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考えすぎ歌詞考察『君と僕と洗濯物』

櫻坂46の2ndシングル『BAN』(2021)に収録されている、森田ひかるさんセンターの楽曲。ウキウキするようなメロディーにコミカルなダンスが特徴的なかわいらしい一曲です。
筆者は秋元康さんのことがあまり好きではないので少し穿った目で歌詞を見ているのですが、この曲はキモくなりそうでならない絶妙さが興味深いな〜と思って取り上げました。


論点

  • 登場人物の関係性

  • チューリップをめぐって

  • 洗濯物をめぐって

登場人物

僕(ぼく)(以後「僕」):本曲の主人公。
君(きみ)(以後「君」):主人公の部屋を訪ねてくる異性。

チューリップ
「君」はチューリップを手に「僕」の部屋を訪ねます。「僕」が部屋に花を飾るタイプの人物かどうかは後で考えるとして、「君」なりのメッセージがあって持ってきたという線で見ていきます。
チューリップの花言葉は花の色によって異なります。

  • 赤:愛の告白

  • ピンク:誠実な愛

  • 橙:照れ屋

  • 黄:報われぬ恋

  • 紫:不滅の愛

  • 緑:美しい目

  • 白:新しい愛、失恋

恋愛に関する花言葉が多いですね。黄色と白以外は良い意味を表しそうです。ちなみに、チューリップは本数によっても花言葉が変わるようです。

  • 1本:あなたが私の運命の人

  • 3本:あなたを愛しています

  • 4本:あなたを一生愛します

  • 6本:あなたに夢中

  • 8本:ひそかな愛

  • 9本:いつも一緒にいよう

  • 10本:あなたは完璧

  • 11本:最愛

  • 12本:恋人になってください

  • 13本:永遠の友情

  • 18本:誠意ある告白

  • 20本:まごころ

  • 108本:結婚してください etc.

チューリップの単価は1本200〜300円くらいなので、「君」がガーデニングを趣味としていない限りは10本以内を想定したいと思います。
赤やピンクのチューリップを3〜4本持ってきたのであれば、かなり「僕」への愛が強いように見えます。
「僕」のキャラクター的にはオレンジ色のチューリップもあり得ますし、白いチューリップを奮発して9本か12本プレゼントするのも有効ですね。

歌詞

真っ青に晴れた日曜日の午後
遊びに行くからなんてLINE来たけど
散らかってるから嫌だって言ったのに
チューリップ持って押しかけてきた
警戒心がまるでないの?
僕だって男だよ
そうさっきからドキドキしてる
君が干してくれた洗濯物
嬉しいけれど恥ずかしくて
もうそんなのいいよなんて
ちょっとぶっきらぼうに
言ってしまってごめん

初めてなんだ 異性来るなんて…
だから朝からずっと落ち着かなくて…
かと言って急に片付けちゃっても
誰か彼女がいるみたいだし
ドアを少し開けてるのは
下心はないって
わかって欲しかった 小心者
君が畳み始めた洗濯物
こんな時間が続けばいい
その周りをウロウロして
手持ち無沙汰のままで
なんだか 幸せだった

特別なデートするよりも
日常を君と過ごしたいよ
散らかってた僕の部屋が
見違えるように綺麗になって
僕たちは次に何しようか?

物干し竿の向こうから
黄昏色に染まっていく
今度はいつくるの?なんて
図々しいかな

君が干してくれた洗濯物
嬉しいけれど恥ずかしくて
もうそんなのいいよなんて
ちょっとぶっきらぼうに
言ってしまったけど
みんなに自慢したいよ

のっけから急展開ですね。まずは歌詞から分かった情報を整理します。

遊びに行くからなんてLINE来たけど

→舞台となったのは2010年代以降の日本、韓国、台湾、タイ、インドネシアのどこかでしょうね。「僕」と「君」はタメ口でやりとりしているようです。

僕だって男だよ

→「僕」は男性。

初めてなんだ 異性が来るなんて

→「君」は女性。

かと言って急に片付けちゃっても
誰か彼女がいるみたいだし

→「僕」は部屋を「君」に見られたことがありません。LINEで散らかっていると言ってしまった手前、片付けすぎて怪しまれないかを心配しています。「僕」は部屋の片付けを女性の仕事だと思っている節があるようです。

