唯知庵主

交通(主に鉄道)、地理、音楽、紳士服が好きです。

唯知庵主

交通(主に鉄道)、地理、音楽、紳士服が好きです。

最近の記事

冬季特定荷物輸送 ~幻の赤い列車~

12月24日…世界中の子供がその日を楽しみに眠れぬ幾夜を過ごす、クリスマス・イブ。この日の未明、物憂げな常夜灯だけが灯る隅田川貨物駅に一本の荷物列車が入線した。見慣れぬ深い屋根、真っ赤に塗られた車体には白帯が一本巻かれ、窓や車番や所属を示す標記はどこにも見当たらない。この列車はどこからやって来たのだろうか。時計の針を少し戻して、前夜17時の秋田港駅へ行ってみよう。 日没を迎えた秋田港岸壁に着岸した輸送船。慌ただしく車両甲板の扉が開き、先ほどの赤い客車が続々と陸に上がってきた

    • 浮き城とのこぎり屋根の街を歩く

      私が住んでいるのは埼玉県の一番北、群馬県と利根川を介して隣接し、最近は未成年の女の子を家に連れ込んで何やらしていた不動産屋の事件で、私が生まれる頃には八木某の一連の事件でその街の名を知られた、本庄市だ。 そして高校は熊谷にある動物園の檻を取っ払ったような劣悪な環境の学校で、先のセンター試験で大コケした私は今春その高校を卒業し、ローニンセイとして頑張らなければならない。 それはさておき、本庄から熊谷へ行くなら、我々学生なら高崎線に乗り、車を所有しているなら国道17号、中山道

      • 欧亜国際列車「扶桑号」の記憶

        ──「なあ」「んだよ」 「この間高崎線の線路ッ端に立ッてたらよ、熊谷の方から汽車が来てよ」「ああ」 「汽車の方は何て事ァ無えんだが、後ろの車がちっとんべえ不思議でないの」「何だいね」 「窓が大きくてさ、色も空色で金の帯なんか巻いてよ、それがさァっと滑るように走るもんで、俺ァ驚いたんだ」「ははァ、それァきっと」 「きっと何だべ」 「扶桑号さ」 「フソーゴー?」 「この間から走り出した新しい汽車の名前さ。あれァ新橋から高崎線、上越線を通って羽越線に出てよ、秋田港から

        • 東京市街線を考える。 ①

          題の通り東京市街線という架空の都市鉄道に就いて論じる前に、先ずは"東京"の範囲を定義付け、その中での鉄道の役割に就いて考える必要があろう。東京を知らずして東京に線路は引けまい。という訳でちょっとばかし考えてみる。 "江戸"の構造を受け継いだ"東京"明治時代に制定された東京15区の範囲は江戸の朱引線、その中でも町奉行の支配下となる墨引線の内側とほぼ一致する。 (画像はWikipediaより) 真中に宮城を据えた極狭い土地であるが、街の東半分は江戸の姿を色濃く残し、特に

        冬季特定荷物輸送 ~幻の赤い列車~