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幌馬車

砂利道をゆく幌馬車の車輪が軋んでいる
荷台に積み込んだ希望の重さが僕らを苦しめる
年老いた馬の鼻息が荒い

一期一会 身軽な風来坊はまさに風のように
去り行く はるか彼方へ もうすでに影さえも見えやしない
彼はいまだ見ぬ世界に辿り着く代わりに
路傍に横たわる真理を見落としてしまう

急いでいる 僕らも
走っている こう見えて
どこまでも行けるスピードで
永遠に続くスピードで

旅人は道なき道を行き世界に線を引いていく
行き交う人たちの歩みが道になりやがて町ができる
いずれ寂れても名前は残る

旅は続く
太陽が照りつけていても
雨雲が空を覆っても
地平線 切り開いていく
迸る血のような夕日をこの身に浴びて

地に足の着いた根の生えた豊かな暮らしを羨んでみても
痩せたこの大地では子どもたちを満足に食わせていけない


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