見出し画像

いちコマに徹する友人とそれができなかった私との差

先日、旧知というか、私がまだ平社員の頃、同じ総務人事部門で共に戦ってきたメンバーが挨拶に来てくれた。彼なら、いろいろと総務人事部門の事情も知っているだろうから、私がリーダー格となってからの総務人事部門での愚痴を話していたのだが……逆に、彼から持論を展開され、反論されたのは、本当に予想外だった。

まあ、彼から挨拶に来てくれたのに、私からの愚痴が止まらないことに、彼もあっけにとられたのかもしれないが……いずれにしても、あまりにも愚痴が続く私に、ついに彼が口を挟んできて、単なる世間話が、真顔での業務指導へと早変わりしてしまったのだ。

彼は言う。「そんな環境でも、それで上がヤレというのなら、それに合わせて業務のやり方を変えるべきじゃないですか? △△も処理しない。何かあったら、発生源の社員の自己責任でいいのでは?」ということである。まるで、当時の上長が彼に乗り移っているようにも感じて、気持ち悪くなってきたのだが……そこまで業務を割り切ってしまうのであれば、極論、仕事をしていないことと同義であり、もはや我がチームの存在意義から否定することになる。

というのは、そんな中途半端な対応では、結局、あとには何も残らない。後手後手の「戦力の逐次投入」が愚策なのは歴史が証明しているし、例えば、野球だって、いくら塁に人が出ようが、ホームまで帰らなければ点が入らない。要は、小数点以下は、毎回切り捨てられ――無駄な努力とまでは言えないだろうが――いずれにしても、その分は勝敗への結果には反映しない。当時の私の担当業務は、このような性質のものに当てはまる。

それに、そんな適当な仕事のやり方が通じるのは、あくまで性善説に基づいた場合であり、実際問題として、現場の肌感覚としては……その後、雪だるまのように業務が積み上がっていき、無法地帯となり、いずれどこかで破綻する。実際、当時、私は、そんな破綻した状態で前任者からバトンを渡されたし、事実、過去にマスコミを賑わわせたことがあったではないか? 喉元過ぎて熱さを忘れてしまったのか?

結局、彼とは最後まで平行線だったので、「じゃあ、次、そこでチームリーダーやってみませんか(笑)?」で終わらせたのだが、しかし、当時、あの空間あの空気感を感じた人でないと分からないようなことを、上から目線で、さも分かったかのように言うのが悔しくも残念だった。

というか、単に、私は愚痴を聞いてもらいたかっただけであって、別に、彼に助言というか改善案を望んでいる訳ではなかったのだが……。

 

ただ、そんな彼の考えに、いろいろガッテンがいったのが、その直後の話――彼を、うちの部長と引き合わせた時の話だ。なんと、部長によると、彼の今の上長にあたるお方が、かなりのパワハラ人物らしく、部長自身も、過去、その方に潰されたことがあり、だからこそ、彼のことをことさら心配していたのだ。

しかし、彼は、そんな部長にひょうひょうと答える。
「自分は、1つのコマとなって動いているだけですから……。」
彼のこの発言、その場面では、私はサラッと流していたものの、後になっていろんな物が繋がってくる。

まず、彼は、自分自身の今の境遇について、私にも一切話をしなかったし、私と彼が一緒に仕事をしていた頃を思いだしても、確かに、そんな感じで、ドライで……当時、やはり、私とはあまり馬が合わず、何度か衝突したこともあったし、私の前任リーダーの仕事のやり方についても、そんなに否定的な印象を持っていなかったようなのだ。

そして、彼は、1つのコマになりきれる人なので、たとえ上がパワハラをしたり無理難題を言ったとしも、何も考えずに、それにピッタリと合わせることができるのだろう。なので、彼が私の前任リーダーの元で働いていた時代も、周りが病気になったり、退職者が出たりしても、何の違和感なく、単にコマとして動けていた……。

まあ、基本的な考えが、やはり私の前任リーダーと同じなのかもしれない。私の前任リーダーは、メンバー全員を単なる1コマとしか見ていなく、誰が何を担当しても同じという考えの元、チーム内の担当を短期間でグルグル回していた事績が残っていた。そんなことやったら、メンバー全員が疲弊していくだけでなく「どうせもう担当も変わるから、この案件には手を付けないでおこう」という負のインセンティブしか働かない。

ただでさえ業務量が多く、毎日激務なんだから、やってやろうというような動機付けもなく、それこそ、かなりの性善説に基づかないと成立しない話だ。

私は……チームで仕事をしていくのであれば、みな得意分野や不得意分野があるわけだから、それを組合せ……要は、例えばドラクエ3のパーティー編成のように、バラバラの職業でお互いがお互いを補完し合えばいい、という考えに基づいていたし、実際に、チームにもそのように説明し、みなが協力しあって気持ちよく仕事ができるよう努めてきただのが……。

 

でもまあ、私も、彼のように完全な1コマになりきれれば、あのような過去のつらい思いをしなくてよかったのだろう、もっと楽になっただろう――とも思う。

とはいえ、彼の考えを継続するのなら……もし、彼があのチームリーダーとになった暁には、やはり前任リーダー同様、下を潰すタイプになるのだろうか……。それに、そんなパワハラに耐えられるような人材というのは、上に上がったら、やはりパワハラをする側になってしまうような気がしている。そして、こうやって負の連鎖が繰り返されるのか――などと思ったりもした。

その構図は、まるで毒親に育てられた子供が、期せずして毒親になってしまうのと同じ構図ではないか――とも思うのだが。

それに、そういう仕事のやり方は、やはり楽しくないのでは――と。例えば、今話題のビッグモーター事件をあの段階に至るまで防げなかったのは、やはり、このようなコマになりきることができる(ならざるを得なかった)メンバーばかりだったからではないか――と思ったりもしている。

まあ、いずれにしても、私と彼とはタイプが違ったようだ。とはいえ、彼は彼で、それで成果も出せているのだったら、それはそれでいいのだろう。要は、ここでいう「成果」をどこにもってくるか、というのもあるのだろうが、上長から見れば、1コマになりきればなりきるほど、成果が出るのだろうから。

とにかく、彼とはもう、今後仕事の話をするのはやめようと思った。

【関連記事】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?