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ぶっきらぼう

大学一年生が終わる この春休みは腐るほど長い この前の夏休みのことは一日も思い出せない タンスのどこにしまったのか、捨てたのかもわからないあの制服とおなじのを着てる少女を、たまーに電車で見かける 懐かしさと羨ましさと忌まわしさで、意識が遠のく あの頃、四六時中悩んでいた 狂ったように考え込んで、狂ったように眠り、静かに 激しく ひとりでに狂っていた 

これからの人生を含めても、人生で一番好きだったと言える人と、ひさしぶりに会話をした

「死体と話してるみたい」

もう、何を言われても、何が起きても、ほとんど何も思わなくなった ぶっきらぼうな私は、ガッカリされてしまった なんとなく悲しくなった ガッカリされたくなかったな なんとなくムカついた わたしは死体のようでも死んだようにでも生きているんだから そう思って、ふたりを強くつねった ちゃんと、痛かった

すごく変わってしまった 鈍くなった 生足に擦れる紺のスカートの感触も、もう思い出せない 車窓にうつる虚ろな瞳と夜が重なった黒を、もう思い出せない これはこれで生きやすいんだけど あれはあれで素晴らしかった いつも生きたくてどうしても死にたかった あれはあれで素晴らしかった わたしはどうなりたい?わからないけれど ゆっくりと進みだす普通列車に片手で触れてみたい いつか、でっかい隕石にぶつかって死んじゃうんだからね 最後はなんらかの罰をください

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