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#17 さるうさぎが生きる道
あの正体
お母さんが決心してそう時間がたっていないころ、山中家に一羽のお客さんが来た。
「だれだろう。」
と沙留卯(さるうさ)が言うと、お母さんはさぁ?という顔で、ドアを開けた。そして、そのお客さんを見てみると、それは、あの兎だった。
「あの、今日お話したいことがあるのですけど。」
それは、初めて素直に話してくれたような、優しくて、まろやかな声だった。二人(二羽?)は、その兎を家の中に入れた。そして、沙留卯は思い切って聞いてみた。
「あなた、誰なの?」
「ああ。私の名前、言ってませんでしたか?ごめんなさい。私は卯野 美奈絵(うさの みなえ)といいます。」
「よろしくお願いします。卯野さん」
お母さんが言った。
「何年生、そして何歳なの?」
「私は5年生です。歳は3歳ですけども。」
そして沙留卯は思わず、
「す、すごい。全部1回で合格してる。」
と言った。その時見せた笑顔は、あれ以来の久しぶりに楽しいということを物語っていた。そして、沙留卯はこんなことを聞いた。
「なんで、私の家に来たの?」
「そ、それは?」
「それは?」
お母さんと沙留卯が同時に聞いた。すると、いきなり気難しい顔になって、
「あなた達を責めてしまうけど、市長さんが言うこと、承るべきだと私、思うの。お母様が知っているとおり、うさぎにも良いところ、いっぱいある。ただ、結束が固いだけ。一度、結束の中に入れば、すっごい優しいから。」
と、必死に説得した。沙留卯は優しく声をかけた。
「あなたって、仲間が大好きなのね。」
「だい、あっ。」
と卯野さんは言った。
「何、何なの。」
と沙留卯がきくと、
「う、うん、何でもないの。それではこれで失礼します。今日は楽しかったです。」
と言って、家を出ていった。
「そ、そんな。あんまりだよ。また来てね。」
と沙留卯は叫んだ。
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