チューリップ持って押しかけてきた

→好きな人が自分に花をプレゼントしてくれています。それこそ曲の主題がチューリップになってもおかしくない出来事ですが、「僕」から見て「君」が花を持って来たことは自然と受け止められる行動のようです。

そして「僕」の部屋の間取りを想像します。

ドアを少し開けてるのは

→まさか玄関のドアを開けたままにはしないと思うので「僕」と「君」がいる部屋から玄関へ繋がるドアのことだと考えられます。

その周りをウロウロして

→洗濯物を畳むには1畳分ほどのスペースが必要です。「僕」がウロウロできるスペースがあるということは、ワンルームなら他に家具も置いてあることを考えて8畳、2K以上なら6畳くらいの部屋でしょうか。

物干し竿の向こうから
黄昏色に染まっていく

→「僕」と「君」がいる部屋はベランダに面しているようです。もし実家であれば「僕」の保護者はベランダに面した部屋を子どもに与えていたことになるので考えにくいです。「僕」は一人暮らしをしているのでしょう。


考察

「僕」から見た1日


 「君」とLINEをやりとりする
 「君」が来ることになり落ち着かない
午前
 片付けることを諦める
 ★1
午後
 「君」が訪ねてくる
 ドアを少し開けておく
 洗濯物を干す「君」にぶっきらぼうな態度を取る
 洗濯物を干し終わった「君」に、ぶっきらぼうな態度を取ったことを謝る
 ★2
 洗濯物を畳む「君」の周りをウロウロする
 ★2
 部屋が綺麗になる
 「君」と何かする
夕方
 「君」が次にいつ来るのかを気にする

「君」の1日


 「僕」にLINEする
午前
 ★3
午後
 「僕」の部屋を訪ねる
 ★4
 洗濯物を干す
 ★2
 洗濯物を畳む
 ★2
 部屋が綺麗になる
 「僕」と何かする
夕方
 帰り支度

なぜ洗濯物が出てきた?

朝からあたふたしていたと思われる「僕」。部屋には女性が来たこともないのに、さらに女っ気を隠そうとしています。
散らかっていない部屋を「散らかっている」と言うこともアピールになると思いますが、「僕」はなぜか部屋が綺麗=女性と思い込んでいるので、ありのままを見せることにしました。(片付け方を知らないだけでは?)

それにしても、さすがに付き合う前の好きな人が来るのであれば、ゴミ類や見られたくない物くらいは片付けるのではないでしょうか?だとすれば部屋に散らかっているのは、衣類や書籍類、「君」に知られている趣味の物等になる気がします。
「僕」は★1の間にやっておこうと、洗濯機は回しました。何せ、真っ青に晴れた洗濯日和です。そして干すことを忘れてしまいました。
そこへ「君」がやってきました。「君」が玄関のチャイムを鳴らしたとき、ちょうど洗濯機の方も洗濯の終わりを告げたのかもしれません。詳細は分かりませんが、★4のタイミングで「君」は「僕」が洗い終わった洗濯物を干しそびれていることを知ったのです。

もしそうでなければ、「君」が「僕」の散らかった衣類を集めて洗濯機に入れるところから洗濯が始まることになり、親っぽい印象が強くなります。

言わずもがなですが、「僕」は部屋に花を飾るタイプではなさそうです。

チューリップの意味

「君」が「僕」に花をプレゼントしたこと自体は特段驚かれていない点から、「君」は普段から花に造詣が深いと推理します。おそらく「君」は★3で、それなり考えた上でチューリップを見繕っているはずです。(たまたま花屋で見つけたから買ってきた、というのならそれはそれで微笑ましいですが。)
前提として、お互い意識しているであろう相手の家に半ば抜き打ちで遊びに来ている「君」です。「僕」との距離を縮めるつもりなのは間違いありません。そこで、わざわざチューリップを持ち込んだ意図を考えると、以下の3つのルートが派生します。(※注:筆者の妄想です)

