう一度結ばれうるとは、良い時代だ。いい文明だ。

ラブデスター、初見では難しいところもあるけれど、しっかり読めばばっちり名作だ。唯一無二の宝石を、人生の来し方に置き去りにせずに済んだ。

ラブデスターをきっと忘れない。

最後に

感想文としても紹介文としても支離滅裂なこれに付き合ってくれてありがとう。

これを書き上げる今、8月15日の昼なのだが……申し訳ないが、あと2日ほどで無料公開が終わってしまう。序盤に時間をかけすぎた。

こうなってくれれば細かい心配をしなくて済むんだけど

全話読んでくれとは言わない。だが、せめて「最初のカップル成立」か「デブが坂で転んで死ぬ」か「主人公が幼馴染への好意に気付く」か「ベンゼン眼鏡ペラペラ之助」か「幕末新撰組編」まで読んでほしい。そうすれば君はもう止まれないはずだ。

止まれないと思ったら単行本を買ってくれ。ここで注意事項だが、なぜか4巻以降は電子書籍しかない。僕も物理書籍派なので葛藤しているが、この機に電書デビューするつもりだ。

ともあれ、君がラブデスターに触れ、”愚”と”愛”、”凪”と”嵐”を感じてくれることを願っている。


追伸

enigme【エニグマ】も読んで見てね。

Twitterとかマシュマロ(https://marshmallow-qa.com/A01takanash1)とかで感想頂けるだけでも嬉しいです。 サポートいただけるともっと・とってもうれしいです。