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防音室のこと(3)吸音について


1.吸音についての考え方

遮音の問題がクリアできたら、次は吸音です。
吸音というのは、読んで字のごとく、音を吸う。すなわち、音の反射を抑えることです。

目的はスタジオ内での音の反射(=響き)を調整することなので、遮音みたいに「やったらやっただけ偉い」というものでもないから難しい…
どれぐらい吸音すれば良いかは、そのスタジオの用途や目的によります。

基本的な考え方として、
・演奏環境としては、適度に音が響いてくれた方が気持ち良い。
・録音環境としては、響きがなければないほど良い。(あとで音を加工しやすい)

ということで、完全に相反します。

うちの場合、スタジオの主な用途として以下5つを想定していました。
①レコーディング(宅録)
②練習(一人またはバンド編成で)
③シアタールーム(映画を5.1ch大音量で見る)
④オーディオルーム(アナログレコードを大音量で聞く)
⑤仕事(テレワークでのデスクワーク、会議)

⑤は一旦さておき。
①のためにはデッドな(響きのない)環境が良い。
②③④のためには適度に音が響いた方がいい。

2.検討の手順

(1)方針を決める(デッドorライブ)

結論として、私は「デッドな環境を目指す」ことにしました。
理由はいろいろあるんですが、一番は、音響の良い部屋を計画通りに作るのは素人には無茶苦茶ハードルが高そうだったから。。
消去法です。。
部屋の形など所与の条件にもよるでしょうが、基本的には音響設計って完全にプロの領域だと思うので、素人がやるとしたらDIYも含めて試行錯誤を繰り返しながら徐々に改善を積み重ねていくしかないんじゃないかな。。

ということで、ひとまずデッドな環境を目指すことにしたわけですが。
そのために私が考えたのは、
①まず施工時に吸音性のある壁材を選ぶ
②完成してみて吸音性能が足りなければ吸音材を追加で設置する
という二段階方式です。

というのも、吸音材って高いんですよね。
それを壁と天井全部にってなると本当に高くつくので、最低限に抑えたい。
なので、基本的には壁材でなんとかする。
それでどうしても足りないと感じた分だけ、様子を見ながら(音の変化を確認しながら)ちょっとずつ吸音材を買い足す。
という考え方です。

(2)壁材の選定

壁材については、
・普通の部屋に施工する壁材(石膏ボード)と価格的に大差ない
・カタログスペックとしてきちんと吸音性能が表示されている
という条件で検討しました。候補は2つ。

①木毛セメント板

②有孔ボード

それぞれの材の性能について、このあたりの論文?に詳細な記載あるので興味ある方は見てみてください。マニアックで面白いですよ。
木毛セメント板の吸音性能
有孔ボードの吸音性能

抑えておくべき特徴としては、

【共通】
・どちらも特に中音域(人間の声ぐらいの周波数帯)の吸音に優れているのでボーカルブースの壁材には適している。
・どちらも密閉されていない(音が抜けるタイプの)材なので、壁材の背後に空気層を確保することで、基本的には吸音性能が向上する。

【木毛セメント板】
・材の厚みによって、基本的には吸音性能が向上する。
・ビスが効かない。(壁かけのギタースタンドなどは支持できない)
・見た目ほぼ同じで「TSボード」という製品があるが、これは木毛セメント板を高圧で成形した(完全に似て非なる)もので、ビスが効く反面、吸音性能はないので注意。

【有孔ボード】
・孔の大きさやピッチ(間隔)によって吸音性能が変わる。

個人的な結論(暴論)としては、
・木毛セメント板と有孔ボードは正直そんなに大差ない
・見た目の好みで選べば良い
と思います。

うちは木毛セメント板(もっとも薄い15m厚のもの)にしました。
理由は、
・吸音以外に、断熱、調湿といった性能がある。
・「細野観光」とかサンレコで見た細野晴臣の自宅スタジオがかっこよかった。
からです。

結果的には、木毛セメント板だけで(追加の吸音材なしで)十分な吸音性能を発揮してくれています。
(なので結局、吸音材の追加設置はしていません)

施工したのは壁と天井のみで、梁柱はクロス貼りです。
壁構造や細かな仕様については、以下の記事の有料部分で紹介していますので、もし具体的に知りたい方は参照ください。

3.部屋の音響を良くするならレコーディングブース(デッドな環境)は別途必要

ちなみに部屋の音響を良くする方向でいくなら、レコーディングのためのデッドな環境をどうやって実現するについては別途考える必要があります。
私の場合は結果的に必要なかったのですが、そのあたりもいろいろ検討はしました。

YAMAHAとかのまともなルーム・イン・ルーム式の防音室はめちゃくちゃスペース取るし、高いし、多くのDTMerにとって候補に入らないと思います。。
ありえるとしたらコレ、相対的にはかなり簡易&安価。それでも十二分にでかいけど。

私が現実的な候補として検討したのはコレです。ただこれも結構、値は張る。。

費用を抑えるためDIYも検討しました。
この頃ちょうど奥田民生のYouTubeでカンタンカンタビレに感化されていたこともあり。
ご存じない方のために、氏のボーカルブース1号から6号に至るカイゼンの歴史を貼っておきますね。
お金の問題だけじゃなく、やっぱDIYにはロマンがあるよな。

ブースの実際の作り方については、これが詳しくてわかりやすかったです。


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