【ルート1】愛の告白
この場合、「君」は赤かピンク、もしくは白のチューリップを選んだことでしょう。率直な恋心を「僕」に伝え、花を差し出します。チューリップの美しさはもって10日ほどですから、頃合いを見て新しい花を贈り、「僕」の日常を彩ります。

【ルート2】「僕」の気持ちに気づいていることを示す
この場合、「君」はオレンジ色のチューリップを選んだことでしょう。花言葉が「僕」を表すものであることに触れ、自分への気持ちを「僕」の方から引き出します。素直になれなかった「僕」も愛情表現が上手になり、お互い花を贈り合うようになります。

【ルート3】女性の痕跡を残す
この場合、「君」は赤や紫のチューリップを選んだことでしょう。今日ここに押しかけたのは、他に女性の影がないかを確かめるため。用心深い「君」は小さなカメラを花弁に忍ばせ、「僕」の他愛もない生活を見守ります。その後も数日と空けず「僕」のもとへ通い、家事が苦手な「僕」の世話も欠かせません。もちろん、チューリップは長く美しさを留めます。

「僕」と「君」の関係


もともと「僕」は、「君」に対して憎まれ口をたたく傾向があったように見えます。
筆者の妄想ですが、「僕」と「君」は実家が近所で、「僕」が思春期に入る以前から親同士公認で互いの家を気軽に行き来するような関係でした。年の差は3学年空かない程度。「君」が先に都会の大学へ進学し、一人暮らしを始めます。「僕」も追いかけるというわけではなく同じ地域の大学へ進学し、親元を離れて暮らすことになりました。(「僕」母のせいでもありますが)生活能力の乏しい「僕」を案じた「僕」母は、「君」に連絡します。「『僕』を頼むわね」と。そうして荷解きも済んでいない「僕」の部屋に、「君」が押しかけたというわけです。右も左も分からなかった「僕」の安心感たるや、想像に難くありません。

同学年であれば中高生時代の幼馴染か、同じ大学の1年生同士ですね。クラス/学科か部活が同じでよくからかい合っているけど、普段は仲間うちでしか会うことがなく、ふたりきりになることはほとんどないのかもしれません。「君」は教室や部室にさりげなく花を飾ったり、友人や教師/顧問の誕生日に小さな花を贈るような人で、男女別け隔てなく世話を焼くしっかり者です。

「僕」はというと、「そんなんしなくていいよ」と言いながら、何をして過ごすかノープランで「君」を迎えています。完全に「君」がリードする間柄です。

「僕」の部屋に来るなり家事を始めた「君」と、手持ち無沙汰な「僕」。朝のLINEのやり取りを妄想すると、


「君」 おはよ!今日遊びに行くから!
「僕」 は?嫌だ
「君」 (スタンプ)
「僕」 散らかってるから無理!
「君」 いいからいいから
    なんなら掃除するし
    (スタンプ)
「僕」 うそでしょ…汗
「君」 (既読)


といったところでしょうか。

洗濯以外の片付けや掃除は★2の間にこなしたのでしょう。(「君」が片付けている間「僕」は何をしていたのか…。)落ち着かなかった「僕」の気持ちも、部屋が片付くにつれ、落ち着いて「君」と向き合えるように整っていきました。
ようやくフリータイムとなり、「君」が持ってきたチューリップを飾り、その花が意味するところについて話し…。あとは皆さんお好きなルートを派生させてください。

曲名が嫁入り前の心情を歌った『部屋とYシャツと私』を彷彿とさせますが、「僕」が「君」との生活を妄想していることを考えると、まんざら無関係でもなさそうです。浮かれた気持ちからつい口にした冗談が採用されたような曲名で、少し滑稽さもあります。お幸せに。


まとめ

主題の洗濯物と、裏主題のチューリップから「僕」と「君」の人柄を探ってみました。
全ては筆者の考えすぎです。皆さんも色々と妄想してお楽しみください。

それでは、また何かの考察で!

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