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高知の夏の夜に思うこと

気がつけば高知県四万十市に移住してから1年が経っていた。
この1年間は見るもの聞くもの食べるもの触れるもの、ほぼ初めてのことが多くて私は大いに慄いた。
中でもこの夏がいちばん苦しかった。具体的に言えば経験したことのない暑さと湿度、初めてお目にかかる初対面の虫たちに恐れおののいたのだった。

暑さはある程度覚悟していたものの、やはり気が遠くなるほど暑かった。
暑さそのものより湿度の高さにやられてしまっていた。
北海道では毎回部屋干しだった洗濯物も、外で干さなければいけなくなった。しかし湿度が高いと雨の降る確率も多く、朝一で干しても外出中に雨がぱらつく。
「あーもう、いやーん!」
と、朝に外干し決断をした自分の判断力をよく呪ったものだ。
とにかく南国土佐では部屋干しで部屋の湿度を上げるのはご法度なのだ。パンはかびるし、虫も湧くというものだから、注意が必要なのである。

そしていちばん私を恐怖に追い立てたのは、北海道よりサイズの大きな虫たちの存在だ。

最初はカマキリを見て、「北海道では見なかったなぁ。さすが南国土佐」と喜んですらいたのだが、夏が深まるにつれ心の余裕は失われていった。
ほとんどの方が予想がついている頃だろうが、蝦夷にはいなかった害虫。まず真っ先に上げられるべきは、G。そう、ゴキブリなのだ。

ファーストコンタクトは秋。10月頃か。壁を走り抜ける俊敏な黒い影として彼は存在をアピールしてきた。

浅はかなことだが、私は今の黒い影がGだなんて気の迷いである、見間違いである、幻影である、白昼夢であると思い込むことにした。

しかし翌年1月頃、ソファの下から彼の亡骸が発見され、「やはりあの時の白昼夢はごまかしのきかない現実だったのだ」と思い知らされた。

ここは南国のアパートの1階である、ということが重く心にのしかかった。

そこから彼にはしばらく出くわさなかったが、夏になってから彼らは活動がお盛んになる。
私はその大きなサイズ感に悲鳴すら忘れ、ただひたすら床掃除をしてはホイホイを設置した。
彼らは意外と単純なのかすぐにGホイホイにそれこそほいほいと引っかかった。

しかしある夜、
「にゃーぁん」
とれんが手でバシバシしてるその先を見ると、なんと、Gの子供サイズが。
Gが繁殖している!
その事実は私を簡単に打ちのめした。

これはもうホイホイだけでは太刀打ち出来ないと確信したのである。

生活費の中から駆虫費用としていくらか捻出することにした。

しかしその翌朝。4時頃のことだ。

携帯からピコーンピコーンとメール着信音が聞こえてきて目を覚ました。
なんと生活費を入れてる口座に不正なアクセスがあり、今月の生活費をほぼ抜かれてしまったのだ。
携帯に届いたメールはカードを使用する時に発行されるワンタイムパスワードのお知らせや、この取引相手にカードは使用できないというメッセージで、20通ほども着信があった。
その中でもなんとか悪党は2件も取引を確定したらしく、痛い金額を抜かれてしまった

これでは駆虫費用を捻出できない。

仕方ないので給与振込があるまでのあと1週間程の間、Gとお部屋をシェアすることになった。
さっきもカサカサとGが床をカサカサと横断していった。

周りからGは人が起きてる時は出てこないと聞いていたが、私の存在感が薄すぎるのか意外と堂々と歩いていらっしゃるのだ。
「ちっ」
その度に苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちをしている私だった。

こうしてGの存在に気がそぞろのまま、夏が終わっていくのだろう。

はーあ。。。

Gの話ばかりでしたので愛猫れんの可愛らしい姿を❤





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